マガジンのカバー画像

らせんの本棚

218
SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
運営しているクリエイター

#ファンタジー

『 失われたものたちの本 』レビュー

『失われたものたちの本』ジョン・コナリー(著/文) 田内志文(翻訳) 📚 第二次大戦下のイギリス。本好きな12歳の少年デイヴィッドが主人公。 彼は、母親を亡くした孤独から本に埋もれて過ごし、いつしか本達が交わす言葉、本のささやきすら聴こえるようになっていました。 そんな少年の深い悲しみをよそに、父親は新たな女性と再婚します。父親視点ではデイヴィッド少年にこそ新しい母親が必要と考えたのでしょうが、亡き母を愛するデイヴィッドにとって父親のその行為は重大な裏切りでした。 やが

『僕と魔女についての備忘録』レビュー

『僕と魔女についての備忘録』三つ葉優雨 (著) ◇ 森に捨てられた幼児「渉」を拾ったのは、若く美しい姿のまま100年以上の時を生きてきた「魔女さん」。 時を超えて生きる魔女さんと、普通の人間の時を歩む渉。母子のような関係はやがて渉の成長とともに変化していくのですが、お互いの愛おしく想い合う心は変わることがありませんでした。 魔女さんと同じ時を生きられないさだめを小さなころから理解していた(かしこい!)渉は、日々忘れたくない事を備忘録として綴っていきます。 そんな、渉の想い

『服飾師ルチアはあきらめない』レビュー

『服飾師ルチアはあきらめない』 ~今日から始める幸服計画~甘岸久弥(著)雨壱絵穹(イラスト) / キャラクター原案:景 📚 手袋や靴下、小物編み物などを一家で作るファーノ工房の娘、ルチア・ファーノには夢がある。 それは、 「自分の店と服飾工房を持ち、自分がデザインしたかわいい服で王都をうめつくすこと!」 チビで地味な見た目を男の子からからかわれ、派手な服なんてどうせ似合わないと泣いていた幼女時代、裏路地で出会った「夕焼けのお兄ちゃん」から『本当に好きなら着てしまえ、君は

『魔導具師ダリヤはうつむかない』レビュー

『魔導具師ダリヤはうつむかない』 ~今日から自由な職人ライフ~甘岸久弥(著) / 景(イラスト) ◇ 転生者ダリヤは駆け出しの魔導具師。 物語冒頭(一行目!)でいきなり婚約者に婚約解消を言い渡され、途方に暮れるところからスタート。いわゆる不幸のどん底からの再出発テンプレストーリーなわけです。 しかし、婚約時代はいつもうつむきがちで相手の望む通りにしていた彼女だったのですが、この不幸をきっかけにしてどん底を跳ね返し、もううつむかず、好きなように生きてやると決心するのでした。

『転生令嬢と数奇な人生を』レビュー

『転生令嬢と数奇な人生を』 かみはら(著)/しろ46(イラスト) 📚 転生もの、そんでもって(悪役じゃないよ!)令嬢もの。 いわゆる異世界転生ものの、なんというか定番なイメージと受け取られかねないタイトルです。 でも本作は、普通の(イージーな)転生モノとはかなり違います。 異世界であっても人生楽じゃないのよ。貴族の令嬢だって大変なんだから的な、チートなし、魔法なし(世界には魔法はあるっぽいけれど主人公はその才能なし)の、世知辛ハードモードで極太な人生ドラマが繰り広げられます

『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』レビュー

『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す  ~ヘンダーソン氏の福音を~』著/Schuld イラスト/ランサネ 📚 最近いろいろと異世界物を物色しているワタクシです。 だんだんと普通のテンプレ小説では飽き足らなくなり、つぎつぎと異色作をつまみ食いしていたりするのですが、その中でもけっこう気に入った変わり種作品がこちら。 いちおうは異世界転生もの、若年性の癌で早世した主人公が、異世界の5歳の少年の意識に前世の記憶として知覚されたところから物語は始まります。 冒頭から

『騎士譚は城壁の中に花ひらく』レビュー

『騎士譚は城壁の中に花ひらく』 ゆづか正成(著) 今回は、「できればもうちょっとメジャーになってほしいんだけどなー!」と個人的に応援してる推しコミックのご紹介です。 時は中世。錠の城の騎士見習いの子供、ロサが、いつか一人前の騎士になる日を夢見ながら、城壁の中で一歩ずつ成長していく姿を描くハートフル(?)な日常系@城コミックなのです。 なのです。 です、けれどもw まあ、第一話でもうバレバレなのでちょっとだけネタバレしてしまうと、騎士見習いのロサは、実は女の子。性別と過去を隠

『Babel バベル』Ⅰ~Ⅳレビュー

『Babel バベル』Ⅰ~Ⅳ著者: 古宮九時 / イラスト: 森沢晴行 📚 大学一年生の水瀬雫は、夏休みの初日に、不思議な「穴」に吸い込まれてしまいます。 抜け出た先はずばり異世界。頭上にドラゴンが舞う灼熱の砂漠に転移した雫は、偶然通りかかった親切な旅人たちに助けられ、近くの町に身を寄せることに。 「なぜか言葉が通じる」この世界で、魔法文字を研究している魔法士の青年エリクと出会い、彼の協力を得、もとの世界への帰還を目指して旅をすることになります。 さてさて、この、もとの

『いさましいちびのトースター』&『いさましいちびのトースター火星へ行く』レビュー

『いさましいちびのトースター』 『いさましいちびのトースター火星へ行く』 トーマス・M. ディッシュ (著) / 浅倉 久志 (翻訳) / 吾妻ひでお(イラスト) ◇ 今回は2本立てのレビューです。 タイトル通り続き物。 そもそもタイトルで出オチ感満載なのですがw (もちろんグリム童話『いさましいちびの仕立て屋さん』がタイトル元ですね) グリム童話になぞらえていますが、これがまたしっかりした童話になっています。いちおう、子供向けなのですが、十分オトナが読んでも楽

『精霊の木』レビュー

『精霊の木』上橋菜穂子(著) ――― 《守り人》シリーズで有名な上橋菜穂子さんのデビュー作、ずっと入手困難でしたが30年ぶりに再販・文庫化されました。 作家生活30周年ということで、この本には、30年前の「初版あとがき」、15年前の「新装版あとがき」、そしてこの本用の「文庫版あとがき」の3本のあとがき、それに加えて《守り人》シリーズの担当編集者である偕成社の別府章子さんによる解説までが付いてきます。上橋菜穂子さんの歴史を知る上でとってもお得な重要資料となっていますw

『博物戦艦アンヴェイル』レビュー

『博物戦艦アンヴェイル』 小川一水(著) ◇ 清く正しい(かどうかはちょっと微妙)な海洋冒険ファンタジー! いやあ、面白かった!!  ◇ 16歳の少女騎士ティセル(泳げないので海が嫌い)が、王宮の少年道化師ジェイミーの護衛となり、世界の驚異を探すための探検帆船『博物戦艦アンヴェイル』に乗り込み、今だ海図も作られていない外洋へ乗り出す……。 異世界ファンタジーものっぽいですが、さすがSF作家の小川一水さん、設定がとにかくしっかりしています。 まだ蒸気機関の発明前

『数の女王』レビュー

『数の女王』川添 愛 著 ◇ お話は、邪悪な呪いの使い手である王妃が支配する王国から始まります。 残忍な王子を溺愛することをのぞいて、あらゆる者は王妃の呪いの対象になっています。(夫である王様も当然憎しみの対象です) そして、実の娘である美しい姉姫と、孤児としてもらわれてきた赤毛の養女、主人公のナジャも、多くの使用人同然の扱いでこき使われており、小さなころから王妃の命令で謎の「計算」をさせられていました。数年前に起こった「惨劇」の夜まで。 その惨劇で、仲間の数え子と呼

『図書室の魔法』レビュー

『図書室の魔法』ジョー・ウォルトン (著), 松尾 たいこ (イラスト), 茂木 健 (翻訳) おもしろかったー! 本好き、SF好きにはたまらない本でした。特に小さいころにまわりから孤立してしまっていて、本をむさぼり読むことで自分のアイデンティティを確立したような経験のある人(ってアタシのことかよ!?w)には最高にハマる小説です。 舞台は1979年~80年のイギリス、15歳の少女モリがウェールズの田舎からイングランドに引っ越してくるところから始まります。 日記形式