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魂の灯 -61- #ppslgr

並み居る怪物共を薙ぎ払い、三人は目的の開放型イベントホールへとたどり着く。そこもまた、暗色の肉の皮膜に覆われつつあったが、犠牲者となりうる来場客が少なかったためか施設内部に比べるとその量はごくわずか、といっていいレベルであった。

「ソウルアバター出すと建物も無事じゃ済まないと思うけど!」
「ノート・ビルドには被害の許容は許可もらってるわ!問題はそっちじゃなくてあの怪物に取り込まれたまま建物内に取り残された人だけど……」
「そっちも気にしなくていいよ、僕の方で移動しておいたから」

割って入った声に、逡巡する事なくバティは刀刃を剣呑に構えた。パルプスリンガーの声ではない。聞き覚えのある、敵の声だ。

開放型イベントホールは、ステージを扇形に囲む形でソウルアバターを現出させるにたる充分すぎるほど広大なスペースがあった。イベントホール入り口から出たばかりのバティの眼に、ステージ上にわだかまる暗肉の台座の上によって立つあの少年の姿が映る。

「さっきはレイヴンとこで今度はこっちって、あっち行ったりこっち行ったり、忙しない奴だな」
「君達と違って、僕は一人でね。何をやるにも自分でやらなきゃいけない。もっとも、不便に思ったことは無いけど」
「そうだろうさ、こんなめんどくさい能力持ってたら何だって出来る」
「そうでもないんだ、意外と使いみちが狭いからね、これ……けれど」

声のトーンが低く垂れ下がり、イシカワは流れるような所作で拳銃を構えた。

「お前たちの大事な遊び場を滅茶苦茶には出来る、そうだとも」
「ホンキだってのか……」
「本気だ、その覚悟が僕にはある。言葉を返させてもらうけど、君にはあるのかい?」
「何がだよ」
「この建物ごと、皆の作品を踏み潰す覚悟がさ」

バティが言葉を押し留めたのと、銃声が鳴ったのはほぼ同時だった。
過たずに放たれた拳銃弾は、螺旋滑空の後に少年の頭部ど真ん中を貫き四散させる。イシカワの拳銃から硝煙が流れて霧散。

「他の奴はどうかは知らんが、俺は正義の味方でもなければ、慈悲深いボランティアでもない。俺の人生にふざけたチョッカイを掛けてきた奴は潰す、それだけよ」

頭部が吹き飛び、首なしとなった少年の身体から暗肉が盛り上がり元通りに、うらなりの整った顔立ちを修復する。

「他の人の作品は滅茶苦茶になってもいいって?」
「生きてりゃまた作れるし、そもそも世の中に滅多糞に壊れねぇ物はねぇよ」

物も人も、いつかは壊れんだ。そう吐き捨てステージに進むイシカワの指が動く。三度発砲音が鳴り、せっかく元に戻った少年の身体は上半身から上が吹き飛んでしまった。もっとも飛び散ったのはやはり分体である暗肉に過ぎず、本体ではない。

「めんどくせぇ作りしやがって」
「本体はきっと安全なとこにいるんだ、だから今は施設侵食を防がないと……⁉」

その時、観客席の裏側より暗肉の噴水が上がった。バティの周辺を取り囲む様に、一斉に。

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