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戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-7-

 曇天はいつしか雷雨に代わり、稲光が天と地の狭間を切り裂く中、戦艦「武蔵」の砲撃は1キロメートル級の怪物クラゲの巨体へとあやまたず降り注ぐ。もちろんクラゲの方も黙って身を任せるわけではない。数えきれないほど多くの触腕を前方にかざすと盾にし砲弾をしのぐ。着弾の破壊でちぎれ飛ぶ触腕の管からマグロが飛び出ては吐き出されていく。

 俺はというと己が機体を宙に翻し、疾駆。青白い光を機体背部の翼型スラスターにまとわせ音速を軽く超える。俺の機体を触腕が絡めとろうとその魔の手を伸ばすが、どっこいこちとら触手プレイの趣味はないのだ。

 時にオリンピックの体操選手の如く、時に伝承のニンジャの如く俺の操る黒騎士は空中を跳ねまわると同時に追いすがる触腕を両手にそれぞれ展開した光刃で切り裂いた。やはり中は空洞で、切り口からは海水が噴き出、マグロが飛び出していく。

「おい、R・V、気づいているか?」
「もちろん、コイツは天然自然の生き物じゃない。人工物だ」

 いぶかしむ俺達を他所にこちらに向かってまたも触腕を掲げるクラゲ。こいつは不味いっ!

 クラゲの触腕、その先から放たれたのは高圧縮された放水だ。スラスターの推力をあげてエイミングする触腕の狙いから逃れる。武蔵はというと流石にその巨体から何発かの直撃を余儀なくされた。

 大量の放水があげる水飛沫に呑まれ俺の視界から消える武蔵。打ち取ったと思ったのか眼下のクラゲが激しく触腕をわななかせるが、実に甘い。

 水飛沫が今だ天高くあがり、曇天にも届こうという水柱の中から不意に刃物の閃きがクラゲを襲った。勝利を確信していたクラゲが空に突き上げていた触腕が一刀の元にズンバラリと斬り刎ねられ、宙を触手の先と物の見事に斬撃を外されていたマグロ達が次から次へと海中に飛び込んでいく。

 水柱の中から姿を現したのは、鋼鉄の巨人。その身には戦艦の艤装を分解し、鎧に作り替えたが如き威容の甲冑をまとい、手には力強く巨大なる日本刀が握りしめられていた。武蔵、強襲装攻形態であった。

 水上にも関わらず恐るべき勢いのすり足で踏み込むと武蔵は切っ先を突き出し裂帛の突きを放つ。触腕を突き崩しながらクラゲのドーム状の部分に刀がめり込むと武蔵は迷いなく刀身を上方へと振り上げる。クラゲの身体が深々と裂け、やはり亀裂からは大量の海水が噴出していく。ついでにマグロ達も噴出しては宙に投げ出される。

「ぬううううううぅん!!!貴様ら!何故我々の邪魔をする!?一体何者だ!」
「マグロ釣りの最中にマグロからマグロの未来を託された男!A・Dだ!」
「同じく通りすがりの多分善良な方のパルプスリンガー、R・V」

 突如こちらの公共通信帯域に割り込んできた罵声にしれっと切り返す俺達。

「マグロの未来だと!?馬鹿め、マグロの未来を真に憂いているのは我々ブルーピースだ!!!って人の名乗りの間に攻撃するな貴様ーッ!?」

 自分から正体をあかしたグリーンだかブルーだかの抗議は無視して触腕を切り裂く俺達。武蔵は精妙なる斬撃で、俺は機体の速度と機動性を活かした嵐の如き斬撃でもってクラゲの触腕を大量伐採していく。当然クラゲの体内から解放され海へと散っていくマグロ達。

 どうせ良くいるとち狂った自然保護団体……いや、まて。暴風のごとくクラゲ触腕伐採斬撃を繰り出す最中、俺はある一つの推論にたどり着いた。

【戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-7-終わり:-8-へと続く

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