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舞台『夏の砂の上』を観て。脇道に逸れたとりとめもない感想


脇道にそれた話から始まりますが、ちゃんと舞台の感想に戻ります。

なぜ恵子が、治さんではなく、陣野さんを選んだのか、気になっていたので。


小浦夫妻を舞台で初めて観たときから、頭に浮かんでいた親友夫婦の話。

ダンナさんは、めちゃくちゃイケメンで穏やかで口ベタな人で。
結婚前から、私はダンナ様とも友達だったから、まあどんな人なのかはザックリとはわかるんだけど、
自分の気持ちを言えない?あえて言わない?
私も実はそういうところがあるので、ダンナ様の気持ちはわからないでもない。(ぶつかりたくないから、意見が分かれると、自分の思いは飲み込みがち)



その友達は、ダンナ様が優しくてカッコ良くて、みんなに羨ましいって言われるけど、
悲しい時、辛い時、迷った時に気持ちを話し合えない。
一方的に話しても、うん、まあ、そうかな...と、『生きてる人間と暮らしてる気がしない』って。
何もない穏やかな日常の時は良かったけど、子供のことで大変な時期があって、同じ意見でも、違う意見でもいいから話がしたかった。
そんな時には、もうダメだと思ったこともあったって。(仲良く暮らしてます。念のため。笑)



浦ちゃんを見ながら、そんなことを思い出していました。

恵子は、陣野さんとはきっと話し合えたんだよね。

これは私の勝手な想像だけど、
歳もバラバラだけど友達です、と名乗りあった3人。

気の合う仲間で、小浦家に集まって恵子も交えて飲んだりしていたんじゃないかな。

明雄くんを無くした後も、小浦家に集まって、恵子が治にかけて欲しかったような言葉を、陣野さんはくれたのかもしれない。

仕事を探さないことへの『情けなか』、恵子のことが『気になるなら行けばよかじゃないですか』

私には、『あの人、なかなか仕事を探さなくて情けなかよ』『気になるなら、自分でのぞきに来てくれればいいのに』と恵子が陣野にこぼすのが聞こえてくる気がしました。

治さんも、それが透けて見えたから、柄にもなく声を荒らげたのかも。



そして、優子と治。
保護者といっても、あしながおじさんのような万能感はなく、
父親というには甘い。

優子と治、2人の共犯者のような関係に、
私はサガンの悲しみよこんにちはのセシルと父親が頭に浮かびました。

『おじちゃんのことは私が面倒みますから』という淡い独占欲。

レイモンと治は、正反対と言っていいほど違うけど。

繊細で残酷で、奔放で傷つきやすいセシルが、自分を支配しようとする、父の婚約者の心を、取り返しがつかないほど粉々に壊してしまったように、
優子もまた、母親とその恋人たちに支配されてきた世界から逃げて、治とふたりだけでどこかに行ってしまいたかったのかな。

優子はずっと自分の居場所を求めていたんじゃないかな。
自分を優先してくれない母親。
母親が連れてくる恋人たち。
そんな中で優子が見つけた花村さんという居場所も、転々とする母親によって、また引き離されてしまう。

長崎で居場所を求めた立山さんにも、家に行ってみたら、自分には求めようもないほどの温かな居場所があった。

そんな中で治さんは、優子にとって一番の居場所だったんじゃないかな。

今まで、ギュッと身を固くして自分を守っていた優子にとって、治はそっと羽根をほどいてくつろげるような、
傷ついた子供にとっての、大切な居場所だったらいいな、と思いました。(母性)



ガラスが砕け散る音。
このシーンをみんなで、いろいろ想像を語り合ったの、楽しかったな。

私も、その時話していたみんなと同じで、治は日常的に暴力は振るっていないと思う。

恵子から離れたところある鏡に何かを投げつけた(危なくないように、優しい)、
拳で叩き割った(なんか激しくて艶っぽい)、
ちょっとムフフ♡な事があって割れた。
などなど、みんなの想像がおもしろくて、どれもありそう♡と思って、めっちゃ楽しかったな。

私は鏡台の上にあった何かで、対角に鏡に映る恵子を叩き割るようなイメージを、想像していました。

いそいそと陣野に呼ばれて行ってしまう恵子。
嫁入りの時に母から譲り受けて持ってきた鏡そのものが恵子の女性性の象徴であり、
生身の恵子に手を挙げるほど粗野ではないけれど、鏡に映った恵子を叩き壊してやりたかった。

そんなことを想像していました。


観た舞台について語り合うの楽しいな。
そんな見方もあったかと驚かされるし、漠然と抱いていた感想を、人に話して言語化できることもある。


何度も観るうちに、固まってきた思いもあるし、変わってきた思いもありました。
実際の舞台を観て、戯曲で読んだときとは全く違って感じたことが多かったな。

配信では、ナマでは観られなかった細部や表情も見られるだろうし、今まで治さんにロックオンしていて観ていなかった部分も、カメラワークによって、見ることになると思います。

そしたらまた、違う感想が生まれてきそう。


とりとめのない感想を、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


こちら↓↓↓は、もう少し舞台の内容に沿ったレビューと、世田パブ東京楽、兵庫3回、愛知3回、長野2回の舞台でのカテコやそれぞれ回の印象をまとめたnoteです。
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