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鳥かごの鍵 7

目が覚めると彼はもう着替えていた。
私は急いで起きて、
「コーヒーでも入れる?」
と彼に聞くと、
「もう出るからいらないよ。
寝てていいよ、勝手に出るから。」

と髪を整えながら彼が答える。

「ごめん起きれなくて」

私が謝ると彼は私に軽くキスをして、
「いいよ、9時に家出るんだろ?
もう少し寝れるよ。じゃいってきます。」

「いってらっしゃい。」

彼は足早に家を出た。

時計を見ると、7時少し前だった。

私は「月」にメールすることにした。

「昨日はごめん、
忙しくて返信出来なかった。怒ってる? 星より」

メールを送り、
私は仕事に行く支度をする、
洋服に着替えて、
スマホを見る。
彼が着たTシャツやタオルを洗濯機に入れて、
スマホを見る。
朝ごはんを食べながらスマホを見る。
インコに餌をあげながら、
スマホを見る。
「月」怒ってるのかな?とインコに話かけながら、
返信の来ないスマホを見る。

返信が来ない。

私は何度もスマホを見ては落胆していた。

出社の時間になり私は家を出た。

病院に着くまでに何度もスマホを見たが返信がない。

もう返信は無いのかもしれない。
お互いのことは何も知らない、
このアプリをアンインストールしたら,
私達の関係は終わり。
関係?
私達に関係ってあるの?
お互いのことは何も知らない、
細い糸1本で繋がれた関係。
糸がいつ切れてもおかしくない。

病院に着いて、白衣に着替えて、
いつもの席に座ると、
なつが話しかけてきた。

「元気無いじゃん、彼とケンカでもした?」

「えっ!元気だよ、ケンカなんてしてないよ。」

「ねーねーそれより、
今日のお昼どうする?」

なつは私のことなんてどうでもいい様子で、
違う話しをはじめた。

「今日のお昼はコンビニですませようかと思ってた。」

「ねー近くに出来たあの水色の看板のカフェに行かない?」

先月病院の近くに出来たカフェで、
オープン当初は混んでいたけど、
オープンから1ヵ月が過ぎたので、
並ばなくても入れるようになっていた。

「あー私も行って見たかったからいいよ。一緒に行こう。」

「じゃ決まりだね。」

思ったより病院が混んだので、
お昼が遅くなってしまった。
カフェに着いた時には13時半だった。

この時間だとお店は空いていた。

「いらっしゃいませ、2名様ですか?」

店員が声をかけて来た。

「はい、2人です。」

と返事をして店員の顔を見ると、
なかなかのイケメンだった。

「こちらの席でいいですか?」

裏庭が見える席に案内してくれた。

窓からはカフェの裏にある庭が見えた。

レンガで囲まれた小さな庭だけど、
小さな植木鉢がいくつかありかわいい庭だった。

「本日のランチはサンドイッチになっています。」

イケメン店員くんが机の上に置いてあった、
小さなメニューを指さして、
ランチをすすめて来た。

「ランチ2つお願いします♪」

なつがきらきらした目で彼を見ながら、
1人で注文を決めていた。

「以上でよろしいですか?」

「はい♪」

イケメン店員くんが厨房に入ると。

興奮ぎみのなつが、

「見た!!ちょーイケメン!
でも若いよね、彼女いるよね。
あー若いっていいねー」と興奮して話している。

「確かにイケメン。彼女いるでしょ!
イケメンカフェ店員だもん!」

私はそう答えてまたスマホを見た、
しかし「月」からのメールは無かった。
仕事をしているなら昼間にメールがあるわけない。
「月」は社会人なんだなと勝手に決めつけていた。

何度もスマホを見ているのでなつが、

「何度もスマホ見てるけど、彼からの急用?」

と聞いてきた。

「そうじゃないけど、返信が来ないから…」

「だって仕事中でしょ?返信来ないでしょ?」

「そーだよね。」と答えて、
スマホをテーブルに置いた。

私たちは他愛のない話や、
新しく入って来て不倫している、
渋谷さんのことを話していると、「サンドイッチになります。」と
イケメン店員が料理を運んで来た。

彼は左腕に皮を編んだような変わったブレスレットをしていた、

なつもそのブレスレットに目が行っていた。

「おしゃれなブレスレットですね、それ」

と言ってイケメン店員の腕を指さした。

「これは友達に作ってもらった物で、
気に入っているんです。」

「とても似合ってますね。」なつは、
いつもより高い声で話していた。

「ありがとうございます。ごゆっくり」と言って、
イケメン店員はテーブルを離れた。

「あ~イケメンっていいね。」となつの目がきらきらしている。

14時半には病院に帰らないといけないので、
私達は急いでサンドイッチを食べた。

私達は席を立ち会計をした。
もう一度スマホを見たが「月」からの返信はない。

会計の時に今度お使い下さいと、
サービス券を渡された、
見ると月の絵が描いてあった。

つづく


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