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イドラデモン・アニヒレイト -21- #ppslgr

飾り気のないコンクリートの階段は、上がるほどにいつしか石畳造りへと手品のように入れ替わっていった。そうして、精緻な縁取りがなされた銃を手に登り切った先に待っていたのは、一面の緑。

「わぁ……」

俺の後ろでついてきていたO・Mも、開けた光景に感嘆の声をあげる。だが後続の二人へ振り向くと、J・Qの方は少々険しい表情によって眉間の皺を深めていた。

折り重なる緑の天蓋を抜けた先にはウソの様な青空が広がっていて、大地には木々の影の元に至るまでうっそうとした青い草花が繁茂している。ちらりとスマホの時計を見ると今はちょうど正午で、まだ東に傾いていると思しき太陽の位置とはまるでちぐはぐだ。

「綺麗な場所、でもこれってアレでしょ?綺麗な所ほど油断ならないの。サギと一緒で」
「ほっほ、察しがはやいの」
「その通りだ、ちょっと見ていて欲しい」

彼女の疑問に対し、俺は右太ももに括り付けたナイフを引き抜くと最も手近な木の枝葉を打ち落とし、その節くれだった樹皮をメイプルシロップ採取めいてえぐり取る。そうしてあらわにされた木の内部は、とても木には思えないグリーンのプラスチックめいた物質だ。

「真っ赤なニセモノ……でも見た目は本物そっくりだし、それどころか木々の香りまで」
「先の階が白亜の地下迷宮、燃える湾曲都市、そしてここは差し詰め虚構の楽園ってとこか」
「こーゆー、『ぼくらわるくありませーん、まったくのむがいでーす』っちゅー顔をしとるヤツラほど実際には危険なもんじゃ」
「そういう事だな、位置的にもより深い階層である以上危険度は今までよりも高くなるはずだ」
「おっけー!気を付ける!」

ボットの流れは相も変わらずこの天然要害の迷宮の奥底から湧き出ては、外へと向かって不気味な行進を続けている。見た目だけなら風光明媚な樹海だけに、その中を白磁のマネキンがすり足で進行していく光景は何ともシュルレアリスムめいた奇怪さを感じた。

「では、今まで通りに――ッ!」

これまで同様、ボットの流れを逆にたどろうと提案するのを中断すると、俺は握っていたカレイドバレルの銃口より真空まとう魔弾を奇妙な気配の方向へと撃ち放った。真空波の鋭い刃を伴った弾丸は、姿を現した暗緑色の人型に食い込むとその存在をずたずたに切り裂きたった一発で肉片へと解体する。だが、その背後となる木陰からは新たにもう一体が姿を見せた。

「クトゥルフか、SCPか」
「どっちにせよロクでもない相手な様じゃの」
「こういうのって、他にもいる物なの?」
「ああ」

姿を見せたのはざっくり例えると陸上で人型に擬態した暗緑色のタコ、といった風情だ。だがその造形はとても本来のタコとは比較する気にもなれないほど醜悪で、蜘蛛めいて多数存在する眼とアギトにあたる部分は細かい触手をヒゲの様に伸び散らかしている。

「せっかくのプレゼントだ、七面鳥撃ちとしゃれこむかね!」

這いずり、粘液を垂らしながら迫ってくる暗緑タコへ、硝煙を吐く銃口を向けた!

【イドラデモン・アニヒレイト -21-:終わり:その-22-に続く

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