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『日出処の天子』《完全版》レビュー

1巻の表紙

『日出処の天子』《完全版》

山岸涼子(著)

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無人島に一冊(1シリーズだけ)持っていくなら? とか、貴女のナンバーワン少女漫画は? という問いに、多くの女子が間違いなくコレ。と答えたという(要出展)山岸涼子の『日出処の天子』。

かくいうワタクシも文庫本でそろえてあったのですが、この度なんと完全版がオール電子書籍化したということで、再度一気にそろえてしまいました。

いままで電子化されていなかったというのもおどろき

この、電子化第一弾となる『日出処の天子』を筆頭に、

山岸涼子作品一挙解禁!

山岸涼子さんの多くの作品が一挙に電子化!!
ありがたいことです☆

本当は紙を愛するアナログな私。
しかし、ハタと気づきました。
「漫画は生モノ!」 今、電子化しなくてどうする。
作品の賞味期限は迫っておりました。
まだ美味しく読んでいただけますでしょうか?

電子化に寄せた山岸涼子さんのコメント

ご本人は賞味期限が近いようなことおっしゃっておりますが、トンデモナイ、いま読んでもめちゃくちゃドキドキしますし、あらためて電子化したことで、大きな画面で、カラーページはちゃんとフルカラーの微細な表示で楽しめます。紙本(私の場合は文庫だったのでさらにちっさい)紙面では再現できていなかった美麗なアートが眼前に迫るのです(∩´∀`)∩

ほんっとこのスキャン技術、というのでしょうか、電子化時のグラフィック化がすばらしく、拡大しまくりでため息つきながら舐めるように読んでます。ほんときれいなんですよぉ~☆

ふつくしい……

あ、そうそう、まだ読まれていない方のために簡単に解説しますと、

本作品は1980年から1984年にかけて白泉社の雑誌『LaLa』に連載された、少女漫画はもとより漫画というもの自体を大きく変えたエポックメイキングな傑作で、1983年度の第7回講談社漫画賞少女部門を受賞しています。

マンガ評論家の夏目房之介氏曰く、「戦後マンガ史に残る傑作である」と大絶賛。(私もそー思いますw)

お話のほうは、厩戸王子うまやどのおおじ(聖徳太子)と蘇我毛人そがのえみし(蘇我蝦夷)を主人公に、二人の精神的(と肉体的な…)な交流を、太子の少年時代から摂政になるまでを描いたものです。

なんて書くと普通の歴史漫画のようですが、これがまたものすごい。

同性愛、近親相姦、超能力、仏教、神話、ジェンダーSF要素……、と、今ではまあありっちゃありでしょうけどー、という内容が、1980年代に描かれていたというのがまずびっくり。そして、このどれも、別にとってつけたような要素ではなく、厩戸王子の物語に必須だったのではとおもえてくる、それぞれ重要な一面になっています。

そして、何と言っても厩戸王子(聖徳太子)のナイーブさを描ききっているのがすごいのです。超人的な精神力(超能力?)を持つ反面、非常に傷つきやすくもろいその内側。聖者のようでいて俗物、男性のようでいて女性的、実の母親に恐れられ愛されず、求める愛情を得られない、とても人間的な苦しみ。愛憎。嫉妬に狂う王子の内面、美しい表情にかくされた心の描写が、とてつもなく繊細なタッチで描かれます。

いやあ、あらためて。この電子書籍化はすばらしいです。山岸涼子先生もきっとここまで微細に再現できるのならばと納得されて企画にGoを出されたのだとおもうのです。そして、スキャンされたオペレーターの方、ほんとありがとうございます。良い仕事されてます。グッドジョブ! すばらしい!(こんなところでお礼しちゃいますw)

《完全版》に当たって、今まで単行本などには収録されていなかったカラー原稿やカット、扉イラストなどを完全再現とのこと。これらが電子の力で大画面いっぱいに拡大できるのはほんっと嬉しいのです。はふー☆

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なお、現在(2022/1/10まで)サントリー美術館で行われている『千四百年御聖忌記念特別展「聖徳太子 日出づる処の天子」』

https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2021_4/

で、これまた貴重な生原稿が展示されています。あと3日! 行ける方はぜひどーぞですw

ワタクシは今日観てまいりました。いやー、すてきでしたー☆

(そして生原稿の生々しさ(あたりまえ)と、電子本のデジタル化技術を実際に見比べてみてほんっと感心&感動してしまったのですわー)

―――

『日出処の天子』《完全版》は全七巻。紙本もありますが、ここはあえて電子本をおすすめいたします。ぜひ最新のデジタル化技術をご覧くださいまし。


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