見出し画像

竜が眼を覚ますと、そこには毛玉が転がっていた

 黒曜の竜、シャールが自分の寝床で眼を開けると、そこには真っ白なふわふわした毛で覆われた、シャールから見て一抱えほどの物体が転がっていた。もちろん、知っている毛並みである。
「どうしたんだい、アスン」
「眼鏡の倍率と解像度をもう一段階向上させて欲しい、出来るか」
 アスンと言われた毛玉は、愛らしいハリネズミのような尖った顔立ちを上げると、自身の顔に張り付いていた精緻な細工の眼鏡をつまみ上げてシャールに突き出す。
「以前の仕様じゃ足りなかったのかい?」
「ああ、そういう事だ。今までは大人が俺の所に担ぎこまれていたが、評判を聞いて子供まで連れてこられるようになった。子供相手では、今までの眼鏡の拡大倍率と解像度では見誤る可能性は無視できない」
「要するに、今の仕様じゃ物足りないってことだね。わかったよ」
 滑らかなオニキスめいた爪で眼鏡をつまみ上げると、すぐに多重構造の立体魔法陣を宙に編みだす。それは天球儀めいた、複雑な枠組みが重なり合って作り出されていた。
「こうして道具のアップデートを依頼してきたという事は、医療活動は順調みたいだね」
「もちろんだとも、もっとも命の行く先は天命だ。俺が竜知巧緻を駆使して治療した所で、人間どもの命の儚さはどうにもならん。だからこそやれることはやっておかなければならない」
「熱心だね、医竜の君が私を頼りにするのは、他の竜達からは奇異に見られるけれど」
「冥竜の呼び名か?くだらん、論理的な因果関係性を持たないただの当てつけだろう。統計からかけ離れた外れ値を持つ存在など、世界には往々にして存在するものだ」
「まあ、その通りなんだけど。そう言ってくれる竜は中々いないからね」
「どいつもこいつも、技術と知を軽んじ過ぎなのだ。軽んじているといえば、ゴルオーンの奴もか。アイツの事は残念だったな」
「……ああ。竜だって逝くときは逝くものさ。命は大事にしないとね」

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の三回更新!
ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#毎日note #毎日更新 #毎日投稿 #小説

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL