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上質な演奏は、思考の手助けをしてくれる

コンサートやライブで1番たくさんの経験をするのは間違いなくパフォーマー。

いきなり関係ないことを話しますけど、昔やっていた実況パワフルプロ野球というゲームでは。自分だけの選手を育てていくモードがあった(パワプロのサクセスモード)。

そこでは①野球に関する練習をして経験値をため②能力を上げ③レギュラーを勝ち取り④試合に勝ち⑤スカウトされプロ入りする、っていう感じで話が進んでいく。僕は小学生くらいの頃、全選手を能力値オールAで揃え、パワーヒッターとアベレージヒッター両方取得とか、変化レベル7を2種類と球速155キロ以上とかいう選手を命名が追いつかないくらい作りまくって遊んでいた。

何のハナシかと言うと、パワプロの中でも、練習よりも試合でヒットを打ったり奪三振取るほうが経験値をたくさんもらえたんだよね。その時は、「変化球練習とか矢部くんと神社特訓したほうが絶対変化球上手くなるじゃん」ってちょっと不満だったんだけど、おとなになって少しわかるようになってきた。

ステージの上に立ったり、本番という緊張感のなかでパフォーマンスを発揮して結果を出すことと、集中できる環境の中でワザを磨くことは根本的に違う。

言い換えると、「今20くらいの能力があってそこから1しか本番で出せないけど、いついかなる状況でも10を出せるようになる」ことと、「20をそもそも50に持っていこうとする」作業は全くの別物ということ。

経験値という使い古された靴下のような雑な言葉を使うと、20を100にしようとするよりも、1から10を出そうとすることの方がいいパフォーマンスのためには影響がでかいから、より大きな経験値総量としてカウントされてたってことだな。

**なんて、いきなり本題からずれたことを話し始めちゃったけど、今日はこの話じゃなくて… **

演奏を聴いていると、聴いている方も色んな「体験」をする。
そのコンサートによって3パターンくらい反応があるんだけど、
①まずは、弾いている人頑張れ!って思いながら聴いているパターン。
②そして音が綺麗だなってことに集中しているパターン。
③あとはイメージとか思考が広がって、演奏中いろんなことに思いを馳せるパターン。

体験として満足度が高いのは間違いなく②とか③のとき。
僕は今、自分の演奏が定まっていないから、こういう音を出したいっていう目線から演奏を聴く事が多くて、「どうしたらこの音が出るのか?」ってずーっと考えているので②音に集中していることが多い。

どんな手の形で弾いているのか?どんな角度でどんなスピードで鍵盤に向かっていくとこの音色になるのか?鍵盤に押し付けられるときのタッチは?このとき何を考えて、どんなことをイメージして弾いているんだろう?この曲のそのフレーズをどんなふうに解釈して、自分の経験や感情からどんなふうにいま捉えているんだろうか?ていうかこの曲のこと好き?そもそもピアノのこと好きなの?ここはそのタッチで弾いているけどさっきのと違うのはなんで?というのを、耳から入る音を聴いて感じる以外の意識を全部そこに向けて聴いてる。

でもね、そんなことをずっと考えていても、ふと気持ちが飛ぶことがあるんだよね。
Krystian Zimermanのコンサートとか、林正樹さんのライブとか。頭の片隅にある考え事とか決断するのをためらって悩んでいたことが、なぜかスッと腑に落ちてくることがある。

演奏を聴いているどの成分が作用したのかはわからないからこれ以上広げることはできないんだけど、自分もそんな上質な演奏を提供できるようなピアニストになれたらなんと幸せだろう。

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