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『失踪日記』/『アル中病棟:失踪日記2』/『逃亡日記』レビュー

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『失踪日記』/『アル中病棟:失踪日記2』/『逃亡日記』

吾妻ひでお (画・著)

はああ~。(ため息)

吾妻さん、もういないんですよね……。

10月13日は吾妻ひでおさんの命日。今日で一周忌だそうです。。
(吾妻ひでおさんは2019年10月13日にお亡くなりになりました><)
謹んでご冥福をお祈りいたします。。南無……。

―――

がっくりと肩をおとしつつ、吾妻ひでおさんの晩年を飾った話題作『失踪日記』『アル中病棟:失踪日記2』、そして『逃亡日記』を読んで見ました。

『失踪日記』は出た当時に読んでいて、「いろんな意味ですっご!」って月並みな感想をもったりしていました。腐っても鯛(失礼)……いやいや、失踪してもアル中でも吾妻(だから失礼だってば! ごめんなさい!)。ちゃんとオモシロイんですよねこれが。

どん底な、ものすごい内容でもポジティブに明るくギャグになっていて、笑える話にしてしまっているところがさすがです。

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そして、アル中していたのに絵がすごいしっかりしている!!(失踪日記2で明らかにされていますが、ちゃんと「アル中病棟」を退院して、しっかり禁酒して、復活してきてマンガにしているわけです。その精神力もスゴイです)

結果、

・第34回日本漫画家協会賞大賞
・平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞
・第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞
・第37回日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門

このような数々の賞を受賞したのですね。(賞をもらった時の事も後にマンガにしていて、『逃亡日記』に入っています)


そして、『アル中病棟:失踪日記2』

前作もスゴイとおもいましたが、今度はモットスゴイ!

いや、ほんとに、驚くべきことに画力もぐっと上がっています。すごい、あの経験をバネにしてさらに成長してるよこの人!!

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↑のカバー絵もそうですけど、(デジタル作画をしていない)漫画家が最も嫌う(らしい)斜め上からの見下ろしの俯瞰図が随所に盛大に使われています。ほとんどのコマが全身入りで、細かな足元とかも手抜きせずにきっちり描き込んでいる。それがどれも無理をしているふうでなく当然のように描いてあって、いまどきなかなか見かけない職人っぷり。あとがきで対談しているとり・みき先生も「内容も描写も、正直に言うと『失踪日記』以上にすごい作品ですよ」とめっちゃ絶賛しています。(とり先生は『失踪日記』のほうでも対談されていて、そちらでもマンガの細かいことをプロ目線で解説してくれています)

この時、吾妻先生はなんとデッサン教室に通われていたとか。ベテランのプロなのにその向学心、頭が下がります。

そして、内容もグっと面白さがアップしています。濃いキャラクターたち(妄想の人物以外は実在しているというところがまたすごい)が大量に登場。

吉祥寺だの三鷹だのよく知っているエリアもリアルに実名で描かれていて、もしかしてご生前にすれ違っていたのかも……とか思うとこれまた超ショックなのです。。

あの8時までやってるM蔵野図書館ですみっこに居た酒臭いオッサンとか、某公園の水道で頭を洗っている浮浪者さんとか……こわいし汚らしいし酒臭いしと思って近寄らなかったのが悔やまれます……うわああん><
(いや、まあ、近寄らないほうがいいとおもいますけど)

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↑妄想キャラではこの鬱君がお気に入りw



そして『逃亡日記』

『失踪日記』の後、『アル中病棟:失踪日記2』を書かれている間に出された、文章(インタビュー形式)がメインの本ですが、マンガだけでは語られていなかった細かい部分や、吾妻ひでお先生の生い立ちや漫画家キャリアについてなど、興味深い内容が沢山語られています。

『失踪日記2』で実名で出ている地名等、今度は地図でも紹介されています。聖地巡りしやすそう・・・というか何処も良く知ってるところなんですけど!><

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※一度目の失踪は入間周辺とのこと。

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公園内のよく滞在したスポットまで赤裸々に……。

あんなところに忍ばれてらっしゃったのですね……。

それにしても、ほんと、惜しい方を日本の漫画界は失くしてしまったものです><

この本の中で、吾妻さんは、自分はマンガの歴史には残れないだろう、一番話題になったのが『失踪日記』(自分の得意技のSFでも、不条理でも、美少女でもない)では…。などと自嘲されていましたが、私は絶対にそんなことはないとおもいます。絶対に歴史に名を残す漫画家だとおもうのです。

だって、ほら

古本なのにぜんぜん値段下がってません! (むしろプレミアがついてる?)

マニアには相変わらず大人気の吾妻ひでおさん、きっと、その価値はあがりこそすれ下がることはないとおもいます。

私も決して忘れたりなんかしませんよ!!

だから、
今はどうか、やすらかにお眠りください。
波乱と激動の漫画家人生、お疲れさまでした。

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