見出し画像

イドラデモン・アニヒレイト -20- #ppslgr

深く車輪に抉られた公道は、まるで悪魔の爪痕を残したように複数の溝を残していた。そんな荒れ果てた道行きをマネキンめいたボットの群れは相変わらず黙々と進んでいく。そんな虚無の進行をさかのぼってさらなる奥地を目指す。

「侵入者がいるのにボットの供給をやめられないのは、中々重篤だな。こちらには都合がいいが」
「ボットの供給停止で出る影響を、連中は許容できないちゅーことかの」
「ああ、ついでに生産拠点を安易に移せない証左でもあるだろう」

この物量の生産量である。ボットの生産機器自体はかなり大規模かつ移動困難な代物である可能性が高い。付け加えれば、そういった大型の設備を簡単に移送できる様な技術、およびに能力者もいないということだ。

「ま、よかろ。R・V、ちょっくらオヌシの銃を一丁貸してみ。良く使うヤツがええの」
「わかった」
「なになに?」

身におった武器の中から、最もよく使うリボルバーをJ・Qに手渡す。
俺とO・Mが見守るさなか、彼は握り込んだリボルバーを凝視するとコートの袖口から銀粉の様に見える微細機械を這い出させて、手にした俺の銃に注ぎ込んでいく。見る間にただの拳銃に過ぎなかったリボルバーへ、精緻な縁取りが施され、表面は吹きさらしの鋼めいたサンドブラスト仕上げに変わった。

彼は変貌を遂げた銃を四方八方から覗き込み、その仕上がりに満足すると俺に向かって生まれ変わったリボルバーを手渡してきた。もちろん、敵地のど真ん中でわざわざ行った作業がただの模様替えなどであるはずがない。

「そいつをな、撃ち出したい弾丸をイメージして引き金を引いてみぃ」
「了解した」

前よりももう一段自身の手になじむようになったリボルバーを手に、俺達の横を通りすぎて先に進もうとするボット三体へと銃口を向ける。イメージ、何でもいいんだろうが機械相手ならまあ電撃だろう。紫電が走るイメージを添えて引き金を引いた。

するとどういう事か、ライフリングが刻まれた銃身の真っ暗な銃口から撃ち出されたのは鉛玉、ではなかった。飛び出ていでたる荒ぶる雷撃は肉食獣よりも機敏にボット達に食らいつくと、その虚ろな躯体に絡みついて瞬く間に焼き焦がしていった。ずしゃり、と回路を再起不能になるまで焼かれたボットが倒れ伏す。

「ヒューッ……こいつは凄い」
「カッカ、名付けて万象銃『カレイドバレル』とでも言ったとこかの。おっと、媒体となる銃弾は要るから装填はサボれんぞ?」
「残弾管理には気を付けよう」
「スゴイスゴーイ!これがJ・Qさんの能力の産物なの?」
「そうとも、ワシのスキル『マジッククラフト』じゃて」
「いいなー、うらやましいなー、私も何かかっこいいアイテム欲しいです!」
「焦らない焦らない、良いのが思いついたらオヌシにも作ってやるから」
「わーい!」

三者はしゃぎながら足を進めれば、ようやく上に続いていそうなポイントへとたどり着いた。ボットの流れはとりわけ高い無機質な灰色廃墟ビルの奥から、無感情に連なり歩み出ていた。

【イドラデモン・アニヒレイト -20-:終わり:その-21-に続く

一話はこちらからどうぞ

まとめマガジンはこちらからどうぞ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #スーパーロボット #毎日更新

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL