アンパンマンの戦闘準備の甘さと、体張る系の娘について思うこと
馬や牛の赤ちゃんが生まれた直後に自らの力で立ち上がる、というような映像をたまに見る。
あまり動物の生態には詳しくないが、彼らはそれから間もなく狩りの仕方を習得し親元を離れ、自力で生きる術を身に付けていく、というイメージだ。
胎生や卵胎生の動物なら親から処世術を学ぶこともあるだろうが、卵生の生物の場合、殻を破って外に出てみたら誰もいない、というケースも珍しくない。
と、浅い知識ながら僕は認識している。
一昨年に娘が生まれ、1歳半を過ぎた。
おかげさまで大病や大怪我もせず、すくすくと育っている。
動物と比べるのも少々無理はあるが、人間の子どもは随分と不完全な状態で生まれてくるものだと、今さらながら思う。
生まれた瞬間、第三者にヘソの緒を切ってもらう。
人の手を借りる人生はここからスタートする。
厳密にいえば、そのスタート前の胎内にいる頃から親や病院による健康観察、管理をされる。
自力で食事も摂れず、トイレに行くことも入浴も出来ず、可能なことと言えば泣き、愛想を振りまく程度。
放っておいたら確実に短い生涯を閉じることになる。
自力で移動をするようになると、自ら進んで危険に立ち向かって行く。
さながら、体張る系芸人のように。
高い所に登る、歯ブラシを口にくわえたまま走ろうとする、狭い隙間に侵入する、駐車場で逃走を図る、といったパフォーマンスを一切の恐怖心無くこなしている。
藤岡弘、氏は50年以上前にショッカーに改造されたおかげでジャングルでの無茶な活動を成し遂げているのだ。
うちの娘はまだ改造手術も受けていないし、変身ベルトも手に入れていない。
こういった危険行為、法に触れそうな何かしらの薬物の力を借りない限り大人には真似出来ない芸当だと思っている。
そう考えると、「粉ミルク」と書かれた缶の中に入った白い粉末の組成が少し気になってくる。
大人向けの食品と比べると、なかなかの末端価格である。
子供向けのコンテンツで言えば、アンパンマンの崇高さにも目を見張るものがある。
まだ初参拝はしていないが、自分の頭部を一部切り取り信徒に配るタイプの正義の味方が祀られているという餡ぱん男神殿は、なかなかの神聖な光を放っている。
上記の拝観料を納め、別途お布施を包めば下記のような有難い施しも受けられる。
慎ましやかに細々と暮らす我が家が親子3人で参拝に向かうとなると、6,000円(税込)プラス 粘着式の御札や有難い食料品、その他の有難い綿入の布製像に対する奉納で、我々は1ヶ月3食うまい棒生活を強いられることになる。
そう遠くない未来に参拝する日も来るだろうが、今のところはアカチャンホンポのアンパンマンコーナーに娘を連れて行き「ここがアンパンマンミュージアムだよ」と教え込んでいる。
時には奮発し、100円玉1枚という破格で子どもを背中に乗せて飛んでくれるアンパンマンの偶像に娘の身を預けることもある。(子どもを乗せて飛ぶのに100円(税込)徴収するあたり、堅実な正義の味方である。きっと子どもを降ろした後、その100円で2本入りのカロリーメイトでも買うんだろう。飛行後の栄養補給は重要だ。)
大興奮する娘の姿を見ながら、「パパみたいな嘘つきになってはいけないよ」と心の中でつぶやくのが最近のルーティーンだ。
いずれ娘は器用に喋れるようになり、保育園のお友達に「あたしは毎週末、パパにアンパンマンミュージアムに連れて行ってもらっている」という自慢発言から親の嘘が発覚するだろう。
お友達にからかわれて自暴自棄になった娘が、金髪にし鼻にピアス穴を開け、肩にはドキンちゃんのタトゥーを彫り、祖父母に買い与えられたアンパンマンカー(メロディ付き)で家庭内暴走行為に明け暮れることだけは避けたいと思っている。
独身の頃は酒やタバコ、車に不自由しない為に働いていたようなものだが、ここ最近は娘に不憫な思いをさせないように、という目的が加わったように思う。
実際のところ仕事をする姿勢はそのままだが、意識的な部分では少し変わったような気がする。
20代の頃には想像もしなかった変化だ。
賛否両論の末昨年の終わりに振り込まれた諭吉先生達は、娘名義の口座にそのまま引越して頂いた。
国の意図する使途ではないと思うので、その分きちんと私財を投じアンパンマングッズを購入、国の経済回復に貢献する予定だ。
いずれ娘も、頭部の一部を信徒に配る正義の味方に飽きる日が来るだろうが、しばらくは 故 やなせたかし先生の墓前に僕の平日数時間を捧げる所存である。
※余談だが、先日の放送で雷雨の中ばいきんまん(平仮名表記が正式。バイキンマンではない)と死闘を繰り広げるアンパンマンは、顔の水濡れ防止用に透明な金魚鉢状のヘルメットを被っていた。
そんなのがあるなら常に持ち歩いておけよ!いつも「顔が○○で力が出ない」などと言って戦闘不能になるのは、ただの準備不足じゃねぇか!と心の中で叫んだことは娘には内緒だ。
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