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魂の灯 -95- #ppslgr

「……ッ!こなクソォォォォォォッ!」

あがく、足掻く!決着はついた、だからこそ生きて帰らなければならない!
過剰分泌されたアドレナリンによって、バティの認知時間がスローモーション映像めいて遅延する。もはやただ落下する他ないのか?だが、それでも死が確定するまでは何も終わりではない!

そして方や、数瞬前。ドレッドノートのコクピットでは。

「ノア、左腕を下げろ!俺が行く!」
「やってる!でも下がらないの!」
「何でも良いからやるんだ!ミンチ肉になるぞ!」
「行って!」

イシカワはノアの声を背に受け、コクピットを飛び出す!香港アクションスターもかくやの跳躍から、機体各所に設けられた対空火器を飛び渡り、巨塔のごときドレッドノートの左腕へとたどり着くと、わずかに傾いだ装甲を滑り台として駆け下りる!その様はほとんど自由落下めいている!

「ノア!まだかっ!?」

イシカワの眼に、バティの姿が映る!
バティは自由落下をよしとせず、落ちる瞬間からドレッドノートへと腕を伸ばし、傾斜装甲に触れる。左腕にはアスネを掴んだまま、スライダーの様に装甲上を滑っていく!すわ、滑り台射出か!?

「んがああああぁぁぁぁぁ!!!」

いな、両足を装甲に踏みしめ、ギリギリでブレーキをかける!バティのスニーカーから火花が溢れんばかりに散り、滑り落ちる寸前!縁に指をかけて落下が止まった!

「ぐ……ぬ……お、も、い……ッ!」
「何をしている、僕の手を離せ!」
「へ、へ……何でだろうなぁ」
「僕のことはいい!見捨てろ!」
「……っ、黙ってろよ、力、抜けっからさ」

上がれるか、バティは自問する。いいや、上がるどころかどこまでもつかも怪しいだろう。元より死力を尽くした後なのだ。いまこうやって縁を掴んでいる事自体奇跡にひとしい。必死の状況にある彼らを、装甲上のカメラが見つめる。

外部カメラでバティのありさまを凝視しながら、ノアはニューロン直結による思考制御によってドレッドノートを動かさんと試みるも、コネクションからはエラー、エラー、エラー、アラートが返ってくるのみ。

「動け、動いて、動いてよ!人間は、死んだら終わりなのよ!?今ここで私達が動けなかったら、なんのためにいるのかわからないじゃない!」

焦りの感情がノアの疑似ニューロンを駆け巡る。極限まで人間に寄せられた義体ゆえの弊害といえたが、それでも彼女は諦めなかった。

「ああもう!全接続回路を一時停止!駆動回路に限定して再接続!これでどう!」

ノアの電子論理知覚に、ハニカム構造の接続サインが表示。一面にグレーのSTOPが表示された中、一点のみOKのサインが表示された。

「届いて!」

ドレッドノートの左腕が、かしぐ。それは先程の戦闘からは考えられないほど遅く、もどかしい速度。そしてノアの視覚は、外部カメラを経由して一心にバティを見ていた。さらには彼の、今にも縁から外れそうに震える手を。

「く、う……」

バティ自身はというと、もはや身動ぎさえ出来ないほど消耗しきった体で、それでも助けが来ることだけを信じていた。だが。

「アス、ネ」
「なんだ?」
「小説の続き、あの世で、読ませろよな」

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