影相撲‐Shadow　RIKISHING‐

　ただ一人、勇壮なる力士が土俵に降臨した。それ以外は、観客も、行司もいない。完全なる無観客だ。
　無人撮影カメラが無表情に力士『影虎』の勇姿を映し出す。流れる様に蹲踞からの見合いに移る。今この場にいるのは『影虎』ただ一柱のみである。
　息を呑む、インターネットの先の観客達。例え力士が一人であっても、そこに土俵があり、取り組みが行われる以上それは相撲である。
『ハッケヨーイ……ノコッタ！』
　インターネット観客達の耳に確かに取り組み開始の合図が再演された。
　影虎、虎のごとく踏み込み非ざる対戦相手とがっぷり四つに組み合う。これこそが力士の長年の鍛錬によって生み出された、影取り組みである。
　この瞬間、インターネット観客達の目には確かに二人の力士と一人の行事が映っていた。それどころか、無観客試合は今や大歓声満員御礼の幻覚さえ集団に与えていたのだ。
『ドスコイ！』
　影虎の足が浮く。対戦相手の影法師による下手投げによるものだ！だが影虎は踏ん張る！体重移動で投げの勢いを殺すと土俵に着地！
『ドリャーッ！』
　影虎の必勝張り手が影法師の頬をはねる！のけぞる影法師！その隙を逃さず、影虎は殺戮ブラキオサウルス電車轢殺機とかして影法師へと踏み込む！土俵から砂埃があがり、影法師が！土俵の外へ！
　観客達はインターネットを通して確かに土俵から転落する影法師を観た。その瞬間、勝負は決した。
　これこそが濃厚接触を避けるために見出された相撲奥義、影相撲であった。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト＆オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中！

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の三回更新！
ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ！

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