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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#児童文学

『風の靴』レビュー

『風の靴』 朽木 祥 (著)⛵⛵ ワタクシ的に夏休みに少年少女に読んでほしい児童文学の金字塔と言えばアーサー・ランサムのランサム・サーガなのですが、けっこう前の話だしイングランド湖水地方にあんまり馴染みがなさそうな日本の子供たちには(ワタクシの場合はランサム読んであこがれたクチですが)なかなか縁遠いのも事実。 夏休みに読んで読んでーって暑苦しくすすめても無理強いはよくないし、嫌がられて印象悪くなっちゃってもなあ。なんて思いつつ廻りを見回してみたら、あった! ありましたよ!

『ブラックホールの飼い方』レビュー

『ブラックホールの飼い方』 ミシェル・クエヴァス(著) / 杉田 七重(訳) ――― なんと、あのブラックホールをペットにしてしまった女の子のお話です。 ブラックホールって、アレですね、極めて高密度で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体。そう、白鳥座X-1とか、我々の天の川銀河の中心にあるのではないかとされている、アレです。 それが、暗い夜道で11歳の科学・天文好きの女の子、ステラの後ろをついてきちゃうのです。 それを、恐ろしがりなが

『クローディアの秘密』レビュー

『クローディアの秘密』 E.L.カニグズバーグ (著) / 松永ふみ子 (訳) ――― 長女はつらいよ。 こんなことは改めて書くことでもないですが、家族の中で長女というのは、いつだって年齢以上の責務を負わされた上に貧乏くじを必然的に引かされて、つらい思いをしつづけるんですよね。血のつながった家族が存在する以上、「常に」。そして他の家族からは顧みられることはないのです。あーあ。 ということで、12歳の誕生日のひと月ほどまえ、三人の弟をもつ長女のクローディアは、こんな

『ブラッカムの爆撃機』レビュー

『ブラッカムの爆撃機』 ~チャス・マッギルの幽霊 / ぼくを作ったものロバート・アトキンソン・ウェストール (著)/ 宮崎駿 (編) / 金原瑞人 (訳) ◇ イギリスの図書館協会CLIP(Chartered Institute of Library and Information Professionals)から贈られる児童文学の賞「カーネギー賞」を受賞している児童文学作家ロバート・ウェストール(1929-1993)の作品集です。 表題作『ブラッカムの爆撃機』

『小公子』レビュー

『小公子』フランシス・ホジソン・バーネット(著)・川端 康成(翻訳) ――― 児童文学の古典的名作。 しかも川端康成訳!! でもって今回なんと山田章博さんの絵が表紙ですよッ! 思わず見つけて即買いですw(山田章博さん好きなんですよぉー) で、良くみたら(遅い)小野不由美さんが帯書かれてますね。 いわく、 小学生の頃はバーネットの『小公子』が異様に好きだった覚えがあります。川端康成訳の本を貰って、事あるごとに読み返していました。(中略)改めて振り返ると、小さ

『砂の妖精』レビュー

『砂の妖精』ネズビット・ブラント イーディス(著) / 石井 桃子(訳) ◇ イギリスの田舎、チョークや砂利の採掘場のある辺鄙な砂だらけの地方の丘の上のみすぼらしい一軒家に、お母さんに連れられて、幼い赤ん坊と四人の兄弟姉妹が引っ越してきたのは、今から100年以上も前のこと。 100年の昔でも、都会のロンドンあたりになると、建物や道路は、大人たちが好む「まちがった形に」まっすぐきっちりと作られていて、ぐねぐねと自然な「正しい形」になっていませんでした。 子どもたちが安心