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監査法人1年目の教科書 -初めての繁忙期を最小限の迷惑&スキルで乗り切る編 中-

「初めての繁忙期を、先輩にかける迷惑を最小化し、乗り切るために必要なスキル」に集中して書いています。ここに書いてあることを押さえればなんとかなる、を目指しました。今回は第二弾「繁忙期を乗り切る思考法」です。

第一弾はこちら監査法人1年目の教科書 -初めての繁忙期を最小限の迷惑&スキルで乗り切る編 上-|ララ (note.com)

本記事では未熟なりに一矢報いていくために大事な思考法を3つまとめています。私は人一倍時間をかけなければ、厳しい競争を勝ち抜けない自覚があるため、未熟なりにどう考え、振る舞っていくか考えてきました。以下私も現在進行系で意識しており、手応えを感じる思考方法になります。

それでは早速本文へ

空雨傘必ずセット

空雨傘とは?

空雨傘は問題解決のフレームワークです。空雨傘それぞれ以下になります。

空:事実
雨:解釈
傘:行動

このフレームワークを使って簡単な例を整理すると「曇っている空(事実)を見て、雨が降りそうだ(解釈)と思ったから、傘を持って出かけた(行動)」になります。

空雨傘セットがなぜ大事か?

それは空雨傘のうち、どれかが欠けていれば、他の誰かがそれを補う必要があり手間がかかってしまうからです。具体例を挙げて説明してみます。

空のみ
例えば「火事です」等事実の報告だけにとどまる場合です。火事だから逃げた方がいいのか、火事だけど大したことないから気にしなくていいのか分かりません。事実だけ報告されては、される方も「だから何?忙しいんだけど」と思ってしまいます。

空傘の短絡
例えば「人手が足りないから採用人数を増やす」等です。解釈の部分について深く考えられておらず、大抵的外れの行動をしています。先輩からするとしっかり仕事をしているようだから大丈夫と思っていたら、的外れな方向にずんずん進んでいってしまっていることが多いです。

この場合仕事の巻き取りや、事実確認からしなければならない場合があります。なによりも皆さんが時間と労力をかけた作業が無駄になる可能性があり、私も経験がありますが「この時間なんだったのー?😢」と思います…。

事実は誰から見ても変わりません。行動の違いを産むのは、解釈の違いです。解釈は様々なしようがあり、事実の収集で報酬をいただくこともありますがコンサルタントが報酬の対象は、ほぼこの解釈についてです。友人に恋愛相談するときも、たいていは異性の行動の裏にある本音の解釈ですよね。

会計士試験を突破した皆様なら、将来必ず優れた解釈を作れるようになります。ただ初めての繁忙期では間違った方向に進むリスクの方が高いため、ぜひ解釈の部分は以下の質問の仕方を参考に先輩に確認してみてください。

上手な質問の仕方

この空雨傘セットが優れているのは、そのまま質問にも使えるからです。ビジネスでの質問は大きく分けて3種類あります。

①事実(空)の確認
「〇ですか?」

②事実(空)+解釈(雨)
「〇ですが、△と考えて問題ないでしょうか?」

③事実(空)+解釈(雨)+行動(傘)
「〇ですが、△と考えていて、□しようと思います。その方向性で問題ないでしょうか?」

皆さんが悪いわけではなく、繁忙期では仕事を丁寧に教えている暇が残念ながらありません。そのため①を多用するとだんだんと相手にされなくなることが、質問される側になると分かります…。

空だけの質問は検索や本を読めば解決することがほとんどですし、解釈についても一から説明するのは大変です。

やはり空雨傘セットで質問をしてくる新人を見ると「すごいな」と思わされます。教育する手間も少なく、逆にこちらが気付かされることもしばしばで、繁忙期後も一緒に働きたいなと思います。事実は誰から見ても変わりません。行動に違いを生むのは解釈の部分です。

なおこの考えはこの本にも詳細に載っていますので、気になる方は読んでみてください。


Speed is King

Speed is King とは?

仕事においてハヤさは最強の盾&最強の矛となってくれます。特に繁忙期において先輩が困るのは「手遅れ」です。仕事を巻き取ることも構いません。ただ期日も決まっている監査において一番怖いのは手遅れです。私の友人の言葉を借りましたが、Speedはリスク管理にも、評価にも効いてきます。その意味でSpeed is Kingとしています笑

二種類のハヤさとは

速さと早さがあります。速さは作業するスピード、早さはタイミングの早さです。仕事が早い人は3種類います。

①作業するスピードが速く、仕事に着手するタイミングも早い(真面目なしごでき)
②作業するスピードは速いが、仕事に着手するタイミングは遅い
③作業するスピードは遅いが、仕事に着手するタイミングが早い

ここで監査法人繁忙期を乗り切るため目指すべきは③の作業するスピードは遅いが、仕事に着手するタイミングが早い人、です。先輩方には基本作業スピードでは勝てません。先輩方は繁忙期を何度も経験し、その度に調書を作っています。入社後一年も経つと分かりますが、調書には型がありますので何度か作れば、作業は速くなります。そんな方々と、初めて調書を作成する皆さんが速さで戦うには分が悪すぎます。そのため皆さんが意識すべきはタイミングを早くすることです。

まずはタイミングを早くする

相談するタイミング、着手するタイミングを意識的にワンテンポ早めていきます。早さは最強の盾となってくれます。タイミングを制するものが初めての繁忙期を制すると言っても過言ではありません。先にもお伝えしたように先輩方が一番困るのが「手遅れ」です。

監査は法律でも期限が決められているため、遅れが致命的なミスに繋がる可能性があります。まずい状況の発覚が早ければ、好ましくはないですが先輩が巻き取る等対策を打てます。

後手に回ってしまうと余計に先輩方に迷惑をかけます。ある程度の迷惑をかけることはしょうがないですし、先輩方もそうやって仕事してきました。大丈夫です、頼っても、弱音を吐いても。ただ手遅れにならぬよう報連相は早くしましょう。

ご参考までに具体例を挙げてみます。

・タスクを振られたらすぐ手をつけてみる
・わからないことは空雨傘セット(以下で解説)ですぐ聞く
・休憩を取った後やろうと思ったときは、その前に少しでも進める

なおこの考えはこの本から抜粋しています。気になる方は読んでみてください。


それ以外思考

それ以外思考とは?

物事の裏を考えることで思考の幅を広げ、盲点を減らす思考法です。何かを肯定する考えがあれば、それ以外の否定する考えもあるでしょうし、量的な考えがあれば、それ以外の質的な考えもあるでしょう。同じようにマクロがあればミクロがあり、ネガティブがあれば、ポジティブもあります。

このように何かを考えたときにそれ以外は何か?を考えるクセをつけることが大事です。

なぜそれ以外思考が大事なのか?

このそれ以外思考があると、様々な立場から物事を見ることができるからです。

例えば引当金ですが、我々監査人が「計上すべき」と考えても、クライアントは「計上する必要なし」と考えているから計上していないのです。実務では裏での交渉による例外や許容があったりと、柔軟な対応が求められますので、べき論だけでは回っていません。

それ以外を考えることで、クライアントに寄り添う思考であったり、自分の意見にさらなる深みを出すことが可能になります。プレゼンテーションで「私はこう思います。確かに〇〇で」と譲歩する姿勢を見せることもこの思考法の1種ですね。

ちなみに私の最も尊敬するパートナーは「それ以外思考だけでパートナーまではいける」とおっしゃっていました。監査人は利害の間に立つことが多いため、それ以外であったり裏を考えることは必要最小限なのかもしれません。

裏返し思考の具体例

ここで一つ裏返し思考の具体例を。先輩へ相談する方法を考えてみることにしましょう。パッとこんな手段を思いついたとします。

ここでそれ以外がないかなと考えてみるわけです。

ここで例えば自分が直接上司に聞くことを前提にしていたなと気づいたとします。そうすると他の人に聞いてもらうことも可能になり、選択肢が広がります。

またさらにそれ以外がないかなと考えると「あれ、手段ばっかり考えてたけど聞き方という分岐も考えられるなー」「いつ聞くか、という選択肢も広げられるし、どこで聞くかも考えないとか」「というかそもそも上司ではなくて、同期や後輩に聞けばよくない?」「当たり前に社内の人に聞くって考えてたけど、外部の人に相談しても良くないか?」「国内の人って考えてたけど、海外の人でもいいのか」といくらでも広げられます。

それがあれば、必ずそれ以外があります。それ以外を考えることで様々な角度から検討することができ、結果的に多くの選択肢からベストな選択を採ることができます。

心構えへのアドバイス

蛇足かもしれませんが、最後に一つアドバイスです。

できない自分を責めないでください。物事にはコントロール可能なものと、不可能なものがあります。初めての繁忙期は、コントロール不可能な事態に多く見舞われます。大丈夫です、空雨傘セット+裏返し思考で多面的に考えつつ、タイミングを早めれば周りと自然と差がつきますので。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が皆さんの役に立てば嬉しいです。なお以下の記事が「監査法人1年目の教科書」シリーズすべてを集約したものです。私がこのシリーズを始めたきっかけ、込めた願い等も書いていますのでよかったらどうぞ!


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