Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/01/08 第378号
はじめに
はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。
12月〜1月にかけて二つのセールがありました。
一つはKindleの月替わりセール。『Evernote豆技50選』が選ばれました。こちらは、私の関与はまったくなく、少し前にAmazonから、「この本、セール対象になるからよろしく。あと、途中で値段変えたらメッだぞ」(意訳)というメールが送られてきただけです。
で、もう一つが年末年始の詫びセール。12月末に脱稿予定だった『僕らの生存戦略』が完成しなかったので、そのお詫びの意味を込めたセールです。こちらは、私が自分でKDPで値段変更を行ったセールです。
前者は正真正銘値引きセールなのですが、後者は厳密に言えば値引きセールではなく期間限定の定価の変更です。KDPでは「無料セール」は行えても「値引きセール」は行えないという謎の設定になっているので、後者のセールに関しては、自分で内容紹介などに、「期間限定で値引き中です」という文言を追加しておく必要があります。
それだけではありません。今回の自前セールは3冊の本を対象としたのですが、値段変更の内訳は以下のようになっています。
・『The Last Blogger』 320→160
・『真ん中の歩き方』 320→160
・『「目標」の研究』 274→120
KDP慣れをしている人は気がついたかもしれません。どれも250円を切っています。
この250円というのが実は大きなラインで、KDPセレクトに登録して70%のロイヤリティーをゲットするためには、250円以上の値段をつけなければいけません。でもって、もともとこの三冊はそのような設定をしてありました。
しかし、今回の値段変更はセール処理ではなくただの定価変更なので、上記の設定も変えなければいけません。つまり、単に値段が下がっただけでなく、ロイヤリティーも減っちゃっているセールなのです。
まあ、本を買う人からすれば、ぜんぜんまったく関係ない話ではあるのですが、セルフパブリッシングで通常価格250円以上の本が、250円以下になっているのならば、そしてそれが月替わりセールのようなものでないのならば、「ああ、結構思い切ったんだな」と思っていただければ幸いです。
〜〜〜副次的効果〜〜〜
最近、目の下のクマがひどいらしいです。伝聞なのは、自分で鏡を見ないからなのですが、妻から「アニメとかで出てきたら、三日後ぐらいに死ぬキャラみたいな顔色しているよ」と言われたので、さすがにそれはマズイかなと思い、ホットアイマスクというものを試してみることにしました。花王から発売されている「めぐりズム」という商品です。
ごく簡単に言えば、ホッカイロの「目」版なのですが(かなりざっくり言いました)、これがなかなか気持ちよいのです。私は、ミニタオルを水で搾り、レンジで20秒くらい温めてから、目の上にかぶせるというホットタオル習慣をよくやるのですが、
1.準備が結構面倒
2.すぐに冷たくなる
という二つの問題を抱えていて、それが若干ネックなのですが、この「めぐりズム」は10分くらいじんわりと温めてくれます。温度でいえば、レンチンホットタオルに軍配が上がりますが、それでも持続時間の長さはありがたいですね。
で、そうして目を温めながら布団に入り、眠りにつくという日々を繰り返していたのですが、目の疲れの回復以外にもメリットがあることがわかりました。それは、「寝る直前までスマートフォンを見ることを避けられる」というメリットです。
これまでは、どうしても寝る直前までタイムラインを確認していたり、Kindleアプリで電子書籍を読んでいたりしたのですが、どう考えてもこれは良い睡眠習慣とは言えません。しかし、ひとたびアイマスクをしてしまえば、iPhoneの世界とおさらばできます。しかも、拷問的強制力ではなく、快楽的吸引力によって、おさらばできるのです。これは精神的にもメリットがあります。
むしろ、この健康的iPhone遮断効果の方が「めぐりズム」の真なる効果なのではないかと、勘ぐっている今日この頃です。
〜〜〜スルーされている係数〜〜〜
世の中には、目に見える数字とそうでない数字があります。
たとえば、ツイッターでフォローしている数、されている数は目に見える数字です。この二つの数字の比率から、その人の発言力・影響力・存在感みたいなものが推測できます。
また、簡単にはわかりませんが、その人がツイッターで誰かをブロックしている数、ブロックされている数なども、(可視化しようと思えば)見えるでしょう。これは人と人の拒絶感の数値化と言えます。
しかしながら、「あの人、いつも大きいこと言っているし、人気もあるみたいだけど、その実何も考えていないから、別にフォローしなくてもいいな」という距離感は、数字には表れてきません。「フォローもしないし、ブロックもしない」からです。
私が考えるに、ある人(あるアカウント)への評価というのは、フォローされている数だけで行うのではなく、そこから「無視している人の数」も差し引いた方が正確です。だって、5万人にフォローされているけども、10万人に無視されている人と、5万にフォローされていて、ほとんど無視されていない人であれば、役に立つことを言っているのは後者の確率が高いでしょう。
単純に言えば、派手な言動を繰り返せばフォロー数は増えるかもしれませんが、それだけでは対した指標にはなりません。現在のインターネットはその辺の機微が欠落している気がします。
〜〜〜隙間時間に開く手帳〜〜〜
たまたまモバイルwifiの端末を家に忘れてきたので、昼食にラーメンを注文したときに手持ちぶさたになりました。パソコンを開くほどの時間はないけれども、ボーッと過ごすには少し長い。
普段は、そういうときにシュババとiPhoneを取り出すのですが、そのときはwifiがつながらなかったので、ポケットに入っていたメモ帳を取り出しました。そして、ページを開きます。
ごく当たり前のことですが、メモ帳の最新ページには、直近で自分が考えたことが書いてあります。メモ帳を開くということは、その直近の考えに再アクセスする、ということです。言い換えれば、思考の時間を少し巻き戻すことです。
一方考えてみると、タイムラインにアクセスするということは、時間の針を前に進めることです。どんどん流れ込んでくる話題。
たった5分ほどの時間ですが、少し戻すのか、それとも前に前に進めていくのか。その違いは、存外に大きいのかもしれません。でも、その差は、たぶん可視化はできないでしょうけれども。
〜〜〜タイムラインの効能〜〜〜
上記でタイムラインばかりだと良くないな、というニュアンスのことを書いていますが、だからといってTwitterがダメだという話には直結しません。
たとえば、以下のようなツイートがありました。
>> 今でもおすすめの記事。倉下さんのこの記事の前段である「Evernoteフリーク的アウトライナー論」は、ぼくの「アウトライナー・フリーク的Evernote論」へのアンサーとして書いていただいたもの。実はこの一連の流れが、ぼくが『アウトライン・プロセッシング入門』を書くことになったきっかけのひとつ。 <<
ここで「おすすめ」されている記事は以下の記事です。
◇アウトライナー嫌いだった僕が、今ではそれを愛用しているワケ(上)
https://rashita.net/blog/?p=10539
記事番号をご覧になってもわかる通りかなり昔の記事です(2013年5月9日)。そうした記事が発掘され、「今」回覧される。これが、「前に、前に」進んでいくタイムラインにおいて発生するのは、すごく素敵なことだと思います。UIが前に進む一方になっていても、必ずしもそれに沿った使い方をする必要はありません。
しかも、単に発掘されているだけでなく、「今」における文脈づけもなされています("実はこの一連の流れが、ぼくが『アウトライン・プロセッシング入門』を書くことになったきっかけのひとつ"のくだり)。振り返っているだけではないわけです。
メモ帳の中で、一人で思索を進めるのもよいものですが、それだけだとどうしても広がりがなかったり、偏りが強すぎたりといったことが起こりがちです。他人の意見に耳を傾けてみること、他人の意見に反応してみること、他人に向けて発信してみること。そうすることで見えてくるものもあります。この辺をうまく融合して使っていけるのが良いのでしょう。
ちなみに、このツイートを読んで、「Tak.さんが『アウトライン・プロセッシング入門』を書いたのと同じように、自分がブログ記事をベースに知的生産の技術について書いたらどうなるか?」というアイデアが浮かんできました。これはこれでしっかりとメモをとり、深めていきたいところです。
〜〜〜Q〜〜〜
さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。
Q. 傲慢だと自覚して傲慢な態度をとるのと、無自覚のまま傲慢な態度をとるのは、どちらがより傲慢でしょうか。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。
今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。
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2018/01/08 378号の目次
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○BizArts3rd 「仕事術を伝えるフォーマット」
タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。
○SS 「僕はスライムです」
読み切りのショートショートです。
○ノート道の歩き方 Vol.07 「記憶をサポートする記録」
週替わり連載。今週はノートについての連載記事です。
○物書きエッセイ 「書店での衝撃から考えたこと」
物を書くことや考えることについてのエッセイです。今回はロングバージョン。
※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。
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