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『アレックスと私』レビュー

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『アレックスと私』

アイリーン・M・ペパーバーグ(著) / 佐柳信男(訳)

世界でもっとも賢い鳥類として、全米ネットワークやBBC等で紹介された「ヨウム」のアレックス。

事実、彼は100語あまりの英語を操り、自在に人間とコミュニケーションをとることができました。

※Youtubeで Alex Parrot で検索すると動画も沢山上がっています。

↑これはBBCのもの。アレックス本人(本鳥?)と、鳥類とのコミュニケーション研究者であり著者のペパーバーグさんが登場しています。

BBCと言えば、ちょうど先日イギリスの動物園で

こんなニュースもありましたね。このニュースの動物園のヨウムがちゃんと「言葉」を理解してしゃべっていたかはわかりませんが(たんに、人間の発していた罵倒語を面白がって来園者にぶつけていただけだとおもいますが)、この本の主役であるアレックスは、明らかに人の言葉を理解して、かつ自在に操ることができました。

アレックスは、紙、鍵、木などの素材と、いくつかの色と、そしてナッツやブドウなどの食べ物の単語を意図的に使い分け、「〇〇 ホシイ」なんて欲しいものをしゃべり、相手が聞いていないような時(忙しい時)には「チャント キイテ!」(これは教わっていないのに自発的にしゃべったそうです、人間から自分が叱られた時に言われた言葉を覚えたのでしょう)
また、1~7程度まで数字を数えることができたほか、驚くべきことに、これまた教えていないのに”0”(ナイ)の概念まで理解していたらしいとか。
さらに、ペパーバーグさんが落ち込んでいる時には「オチツイテ」と慰め、「アイムソーリー」と謝ったり、好意を持った相手には「アイラブユー」とまで言ったそうです。

まじですか!?

わたしも、正直言って最初はほんとかしらんと半信半疑で読み始めました。

人工知能の話題でよく出てくる「中国人の部屋」(部屋の中には中国語を理解している者はいないのだけれど、こういうカタチの漢字が書かれた紙を部屋に差し込まれたら、こういう英文をさしだす。ということだけを知っている。それは中国語を理解して翻訳しているといえるのか。という命題)や、人間の反応を注意深く見ていて、その反応に合わせてひづめをたたいて正解を答える「賢いハンス」という馬のように、単なる条件付けを学習した結果なのでは? という疑惑があったわけです。
「人のように考えているわけではないけれど、なんだかそのようにみえる」現象なのではないかなあ。(それだったらつまらないなあ)と漠然と考えていました。

こうした疑惑は、著者のペパーバーグさんによると、それまでの一般的な学説によるものそのままで、従来の説では「動物に心はない」「思考力はない」「判断力に見えるものは刺激に対して条件付けられた結果」というのが定説だったんだそうです。

私も猫を飼っていたことがあるので「動物に心がない」なんてことはちょっと納得できないのですが、少なくとも西洋の動物学ではそのように定義されてしまっていて、オラウータンやイルカなどとのコミュニケーション事例をいくら出しても、「動物が喋れるわけがない」と、学会では全否定されてしまっていたのだとか。(魂がある=心があるのは人間だけ。という西洋の宗教的な刷り込みが大きい気がしますねぇ)

(うちの猫は日本語はうまくしゃべれませんでしたけど、ちゃんと理解してましたヨー?(なんていう意見は、学会では「飼い主の歪んだ認識による擬人化」なんだそう。うーん。石頭め!))

そもそも当時の実験方法は余りに非人間的で、(って相手は動物なんだからそれでいいじゃん。という考え)はなっから言葉などわからないハズ。と決めてかかって条件付けをするだけの実験なのだから、結果はそうなって当然だったのです。
まず暗闇に閉じ込めて、外部からの(余計な)刺激がない状態で、さらに餌を与えず食べ物が欲しいってモチベーションにさせてから刺激を与えてその反応をしらべる。なんて、、相手に心がないと思ってないとできませんわね><

そんな、石頭な学会の常識を変えていくことの大変さといったら!

常識を覆していくことの難しさと、研究費を得るためにアメリカ中の大学を転々とする苦労話が沢山書かれていてなんとも身につまされます><

それでも、その石頭学会から突っ込まれないよう、科学的に「情をこめず」に実験対象を飼育し続けたペパーバーグさん。それは途方もなく困難な事だったとか。

どうしたって(心を持っている相手には)愛情、こもっちゃいますもんね。

そして、社会的な動物は、その愛情に愛情を持って応えます。

それこそが実はコミュニケーションの神髄なのではないか。心理的ストレスを与えて得られる反応などより、リラックスして信頼できる相手に返してくれる反応こそが、本当の意味で正しいコミュニケーションなのではないか。

そんなことを、わずかクルミぐらいの大きさの頭脳しか持たない鳥類は人類に教えてくれていたのです。

そして、彼は、虹の橋を渡る前夜、最後にペパーバーグさんに「アイラブユー」と言い遺したのだそうです。。(´;ω;`)ブワッ


#アイリーン・M・ペパーバーグ #佐柳信男 #異種族コミュニケーション #知能

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