いざなうはワールド・コーン・ラビリンス　-25- #ppslgr

トウモロコシの女神が降臨した時より、敵対コーンの攻撃は全て女神へと向けられた。ただの一撃もこちらに向けられることなく集約する様はこの胡乱な神話伝承存在がコーン・モンスターにとってどれほどの脅威か間接的に証明している。

殺到するコーン・フライ！食らいつくコーン・ワイバーン！拳を打ち出すコーン・ゴーレム！飛び掛かるコーン・ケルベロス！その身のコーン全てを駆使して攻撃を仕掛けるヤマタノモロコシ！

だが、そのすべては無為と化した。ケツァル・コーン・アトルの眼前にコーン・モンスターが近づく度に全てのコーンがPON！というコミカルな音をたててはじけ飛んではポップコーンと化す。

「こいつはイヤな予感がするぜ……！」

女神はA・Kのコントロールから完全に逸脱しているのか、こちらへ注意を払う様子はない。俺は愛機のジェネレーターを最大限吹かすと自機と剣闘士をあわせて多層形成した波導障壁でもって囲う。押し寄せるコーンの黄色い津波を蒼光の球状障壁が揺らぐことなく受け止めるが、本当に危険なのはこれからだと俺の直感が示していた。

怒涛という他ないコーン・モンスターの一斉攻勢を歯牙にもかけず、ケツァル・コーン・アトルはその掌底を合掌するかのように胸の前へと掲げては両手のひらの間に黄金色の輝きを産んだ。

コーンの海に呑み込まれながらも、防御場の向こう側で見上げたコーンの戦女神のアメジストの瞳が力強く輝き、彼女は掌底の光を解放する。

『玉蜀黍の鼓動（ポップ・コーン）』

超自然の念話宣言と共に解放された光は太陽の輝きのそれにも似て一瞬のうちに地平の果てまで到達した。それを合図としたかの如くコーン・カタストロフィは訪れる。

破裂音、炸裂音、爆裂音、コーンのサイズに見合った衝撃と共に見る見るうちにコーンの粒は破裂しポップコーンへと作り替えられていく。問題なのはこの場にあるコーンの粒全てが対象という事だ。

「ヌウゥーッ！！！」

数万どころか数億、いやそれすら軽く超える物量のコーンが一斉に破裂したらどうなるかは言うまでもない。単純な物理衝撃波だけでも大規模大量破壊兵器のそれを凌駕する威力になりうる。

無論、コーンの海に呑み込まれた挙句にポップコーンの波濤が死因になるなど笑い話にもなるまい。バカげた出力を誇る愛機の心臓をフル稼働させ、自分達を護る波導障壁の層を増す。機体の制御システムとつながっているニューロンに過負荷のアラートがなだれ込むが、一瞬でも制御を緩めれば俺達は一発でポップコーン死するというジゴクの様なシチュエーションだ。

「外道に堕ちし異界の同胞よ、今一度コーンのオリジンに立ち戻るがいい……！」

コーンの女神の宣告と共にポップコーン衝撃の嵐が一段と激しさを増す。だが、機体周辺に存在するコーン粒がポップコーンになり終えていくにつれて衝撃は徐々に和らいでいく。一度ポップコーンになってしまったコーンが二度三度破裂する事はない。覆水盆に返らずだ。

【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス　-25-終わり：その-26-へ続く】

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