中国の初音ミクに血を抜いてもらった
こんにちは、らるです。
前回はアメリカでの献血をレポートしました。
初めての海外献血ではありましたが、英語が通じる、西側諸国である……という、今思い返すとかなり難易度ふわふわの血抜き旅行だったように思います。
ということで、中国での献血にチャレンジしてみました。
中国献血のレポートは(私の知る限り)存在しないようですので、「中国で血を抜いてみたいナ……」とお考えの方にも参考になるように、レポートとして残しておこうと思います。
⚠️一部血液の写真がありますので、閲覧にはご注意ください⚠️
なんで?
先日、私の最大の推しである初音ミクちゃん(かわいい!)が上海の献血センターとコラボした……という情報が回ってきました。
Ref.1 かわいい
こ、これは行くしかないのでは?と思い、気になって調べてみました。
2023年10月28日〜2023年11月26日まで、上海のいくつかの献血ルームで献血すると、ミクちゃんのグッズが貰えるようです。
正直、かなり悩みました。めちゃくちゃ行きたい。けど……。
中国は距離こそアメリカよりは近いものの、遥かに不安。文化・政治的に日本と異なる部分の多い国ですし、何より「言語の壁」が高くそびえ立ちます。
Ref.2 こんなんで大丈夫なのか
万が一トラブルに巻き込まれたとき、当然日本語は、恐らく英語ですら使い物にならないでしょう。
でも……チャレンジしてみることにしました。
結局「ミクに会えるから」というのが最も大きかったと思います。
上海にいるミクに会えるなら、上海のミクに血を抜いて貰えるなら、行かない手はありません。
腹を括り、ミクのスカートで涙を拭い、上海に攻め入ることを決心しました。
らるちゃんしれっと言ってるけど海外だよ?
さて、上海送りが確定したものの、「そもそも中国ってどうやって行くんだ?」という一丁目一番地から躓くことになります。
アメリカのときは「短期旅行の外国人が血を抜けるのか?」という1点のみがハードルでしたが、どうも中国の場合はそうはいかないようでした。
とりあえず、ざっと分からない部分を洗い出してみると、
中国入国にビザは必要なのか?
日本人は中国で献血する条件を満たしているのか?
中国に入国できるのか?
中国で本当に献血できるのか?
無事帰ってこられるのか?
お、多くないですかねぇ……。
もう既に投げ出したくなりますが、ひとつずつ解決していくことにしました。
今回の記事の構成は、上記の5セクションに分けていこうと思います。
① 中国入国にビザは必要なのか?
日本のパスポート所有者は、観光目的であればアメリカ(要ESTA)や韓国(要K-ETA)、多くのヨーロッパやアジアの国・地域にビザ無しで渡航できます。
一方、その他の国に渡航する場合は短期間の観光であってもビザを取得しなければなりません。
中国は後者であり、コロナ以前まではビザ無し渡航ができましたが、現在はビザ免除措置が停止されています(2023年11月現在)。
よって、ビザを取得しなければなりません。
https://www.cn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000918.html
私はこのことをすっかり忘れており……というか、そもそも忘れてなくても間に合わなかったんだけど。
ビザ取得は絶望的でした。
では、諦めるしかないのか?……というと、そんなことはなく他の方法があります。
それは「トランジットビザ免除」で入国する方法です。
中国を経由地扱いにし、第三の国・地域へ抜ける旅程を組むことで、72/144時間のビザ無し入国が可能になる制度がトランジットビザ免除です。これにより、事前のビザ取得をせずとも中国に入国することが可能になります。
例えば……
決して抜け道ではなく、れっきとした制度になります。
つまり、中国側としては積極的に中国に寄り道してお金を落としてほしいんですね。その証拠に、一時入国の時間は24時間→72時間→144時間と延長されてきているので……。
私は、日本(成田)→中国(浦東)→香港→日本(関空)、という旅程を組みました。目的地を香港に設定し、上海を経由地とします。これにより、上海にノービザで144時間の滞在が許可される(はず)です。
(成田発関空着にしたのは安かったから、というだけです。成田から成田、のように発着が同じ空港でも、第三国・地域を経由してさえいればトランジットビザ免除は適用されます)
これで、入国審査ドッカンバトルに敗北しなければ入国できる……はずのルートが組み上がりました。一安心ですね(ほんとか?)。
② 日本人は中国で献血する条件を満たしているのか?
アメリカのときもそうでしたが、事前に短期旅行の外国人が献血に参加できるかどうかを確認しておく必要があります。
感染症などの問題により、外国人の献血を受け入れていない国もあります。日本も入国して最低4週間の間は献血できず、滞在した国によってその期間は更に延長されます。
いざ行ってみて「やっぱ献血できないわ!w」はかなりシャレになりません。そのため、日本にいるうちにその国の献血基準がどうなっているかをよく確認する必要がありました。
この確認が非常に困難で……。
まず、上海の献血センターにメールをしましたが、返信はありませんでした。多分Gmail届いてない。
仕方が無いので、WeChat(中国のLINEのようなもの)で直接コンタクトを取りましたが、こちらも返信なし……。
公式アカウントだったので期待はしていませんでしたが。
最終的に、私の研究室に所属している中国からの留学生(西安出身)に電話で確認してもらいました。変なことに付き合わせて本当に申し訳ありません……。
曰く、上海では外国人の献血も制限がないとのこと(少なくとも日本人は)。
あまりにゆるゆるすぎる条件で少し心配になりますが、とりあえずこれで一安心です(ほんとか??)。
③ 中国に入国できるのか?
さて、日本での準備を終えたのでいよいよ旅立ちの時です。
行きは中国南方航空を使用しました。あまりこだわりはなかったので手頃なものを選びました。
チェックインの受付のお姉さんに「トランジットビザ免除で中国に入国したい」と伝えます。研修中のお姉さんに当たって少しわたわたしましたが、後からベテランの職員さんが現れてそこからはスムーズ。成田→上海の航空券と上海→香港の航空券を見せて終了です。
中国南方航空は初めて利用しましたが、可もなく不可もなく……という感じでした。機内食はそんなに美味しくないです。
Ref.3 かわいい
無事上海の浦東空港に到着したら、とりあえず人の流れに沿って進みます。
一般の入国審査とトランジットビザ免除窓口は隣同士なので、人に着いていけば窓口まで辿り着くことができます。
審査に必要な書類は以下の4点。印刷しておくと便利です。
① 日本→上海行きの航空券(便名が分かるものなら可)
② 上海→香港行きの航空券
③ 上海で宿泊するホテル情報
④ 一時入国の書類
④の一時入国の書類は下の画像のもの。上海の空港に置いてあるので、到着してから記入します。
ペンが置いてないので持参した方がいいかも。
加えて、念のため以下の書類も用意しておきました。
⑤ 普通のforeigners arrival card
⑥ 香港→日本の航空券
⑤も空港に置いてある細長い紙で、ビザ持ってる人用だったらしく窓口で要らんって返されました。
⑥は聞かれもしなかった。
審査は非常に簡単で、①〜④の書類とパスポートを提出した後、指紋と顔写真を撮られて終了。
5分ほど待たされて、パスポートに一時入国許可のシールを貼ってもらえます。やったね!
Ref.4 入国審査ドッカンバトル勝利。拍子抜けするくらいあっという間だった
この時既に19時頃。既にそこそこの長旅で疲れていたので、ホテルに直行することにしました。
上海浦東空港からの移動手段は地下鉄、タクシー、バス、リニアモーターカーの4択。徒歩は現実的ではありません。また、タクシーはぼったくりと思わしき客引きも多いので注意。空港の案内板に「Taxi」とデカデカと書いてあるので、それに従って空港公式の乗り場から乗るのが吉です。
私はタクシーに乗ってホテルに向かいました。10kmで40元(1000円弱)くらい。めちゃくちゃ良心的な値段です。
ちなみに私はタクシーに財布を忘れるという大失態を犯したのですが、最終的に運ちゃんがホテルまで届けてくれました。中国人マジで優しい。
(全員が全員そうとは限らないので注意しましょうね……本当に)
Ref.5 財布無くした時はこのぬいぐるみと同じ顔になった
④ 中国で本当に献血できるのか?
次の日。いよいよ献血当日です。
上海には献血ルーム(上海市血液中心)と献血バスがいくつかあるようなのですが、今回はせっかくなので献血ルームにしてみました。
地下鉄10号線の伊犁路駅が最寄り、そこから歩いて5分ほどのところにあります。
献血ルームに入ると、スタッフの方が迎えに来てくれました。先述のうちの研究室の留学生が電話してくれたおかげで、「日本からわざわざ血抜きに来る変態」の情報が回っていたようです。この方、英語も喋れるので非常にお世話になりました。
献血ルームは2階にあるのですが、本当にそこら中にミク!ミク!!ミク!!!
どこを見渡してもミクがいます。ここが楽園ですか?日本の献血ルームも本当に見習ってください。
挙げ句の果てには顔出しパネルまで設置されている。本当にミクだらけで幸せな空間でした。
献血の流れは、
「受付→問診/事前検査→腕洗い→本番」
という感じ。腕洗い以外は日本と流れは一緒です。ただし、日本のような無料自販機などはないので事前に水分補給をしておく必要があります。
問診/事前検査もほぼほぼ日本と一緒です。
プロフィールを記入したあと、問診に答えます。タブレットではなく紙媒体。
懸念していた外国人要素ですが、アメリカと同様に「マラリア地域にいたか?」のみを確認されました。流行地からの渡航じゃなければ問題ないですね。
問診が終わると事前検査になります。今回は中国で初めての献血だったからか、特に希望を聞かれることなく全血献血になりました。
事前検査は指先バチコン方式。正直かなり懸念していた衛生面も問題なさそうで、新しいランセットを使用していました。
事前検査パスしたら、腕を洗わされます。日本にはない手順。
血管を確認され、抜く方の腕を石鹸で洗います。むしろ日本より衛生面はちゃんとしてる??
ちなみに、血管の確認はドクターが行い、本番で針を刺したのもドクターでした。日本は看護師、アメリカは血抜き専門職、中国は医師が血を抜くんですね、各国の違い……。
血抜き本番も日本とあまり変わらず、ヨード消毒を行って針刺しです。こちらもちゃんと新品の針を使っていました。
ただ日本のように「チクッとしますね〜」みたいな合図はなく、唐突にブスッと刺されます。勢いもすごいので結構痛い……。
血抜き中は例によってニギニギを渡されながら、記念撮影をしてくれます。これがまた可愛いこと可愛いこと……。
⚠️一部血液が写っている写真がありますので、閲覧にはご注意ください⚠️
献血が終わると15分の休憩を取らされ、その後帰宅になります。
景品は本当にミクカーニバル。ミクのイラストの紙バッグに、ミクのスタンプが押された献血証明書、ポストカード、キーホルダー、お菓子とジュース。
ポストカードは数種類あるようですが、「遠くから来てくれたから全部あげるね」って全種類頂きました。おまけにキーホルダーもおまけで2つもくれました。
や、優しい……!
Ref.6 景品。左のぬいぐるみは持参したものなのでもらえません
ちなみに、献血中に、
「昨日も日本から献血しに来た人がいたんだよ〜」
と衝撃の事実を伝えられました。
お写真を見せてもらいましたが、どでかふわを2〜3体抱えてました。
(どでかふわ:両手で抱えるサイズの、ミクのぬいぐるみ)
ま、負けた……本当にミク廃はどこにでもいますね。
ちなみにお心当たりある方は是非コメントください。飲みに行きましょう。
⑤ 無事帰ってこられるのか?
おうちに帰るまでが血抜きです。
特に今回は飛行機乗り継ぎを含んだ特殊な旅程を組んでいるため、日本に着くまで気を抜くことはできません。
上海を後にし、まずは香港へ向かいます。
上海出国時の審査はあっという間で、一時入国の書類の下半分とパスポートを見せるとすぐに出してくれます。
Ref.7 出国
香港までの飛行機は春秋航空にしました。
こちらも特にこだわりは無かったので、手頃+時間的にマッチしたものを選びました。
「144Hトランジットビザ免除は同じ航空会社で連続予約ではないといけない」というような情報もありましたが、全く問題ありません。
さて、お次は香港です。
飛行機を降りたら2回目の入国審査ドッカンバトルタイムです。ただ、香港は中国と異なり日本人に対するビザ免除がありますので、変な手続きは必要ありません。
英語も(比較的)通じる地域なのでらくらくで入国しました。
それでは、香港を堪能するぞ!!!……といきたいところなのですが、17:00着→01:35発の乗り継ぎなので、市内をのんびり観光……とまではいきません。
(市街地までは30分ほどなので不可能ではなかったのですが、疲れていたこと、simが香港非対応だったことからWiFiのある空港内で過ごすことにしました。香港simなのに香港使えないのかよ。)
空港には香港留学中のフォロワーが来てくれ、乗り継ぎまでの時間を一緒に過ごしてくれました。
留学のことや語学のこと、食文化や香港の観光地など色々教えてくれて、非常に充実した時間を過ごすことができました。この場を借りて感謝申し上げます!
次はちゃんと時間とって観光したいね……香港。
Ref.8 8年以上仲良くしてくれてるフォロワー
香港から日本までの飛行機はpeachにしました。これも単純に安かったから……というだけです。
もう乗り慣れているpeach。特に何か起こるわけでもなく、無事日本に運んでくれました。
Ref.9 くぅ〜疲れましたw
Q&A
Q. 上海で英語通じる?
A. 基本的に通じない。
上海は比較的英語が堪能な地域らしいのですが、基本的には英語は通じません。
献血センター、ホテル等大きい施設でやっと1人くらいはコミュニケーション取れる人がいるかなー、という程度。
日本語は論外。
ただ、観光客の多い地域なので、向こうも翻訳アプリ使って頑張って話してくれようとします。
織り込み済みのようで、中国語が分からなくてもそこまで困りません。
片言でも中国語を喋るとめちゃくちゃ喜ばれます。「谢谢」って言うだけでめっちゃ笑顔になってくれる。
Q. 上海で現金/カード使える?
A. どっちも使えない。
これはかなりビックリしたのですが、現金はおろかクレジットカードすら使えません。
基本的に全ての支払いはQRコードで行われます。
これから中国に行く方は、Alipayの設定を渡航前に行なっておくことを強くお勧めします。
Alipayが使えないと冗談抜きで餓死します。本当に何もできない。
でもチップ文化が無いのは本当に良い。
Q. 上海でGoogleとかTwitter(X)とか使えるの?
A. 香港simを買えば使えます。
ご存知のように、中国では西側諸国のSNS等に規制がかかっております。
Twitter(X)は娯楽ツールだからまぁいいとして、LINEやGoogleを使えないと日本と連絡できなくなるので結構キツい。
そこで、香港simを使います。
香港は規制対象外の地域ですので、そこのsimカードを使えば現地でもSNSを使えるようになります。
Amazonで2000円しないくらいで買えます。オススメ。
Q. 上海の治安はどうなの?
A. めっちゃ良い。
街中は夜中でも栄えているので、一人歩きしても大丈夫なレベルです。
ただ、少し郊外に出るとかなり人通りが無くなるので、女の子の一人歩きはオススメしません。あくまで街中だけ。
ちなみに、交通の治安はクソほど悪いです。
信号は飾りで「車が来てなかったら赤は進め」「自動車/原付優先、歩行者が避けろ」という感じ。
日本と異なり右側通行であることにも注意が必要です。
Q. 日中関係とか、その辺どうなの?
A. 信じられないくらい優しい人ばっかりです。
上海だからかもしれないけど……。
日本の文化はかなり根付いているし、日本人だからって邪険にされることはまずありません。アメリカの方がよっぽど差別的。
そもそも財布返ってくるのもすごい。正直覚悟しましたが、本当に何も盗られずに返ってきました。
本当に優しい人ばっかりです。
Ref.10 日本の文化いっぱい。日本から来たっていうと喜ばれる
完走した感想ですが
前回のアメリカと異なり、コミュニケーションすらなかなか取りにくい、という中国での献血でした。
ただ、現地の人がとても優しく、ミクの助けもあり無事血を抜くことができました。結構良い経験になった、ひと回り成長できた気がします。
「中国って結構近いんだなー」というのが今回の気付きです。
5万円程度で行って帰ってくることができるので遥かにアメリカより行きやすい。アメリカ高すぎるんだよ。
やっぱり海外献血は楽しいですね。異文化に触れることも楽しいし、帰国後の日本もちょっと新鮮な目で見ることができます。
次は……オーストラリアあたりで血を抜きたいな!
みなさんも中国で献血しましょう!
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