無差別擬人化対策班

「で、昨晩は何が人間になったの」
「本、だってさ」

まただ。物をヒトに変える技術なんてのが開発されてからというモノ、どいつもこいつもただの人間なんてどうでも良くなって、武器やら料理やら宝石やら人間に変えて愛ではじめた。だがその程度で満足してる内はカワイイもんだったさ、そりゃあもうね。

「本、ねえ……童話?」
「BL」
「ブッ」

部下の金森の報告に、アタシは始業前の二人しかいないオフィスで盛大に吹き出した。

「BL本とラブしてどうすんのさ、そいつ頭煮えてんじゃないの?」
「自分に言われても困りますよ、有澤さん」
「課長って呼びな」

電話が鳴れば、アタシはすぐさま取ってでる。このタイミングなら張り込んでた谷山の報告と踏んでたけど、実際ビンゴだ。

「課長お疲れーっす。真竜『アンサラーラ』の無断擬人化工作の鎮圧完了しました」
「はいはいお疲れー、後はバカ共ブタ箱にぶちこんであがりな」
「了解でーす」

竜だの山だのといった影響のどでかいヤツが狙われた時は特にアタシらの仕事は忙しくなる。川とか海とかはもっての他何だが、夢見ガチなアホどもは、ろくに説得を聞きやしねぇ。ぶん殴るしかないって訳よ。

次に鳴った電話を取った金森が、みるみる総毛立てて顔を青くする。良くない兆候だ。

「はい、はい……了解です、課長に報告します」
「おい金森、今度は何がやられた」
「金星が……周回軌道から、消失したとのことです」
「……ハ?」

一体、何処のバカが、何のために、どうやって。
葛藤する間もあらば、アタシはエマージェンシーコールで課の実働部隊に招集をかける。

『総員!太陽系から金星が消えた!』

平日の朝っぱらからビッグボムをぶちこまれた部下の連中は不満たらたら、しかし事の重大さにぶつくさ垂れながら調査に移る。

「課長、奴さん地球に居るとは限らないんじゃ?」
「だといいがな!」

【続かない:797文字】

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