【季語のはなし】「花疲れ」は花見は疲れやすいの意味

一週くらいすっ飛ばした日本文化の話を再開。何にしようかな〜と思ってたら、本棚の俳句歳時記が目に入ったので、今回のテーマは春の季語にする。

俳句歳時記を買って以来、春の季語しか読んでない気がする。教科書の最初の方だけ詳しくなるやつだ。最初の方だけちゃんと聞くからみんな序盤はちゃんと覚えてるよね。歴史でいう更新世、猿人とかのあたり。


それはそうとして、梅を見に行った。これは昨日身につけた知識だが、梅を表す季語に「花の兄」というのがあるらしい。なるほど、これは花=桜であり、桜よりも先に咲くから「兄」なのだなあと納得した。そういう意味なのかは調べてないが、きっとそういうことだろう。今度ちゃんと調べよう。(→ネットサーフィンしたら合っていた。そして「花の弟」は菊らしい。梅に比べてだいぶ歳が離れている気がする。)

花=桜を意味するというのは、多分過去のnoteに書いたはず。平安時代からそうらしい。「花の雲」という季語は、桜が並んで咲いているのが雲のように見えることから来ていて、それがとても好きなんだと二、三回noteに書いていると思う。


花=桜で、そうか!と腑に落ちたのは「花見」である。確かに、花見というのは桜を見ることだ。「花疲れ」は、花見は疲れやすいの意味で使われるそう。また「花衣」は花見に来ていく服のこと。しかし「春の服」は花見に関係なく春服を指す。春コート、春セーター、春手套(しゅとう/手袋)も季語だそうで。

桜関係で面白いなと思ったのは「桜まじ」。「まじ」は南風、南寄りの風のことで、桜の咲く頃に吹く南よりの暖かい風を桜まじと呼ぶ。桜自体ではなく、その時期を指しているのが面白い。一瞬助動詞の「まじ」かと思ったがそんなことはなかった。冷静に考えて接続が違う。


暖かさをそのまま「暖か」、麗らかさをそのまま「麗らか」とする、そのまますぎる季語もあった。暖か=あたたけし、ぬくし、春暖。麗らか=うらら、うららけし、麗日。秋うらら/冬うららもあるが、春うららとは言わず単に「うらら」だけの特別扱いだ。

逆に、まだ寒い方の意味を持つ季語も。「春火鉢」はまだ寒いので火鉢が手放せない、「春炬燵」はしまうにしまえない

確かに春は暖かくなるのと同時に寒い日も続くよなあと、相反する語彙が共存する歳時記に共感してしまう。


綺麗な単語で使いたいなあと思ったのは「春光」である。春景色のこと。春の光景。柔らかい太陽を感じる語。

踏青」「青き踏む」も字面が好みだ。これは旧暦三月三日に野辺に出て草の上を歩き宴を催した中国の風習にならったもの。今ではその日に限らず春の野を散策することに使われるようだ。ピクニックした時に使っていきたい。

踏む関連では「春の土(土恋し/土現る/土匂ふ)」がある。見た目は踏青の方が好きだけど、意味はこちらの方が好きだ。土匂ふってすごくないか。雪が無くなって、鼻が痛くなるほどの寒さも無くなって、土のにおいが分かるようになるっていう体験。臨場感にグッと来てしまった。

草を踏めるのは新芽が出るからであり、土を踏めるのは雪解けがあるからだ。暖かくなるだけで、こんなに変化がある。

踏むシリーズ番外編で「絵踏」があった。思い描いた絵踏で合ってるから安心してほしい。キリスト教徒をあぶり出すアレだ。江戸時代の絵踏は春先に行われることが多かったことから、春の季語になっている。イベントシリーズでもある。


イベントシリーズはたくさんあるが、二つだけ挙げておこう。「大試験学年末、卒業試験のこと。入学試験ではない。小試験は学期末試験のこと。「四月馬鹿エイプリルフールのこと。万愚節とも。

エイプリルフール、つまり四月の初日に季語があるのは理解出来る。実はその一日前にもあって、「弥生尽」という。文字そのまま三月の晦日(最終日)。これは旧暦の方で使われ、新暦では「三月尽」と表すそう。旧暦では弥生(三月)までが春のため、春が終わることを詠み込んだのだが、今の体感だと四月こそ春だという感じがある。そこで「四月尽」も存在するというのだから対応力が凄い。


他に面白かったのは繁殖関係で「猫の恋」「鳥の恋」「恋雀」と発情期や繁殖期を迎える動物にやたらメルヘンを押し付ける。からの「蛙合戦」は面白すぎる。急に勇ましい。

「春の」に付けたら絶対に春の季語になるからずるいのだけど、「春の」に続く言葉は多く、日、月、雲、星、風、雨、雪、霞、曇とある。ずいぶん欲張りだなあと思った。まだ他の季節を読んでないから分からないけど、もしかすると他の季節も欲張りかも。

あと花の名前がめちゃくちゃ多くて、流し読みだから耐えたがちゃんと読んだらきっと大変だし、調べ始めたらもっと大変だ。


こうして考えると、人生で見逃してることが多すぎるなあとこわくなってきた。目に見えることでしか春を感じてなかったかも。今日は梅を見ていたら香りがふわっとして、これが梅の香りなのか……!となった。ちょっと嬉しい。土のかおり、風の強さ、日の暖かさも感じていきたい。

次回更新 3/13:滑稽についての本を読むのでその話が出来るか出来ないか。
※だいたいリサーチ不足ですので、変なこと言ってたら教えてください。気になったらちゃんと調べることをお勧めします。

参考文献:合本俳句歳時記 第五版 角川書店編

めでたし、めでたし。と書いておけば何でもめでたく完結します。