『ブロントメク！』レビュー
『ブロントメク！』
マイクル・コーニイ（著） ／ 大森望（訳）
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『ハローサマー、グッドバイ』と『パラークシの記憶』ときたら、こちらも取り上げないわけにはいきません。
『ハローサマー…』に並んでマイクル・コーニィの代表作です。
『パラークシの記憶』のあとがきで翻訳者の山岸真さんが語っていた、マイクル・コーニイの（傑作の）三大特徴が、今回もそのままがっつり当て余ります。
つまり、
１．主人公と美女すぎるヒロインが問答無用で一目ぼれしあう。
２．帆のある乗り物が沈む。
３．どんでん返し。
ですね。
今回の舞台はアルカディアという海洋惑星で、これまた大洋に囲まれた大陸の、いくつかあるサブ・コロニー（居住地）の一つ、リバーサイドでのお話。この惑星の海には群体となることで他生物の精神と感応できるプランクトンが生息しています。
約半世紀（52年）に一度、６つある月が「合（ごう）」となるときにその群体は海岸に近づき、その精神感応力を使ってほかの生物（人間を含む）を海に誘い込み大量死させるという、惑星規模の自然災害が定期的におこる惑星なのでした。
そんな惑星へ、地球生まれの造船技師である主人公が流れ着いてきます。しかし、災害の記憶を持つ住人たちはじょじょに星から去っていっている最中で、過疎化がすすんでいるという状態。
この過疎化を何とかする。という名目で巨大な星間企業もやってきます。
生き残るためにしぶしぶその企業によるコンサルティングを受け入れる住民たちですが、コンサルとは名ばかりで容赦のない支配をおしつけられ、住民と企業の関係はしだいに悪化していきます。
その一方で、主人公の青年ケヴィンは、企業から派遣された美女スザンナにひとめぼれｗ
（例によって自作のヨットの沈没がかかわっていますｗ）
圧政をおしつける大企業と地域コミュニティの間の微妙なポジションで揺れる主人公と彼女。
そのほか、多種多様な惑星固有の生物層にエイリアン、人間の意思を反映した変身をする宇宙生物アモーク、惑星のプロモーションのために単独無寄港で世界一周するヨットの冒険などなど、マイクル・コーニィ要素てんこ盛りです。
それもそのはず、翻訳者の大森望さんによると、本作はそれまで書かれたマイクル・コーニィの長編作品の集大成とのこと。
まず ”Mirror Image”（1972）、本作品でも登場する、対象の意思によって変身する宇宙生物アモークと、大企業ヘザリントン機関のお話。
第二長編、”Syzygy” (1973)は、本作の舞台である惑星アルカディアのサブコロニー・リバーサイドが舞台。Syzygyは「合」の意味で、前回の災害が語られる本作の前日譚のような話。
そして『カリスマ』（原作1975、和訳はサンリオSF文庫で1981)には、本作のヒロイン、スザンナの来歴がかたられるお話とのこと。（これのみ和訳があるようなのでいつか読んでみたいですね。サンリオだけどｗ）
なるほど、たしかに３長編の内容を引き継いでますね。とはいえ、これらを読んでいなくてもモチロン楽しめます。
（私も読めておりませんし＞＜ でも、前述のマイクル・コーニイの三大要素もがっつり入っているので、なんだか初めて読んだ気がしませんでしたｗ）
ちなみに、ブロントメクとはブロントザウルスのように巨大なメカという意味の造語。作中にそういう名前の巨大メカロボが登場はするけれど、お話自体は主人公と美女のラブストーリーがメイン(だと思う？）なので、あくまでわき役というか背景の要素のようなもの。
ただそんなタイトルなものだから原書の表紙やサンリオ時代の表紙はメカメカしいものになっていたのだとか。
これはこれでカッコいい表紙ですけどね！
当時のＳＦファンにはこうしたメカメカしたもののほうが受けると思ってタイトル（＆表紙）にしちゃったのでしょうかね？
※翻訳者の大森望さんも、メカの表紙は「ちょっとちがうんじゃないか？」と思っていたそうです。今回ようやく美女ヒロインのスザンナの表紙があてられて40年来の夢がかなった気分だとかｗ やっぱ素敵＆カワイイ表紙がよいですよねー☆
さてさて、主人公たちの年齢も上がり、なんだかオトナ版の『ハローサマー、グッドバイ』という気もする本作。ちょうど『ハローサマー…』と同じく36年ぶりの和訳とのこと。レーベルごと消滅してしまったサンリオＳＦ文庫でかつて読まれたという剛の者も、そうでない若い読者も、新訳で読みやすくなっているそうですので、河出文庫から再訳出されたマイクル・コーニイの３作品、ぜひ読まれてみることおすすめします。
こちらもどーぞ☆
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