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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#読書の秋2020

『いさましいちびのトースター』&『いさましいちびのトースター火星へ行く』レビュー

『いさましいちびのトースター』 『いさましいちびのトースター火星へ行く』 トーマス・M. ディッシュ (著) / 浅倉 久志 (翻訳) / 吾妻ひでお(イラスト) ◇ 今回は2本立てのレビューです。 タイトル通り続き物。 そもそもタイトルで出オチ感満載なのですがw (もちろんグリム童話『いさましいちびの仕立て屋さん』がタイトル元ですね) グリム童話になぞらえていますが、これがまたしっかりした童話になっています。いちおう、子供向けなのですが、十分オトナが読んでも楽

『光の塔』レビュー

『光の塔』今日泊 亜蘭(著) ◇ 読みにくいけれどなんだか洒落た語感のある著者名は(きょうどまり あらん)と読みます。 あの伝説の同人誌「宇宙塵」に設立より参加し、長い間日本のSF界の最長老として知られた御方です。(2008年に97歳で没。南無><)そして、その「宇宙塵」に連載され、1962年(昭和37年)に刊行されたのが本書。 これ、知る人ぞ知る国産本格長編SFの第一号なのです。 もちろん、何をもって日本SF第一号とするかとかいろいろ議論はあるとおもいます。戦前

『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』レビュー

『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』 シオドラ・ゴス(著)/鈴木 潤(翻訳) ◇ ヴィクトリア朝時代のロンドンで、父に続いて母も失くし、途方に暮れた令嬢が、屋敷に残るメイドや召使いたちに(もうお給料が出せないからと)これ以上世話をしてくれなくてよい、と、解雇を知らせる場面から物語はスタート。 この令嬢こそ、誰あろう、本書のヒロイン主人公のメアリ・ジキル。あの、ジキル博士の娘なのです。ジキルがいるならハイドもいる、ということで、彼女は殺人犯として指名手

『ブラックホールの飼い方』レビュー

『ブラックホールの飼い方』 ミシェル・クエヴァス(著) / 杉田 七重(訳) ――― なんと、あのブラックホールをペットにしてしまった女の子のお話です。 ブラックホールって、アレですね、極めて高密度で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体。そう、白鳥座X-1とか、我々の天の川銀河の中心にあるのではないかとされている、アレです。 それが、暗い夜道で11歳の科学・天文好きの女の子、ステラの後ろをついてきちゃうのです。 それを、恐ろしがりなが

『「色のふしぎ」と不思議な社会』レビュー

『「色のふしぎ」と不思議な社会』 2020年代の「色覚」原論 川端裕人(著) ◇ 『夏のロケット』、『川の名前』、『銀河のワールドカップ』、『雲の王』に『青い海の宇宙港』……などなど、ワタシ的に超ツボな、ぐっとくる小説の数々を書かれている川端裕人さんなのですが、最近はノンフィクションも多く出されています。ナショナルジオグラフィックで『「研究室」に行ってみた。』なんて連載もこなされていて、さすがの一言。 ◇ さて、本書は、そんな川端裕人さんがここ数年取り組まれていた

『一人で歩いていった猫』レビュー

『一人で歩いていった猫』 大原まり子(著) ◇ 前回紹介した の前に出版された中短編集。 タイトルの『一人で歩いていった猫』が1980年の第6回ハヤカワ・SFコンテストに佳作入選しデビューしたという、大原まり子さんのデビュー本でもあります。 表題作含め収録4作品すべてが、いわゆる「大原まり子の未来史」、と言われる世界の物語。この世界感がなかなか深いのですよー。 今回は語りたいことたくさんなので、まとめて一気に行きますねー。 ◇ 『一人で歩いていった猫』 上に書