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『13歳からの地政学』レビュー

表紙

『13歳からの地政学』
田中孝幸 (著/文)

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進学校に通っている成績優秀な高校生一年生のお兄さん、大樹(だいき)と、勉強よりアイドルやおしゃれのほうが好きな妹、中学一年生の杏(あんず)は、夏休みの前日に近所のアンティークショップの店先で年代物の、とても高級そうな地球儀を目にします。
なぜかその地球儀が気になった二人は、アンティークショップの扉をくぐり、片目を眼帯で覆ったおそろしげな風貌の店主、近所の子供たちからカイゾクと呼ばれている男に出会うのでした。
カイゾクは、その地球儀はディプロマットというモデルで、アメリカのホワイトハウスで歴代大統領が使っていたものと同じタイプだということと、値段は時価、100万円のこともあるし、タダのこともある。と言います。
タダになるかもしれないと聞いて色めき立つ大樹と杏。カイゾクは、ならばこれから夏休みの7日間ここに話を聞きに来て、最終日に出す問題に答えられたらタダでさしあげよう。と二人に提案をするのでした。

と、いうところから始まる7日間の地政学の講義がめちゃくちゃ興味深くてわかりやすい。学校でうわべだけ学ぶ世界の出来事の、前提に必要な知識や、日本だけを見ていては解らない世界の常識などなどを、カイゾクさんはその広い見識から、中一の杏にもしっかり理解できるように説明してくれます。

世界のいろいろな地域にすむさまざまな人々、民族それぞれの視点に立って物事を考えること、大国の立場や少数民族の気持ち、歴史、地域、地勢の運不運、情報の大切さなどなど、この地球で生きていくために必要な事柄。

カイゾク自身、偏った見方であるかもしれないと言っていて、そのまま彼の言葉を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えるように指導していきます。この手腕は相当なもの。
二人の少年少女も最初は地球儀ほしさの取引きだったのですが、しだいに彼の語る、いままで意識もしてこなかったこの世界全体の本当の姿に好奇心を覚え、そしてそうした知識を知ることの意味を学んでいきます。

読者視点でも、ディプロマット地球儀をはたして二人はゲットできるのかしらん? なんていう単純な興味で読み進めていたら、気が付けば今まで知らなかった世界の姿を知り、わくわくしてページをめくってしまうわけです。

読者も、主人公の二人も、ともに学んで成長できてしまう構成はすばらしく、13歳から、なんて書かれていますが大人でもきっと楽しめます。知ってると思い込んでいたことだって、読んでみるとこういう視点があるのかあって感心してしまうこと請け合い。大人にこそ、いえ、子供にこそ。うーん、もうどっちでもw とにかく皆さんにおすすめです~☆



#田中孝幸 #地政学 #経済 #世界 #らせんの本棚

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