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蛇口をひねっても水は来ない:里山再生プロジェクト⑤

山から水を引いて暮らす

森町に住み始めて驚いたことが、
山間部には、上下水道が来ていないということ。
集落内で数軒ずつ協力し合って、川の上流から水を引いてきている。

素敵なことだと思ったし、今もそう思う。
沖縄に住んでいた頃は、水質や土壌汚染などが気になり、
飲み水をずっと買っていた。
沖縄にはお水屋さんがあちこちにあり、それが普通だった。

その経験もあり、次は水の良いところで暮らしたいと思っていたので、
カルキ臭くない、水質の心配もない山の水は、願ってもないことだった。

ただ、ロハスなイメージとは程遠いことが、しばらくして分かった。

良くも悪くも自然と直結する暮らし

我が家は同じ集落から少し離れているので、
自分たちだけが使っている取水口がある。
山に入り獣道を歩いて沢を登って、20分くらいしてやっと辿り着く。
歩く度に崩れていく道。大雨の後は水流が激しく危ない。
なかなかサバイバルな道のり

他所の取水口より簡易的な作りなのか、
水を貯めるコンクリートの枡は、雨が降るたび石や砂で詰まるので、
その度に掻き出しに行かなければならない。(夫が行く羽目になる)
夏の雨量が多い時期は、毎週詰まるので、かなり難儀だ。

そして近年は、シカやイノシシなどの動物が人里近くに降りてきて、
同じ水源を共有するので、大腸菌ピロリ菌が検出されるようになった。
町内会の先輩方からも、
「いったん沸かしてから飲みなさいよ!」
と再三注意される。

山の水の味はというと...
かなり上流からとっているけれど、思ったより川独特の匂いがするので、
けっきょく生水は近くの湧水を汲みに行っている

山について何も知らない

静岡名水百選にも数えられている「曲尾の湧水」。
林道を20分ほどガタゴト進むと、水汲みポイントが現れる。
暗い林道の両脇に広がる森を見上げると、
マッチ棒のように折り重なるように倒れる杉、スギ、すぎ...

湧水ポイントへ向かう途中

これは豊かな自然と言えるのだろうか?

なぜ、こんなに杉の木が倒れてしまい、時には崩壊を起こすのか。
なぜ、山の斜面の土はボロボロと崩れていくのか。
水がどこから来て、どこへ流れていくのか。

なんとなくの知識しか持ち合わせていなかった。

自宅の敷地の山林はどこまでなのか、境界線も知らない。
隣の山林が誰のものなのかも知らない。

放置してても良いの?伐った方がいいの?
どう管理したら良いのか、検討もつかない。

実際、自分みたいな人が増えているのではないだろうか?
「相続したは良いけど、入ったこともない」
「山なんて要らない、お金がかかるだけ」
そんな声をよく耳にする。

果たして、本当にそうなのだろうか?
里山、山暮らしと言いながら、山のことを何も知らない。

集落の裏山

〜続く〜

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