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Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2017/11/27 第372号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

最近、Scrapbox熱が高まっていて、いろいろ作っております。

◇倉下忠憲のポートフォリオ - Scrapbox
https://scrapbox.io/rashitaactivity/

◇のきばトーク - Scrapbox
https://scrapbox.io/nokibatalk/

◇『ライフハック大全』オンライン読書会 - Scrapbox
https://scrapbox.io/rlifehackdictionary/

「ポートフォリオ」は、私の著作集であり、その他の活動履歴なども集約していく場所にする予定です。

「のきばトーク」は、毎週月曜日に放送している同タイトルの動画のアーカイブで、後からバックナンバーを探しやすいにと作りました(未完成です)。

「オンライン読書会」は、まったく初めての試みで、共同でScrapboxに知見を集めていったらどうなるか、というと少々大げさですが、皆でわいわい一冊の本について盛り上がったら面白そうだなと思い作ってみました。もちろん、『ライフハック大全』が少しでも盛り上がってくれたらいいなという願いもあります。

で、実はこれ以外にもいくつか水面下で作っているのですが、それはまた7割程度完成したらご披露したいと思います。

とりあえず、現時点で言えることは、Scrapboxは「非常に手軽」ということです。新規プロジェクトの開設も簡単ですし、プロジェクトにコンテンツを追加するのも簡単です。加えて、他のページへのリンクもものすごく簡単に記述できるので、ゆるやかな一つの方向性を共有するコンテンツを置いていく場所、としては極めて適したツールです。

強いて言うならば、「走り書き以上、ブログ記事未満を保管しておく場所」くらいでしょうか。細かすぎず、かといって固まりすぎてもいないものを、リンクで繋いでいく場所。そういう感触を今のところは持っています。

Scrapboxについては、もう少し使い込んでみて、またR-styleかシゴタノ!で記事にしたいと思います。

〜〜〜リストの最上位〜〜〜

これまでデイリータスクリストは、ずっとEvernoteに作っていました。しかし、ここ最近は試作中の7wrinerを使っています。

非常に残念ながら、Evernoteではノート内の項目をアウトライナーのように自由に動かすことができません。なので、一度タスクリストを作ってしまうと、順番を動かすのがひどく面倒になります。その点、階層が一つしかないアウトライナーとも言える7wrinerではそれが自由にできます。

で、私の毎日の一番最初のタスクは「朝棚」(タスクリストの整備)と決まっているのですが、問題はその次のタスクです。一日の中で、おそらくもっとも気力や体力が充実しているであろうそのタスクに何を持ってくるのか。これは、かなり大切です。

しかし、これまでは、わりと惰性になっていました。昨日が「R-styleの更新」だったら、今日も「R-styleの更新」になる。タスクリストの慣性飛行です。

これが、7wrinerになると急に変わります。その日の朝、タスクの整理を一通り終え、メールなども確認した段階で、一番上(実際は二番目ですが)に持ってくるタスクを選べるようになったのです。

Evernoteだって、コピペすれば一番上に移動することは可能ですが、どうしても「無理な動き」をしている感覚が付きまといます。変な表現ですが「自然ではない」のです。その点、アウトライナーや7wrinerでは、移動することはごく自然な動作となります。ツールに促されている、という感覚が近しいでしょうか。

上記の話は、本当に些細なことです。コピペの手間だとか、リストの一番上に何を持ってくるかなど、大勢に影響を与えるとは思えません。

でも、やっぱりそれは思い込みなのでしょう。

〜〜〜執筆に使える時間〜〜〜

最近、『天才たちの日課』という本を読み始めたのですが、以下のような文章に深く同意しました。

 文筆家として生きてきた者 ─ ─日々 、文学的労働に従事している者 ─ ─ならだれでも 、人間が執筆をするのに適した時間は一日せいぜい三時間であるという私の意見に賛同するだろう 。

イギリスの小説家:アンソニー・トロロープの言葉です。

一日や二日くらいなら、もっと長い時間執筆することは可能でしょう。しかし、「日々」となれば話は変わります。4時間も集中して執筆すれば、脳はオーバーヒートです。これは体験からも言えることですし、他の物書きさんの話も共通しています。

だから、「自分にもっと自由な時間があって、一日に6時間も7時間も執筆に当てられれば、アウトプットは二倍以上になる」みたいな考えは、基本的に妄想でしかありません。

でもって、『天才たちの日課』で紹介されている作家たちも、日々せいぜい数時間の執筆時間を、ただひたすら繰り返すことで著作を世に送り出しています。

もちろん、まったく時間がなければ書きようがありませんが、それでも「自由な時間があまりないから、書けない」という悲観は、「その少しある時間で、書きましょうよ」というレスポンスが返ってくるのでしょう。

〜〜〜価値と努力〜〜〜

これまでたくさんの本を出版してきましたが、どの本であっても、発売して誰かに読んでもらい、「なかなか良かったですよ」と言ってもらえるその瞬間までは、強く緊張してきました。

自分自身は、その本をたしかに面白いと思っています。だからこそ、メールの送信ボタンや、パブリッシュボタンを押しているのです。しかし、それが他の人からどう評価されるかはまったくわかりません。だからこそ、緊張するのです。「やっぱりダメだったんじゃないか」……といった、(こちらも特に根拠のない)不安が膨れあがることもあります。

でも、結局のところ、どこまでいっても自分が書いたものが他の人からどう評価されるかは事前には絶対にわかりません。でもって、それがわからないからこそ、文章を書く、ひいては何かを生み出すことには価値があるのだと思います。

「価値とは見出されるものである。だから、自分は精一杯やるしかない」

受け手がどのように評価するのかを見通す目──これは、超越者の視点です。人間が、その視点を持ち得ることはありません。いつでも、どこまでも、不確実性はつきまといます。

だからこそ、「だいたいでもいいか」「テキトーでもいいか」と開き直るのではなく、少なくともその時点の自分にできる精一杯なものを送り出す。おそらくそうした方が、実際に喜んでもらえたときの自分の喜びも大きくなるでしょうし、仮にダメであっても、「あのとき、もっと頑張っていれば」というような後悔からは距離を置けるでしょう。

それは中長期的に意味のあることだと私は思います。

〜〜〜今期のアニメ〜〜〜

そういえば、今期のアニメの話をしていませんでした(でしたよね)。

今期も良作が揃っていまして、特に、

・『キノの旅』
・『魔法使いの嫁』
・『少女終末旅行』

あたりがお勧めです。あと、『干物妹!うまるちゃんR』も、基本的にギャグですが、地味にいい話が多いです。

〜〜〜ネタバレ注意な映画〜〜〜

久々に映画館に映画を観に行ってきました。アニメ版のゴジラです。

で、当然のように上映前に大量の予告編を浴びせかけられるわけですが、一つ気になった作品がありました。

『オリエント急行殺人事件』

アガサ・クリスティーの作品の中でも、一二を争う有名な作品だと思います。ということは、この話を(そして犯人を)知っている人もかなり多いと予想されます。

こういう「犯人は誰だろう」(フーダニット)作品を、映画にするのって、結構難しいですよね。特にその作品が有名なら、なおさらだと思います。

その点、シャーロック・ホームズシリーズは、犯人あてのミステリーではないので、いろいろなアレンジ方法がありそうですが、アガサ・クリスティーの作品は、読者が犯人を予想して、著者はそれを裏切る、という綱引きが魅力のポイントなので、ネタバレしていると、魅力が半減してしまうかもしれません。

しかも、このインターネット・ワールドです。調べようと思えば、というか、調べようと思わなくても、ちょっと話題を検索すれば、ネタバレが飛び込んでくる可能性があります。

もちろん、犯人を知った上で、いかに監督が苦労して場面や台詞を構成したのかを楽しむ、という通な見方もあるかと思いますが、まだ原作を読んだことがないなら、できるかぎり事前情報は知らない方が楽しめる作品でしょう。

〜〜〜10年という節目〜〜〜

ここ最近「10周年」というワードをちらほらと見かけました。

今から10年前というと、2007年。初音ミクがブームとなり、ニコニコ動画が大変盛り上がっていた時期で、単に記憶に過ぎませんが、(アフィリエイトではない)ブログも活発に行われいたように思います。

そこから10年。

インターネットの中の世界は、スピードが早いとよく言われますが、たとえそうであるにしても、現実を生きる私たちは一年で一年分歳を取ります。その点は、いつだって同じです。

そして、リアルを生きる人間にとって、10年というのは節目です。

「三十にして立ち、四十にして惑わず。五十にして天命を知り、六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず」

と孔子も言っていますが、リアルの人間の10年という節目が、インターネットの活動にも、一つの節目を与えているのでしょう。諸行無常。万物は変化の中にあり。

さて、これからの10年は、どんな世界が広がっていくのでしょうか。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、脳のウォーミングアップ代わりでも考えてみてください。

Q. 10年後をどのようにイメージしていますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2017/11/27 第372号の目次
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○BizArts 3rd 「リストを作るツールとその性質」
 タスク管理を掘り下げていく企画。リストを作るツールについて考えます。

○SS 「AI権」
 読み切りのショートショートです。

○情報摂取の技術 「インターネットでのお引っ越し」
 週替わり連載。情報のインプットについてのお話です。

○Rashitaの本棚 『問題解決大全』(読書猿)
 Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

○7wriner開発日記 vol.7
 最近注力しているWebツールの開発顛末を書いています。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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