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浮世絵を遊べるアクリルスタンドにしてみた
最近、アクリルスタンド(以下、アクスタ)なるものが流行っている。透明の板にキャラクターのイラストやアイドルの写真が印刷されており、ご飯や景色とともに写真を撮ったり、部屋に飾ったりして使うアイテムだ。令和を代表するグッズと言っても過言ではない。
先日会った友人が、ランチの際に推しのアクスタを取り出し、ご飯と一緒に写真を撮っていた。
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アクスタの配置を決め、画角を調整し、ライトの反射を気にする。この「手間」を楽しそうにこなしていく。それを見てシンプルに「あ、私も欲しい。」と思った。日常にいらない手間をかけたい。だって楽しそうだから。
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アクスタ入手への道
では、何のアクスタを手に入れるべきか。どうせならユニークなものを〜〜と考えていたら、浮世絵に出てくるおじさんのアクスタが販売されているのを見つけた。なるほど、この手があったか!浮世絵であれば使用可能なものも多いし、いっそ自作するという選択肢も出てきた。夢が広がる。
脳内の浮世絵フォルダを漁り、良さそうなものを探す。
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ヒット。影絵のおじさんである。
浮世絵を探せるサイト「ARC浮世絵ポータルデータベース」で影絵のおじさんを調べると何種類か見つかった。中でも、「かんちろり」に扮したおじさんが良かったので彼をアクスタにする。
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選んだのは、歌川広重「即興かげぼし尽くし」より「かんちろり」。この浮世絵の下にいる彼だ。かんちろりとは、お酒を燗するときに使う酒器のことで、個人的には数回使ったことがある程度の馴染みの薄い道具だが、やたら縦長のポットにも見えて可愛いのでチョイス。
アクスタを自作する方法に「プラ板で作る」があると耳にして、印刷できるプラ板を買ってきた。
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プラ板は焼くと縮むので、可能な限り大きく印刷。
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ハサミとカッターで切り取り、オーブントースターで焼く。すると、プラ板が出来る。
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理想通りのプラ板である。さらに手を加えればよりアクスタらしい厚みを持たせることもできるらしいのだが、もう求めていた全ての機能が手に入ってしまい早く使いたい。じゃあ、もう、これをアクスタとしようよ。
すみません、これ以降に出てくる「アクスタ」は「プラ板」のことです。よろしくお願いします。
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遊んでみる
ということで、アクスタである。
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写真に写り込んでもらうと、ポージングの妙で「こちらをご覧ください」と示しているように見える。なんとも連れ歩きたくなるアクスタが手に入ったものだ。
元の浮世絵「即興かげぼし尽くし」であるが、この絵は影絵遊びになっていて「このポーズをすると影が別のものに見えますよ」というものなのだ。そういうことだから、浮世絵にならって影絵遊びもやってみる。
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お見事!あまりにうまくいったので、思わず畳の上で小躍りしてしまった。
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比べると、この通りである。冷静に考えたら浮世絵をそのまま印刷して使っているのだし、絶対にうまくいくだろうが、いざ想像通りにことが運ぶとめちゃくちゃ嬉しい。
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令和版浮世絵遊び
と、遊んでいるうちに、他にも「遊べる浮世絵アクスタ」を作れるのでは?とひらめく。浮世絵には「玩具絵」というジャンルがあり、図鑑のように見るだけで楽しめるものから、着せ替え人形や模型など切り貼りして工作するものまである。これをアクスタにしたら、新しいアクスタの可能性を発掘出来るかもしれない。令和版浮世絵の遊び方だ。
まずはアクスタの基本として、自立するものを作る。アクスタは平らな板状のため
、立たせるためには土台が必要なのだが、あえてアクスタ自体に厚みを持たせることで土台が無くても飾れるようにする。
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『きんぎょ ひごい ふな かめのこ 板形紙玩具絵』より「ふな」をアクスタにしよう。「ふな」は絵の左下の黒いやつである。
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焼いたプラ板をアロンアルファで組み立てる。本来の作り方は、胴体にカーブを付け立体にするようだが、今回は平らの状態で焼き上げ。本当は忠実にカーブを付けたかったのだけど、技術不足で叶わず。しかし、紙と違って板に厚みがあるので平らのままでもなんとなく立体感が出ることに気が付き、そのまま進めることに。魚が比較的平たい生き物でよかった。
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「ふな」のアクスタである。ヒレだけで支えているのが健気だ。浮世絵をそのまま使っているおかげで、和紙っぽい風合いがあってよい。
と、ここで紙や布などを留めておくクリップが目に入った。クリップで板状のアクスタをつまむと立たせることができる。できてしまう。土台なしで立つアクスタを作った後に気が付くなんて。
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気を取り直して、次は着せ替え人形ができるアクスタに挑戦。歌舞伎役者のかつらを付け替えて遊ぶ『河原崎三升』を使おう。
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このままでも楽しいが、机に置いたままでしか遊べないのが難点だ。着せ替え人形にしかならない。アクスタとして活躍させるには、やはりスタンド状態で遊べるようにしたい。てことで、少し細工をする。
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人物画パーツの裏側にへこみをつけ、かつらパーツにフックをつける。人物画のへこみの部分にフックがハマるようカツラを設置すると、スタンド状態でも遊ぶことができる仕組みだ。
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フックを引っ掛ける用のへこみを作ったおかげで、ピタリとはまって気持ちがいい。かつらを固定しないため、風が吹くとかつらパーツが揺れて風流である。
最後は、動かして遊べるアクスタに挑戦。『新工夫四ツ谷怪談丁ちんぬけ』を作ってみたい。
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そのまま作っても難しそうな題材だ。上が背景パーツ、下が切り貼りするパーツである。動かせる場所は3か所。
①提灯(右上):下の提灯パーツを背中合わせに貼り合わせ、真ん中を背景パーツの提灯に合わせて貼る。パタパタとめくれる仕組み。普通の提灯が破けるのを表現。
②暗闇(中央):円形パーツを裏側に設置して回す。破けた提灯から幽霊が出てくる。
③男性(左下):提灯と同様の仕組み。男性の体勢が変わる。
仕掛け絵本のように遊べる浮世絵なのだが、①③のカラクリが難点だ。紙を折り曲げて背景パーツと貼り合わせているからだ。
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紙と違って硬さと厚みのあるプラ板は、一度固定した形を変化させることが出来ない(常温の場合)。紙と同じように作ろうとしたって不可能なのだ。動かす部分だけ違うもので作る必要がある。
ひとまずこの問題をどう解決するかは置いといて、後からなんとかなるよう背景パーツの①提灯と③男性の真ん中(切り貼りパーツを貼るところ)をくり抜いて焼き上げる。
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なんとかかんとかやって、ひとまず完成。
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①③の問題は、リボンを使うことでクリアした。
①提灯:効果音を書いたリボンの先にパーツ固定。裏側はリボンを折り畳んで抜けないようにする。
②暗闇:中心に穴を開けてから焼き上げ。玉結びをした糸を通して裏側で玉留め。
③男性:リボンを間に挟んで裏側に通し、ちょうどいいところで固定。
元の浮世絵では①と③のギミックが同じだったので、①に少し変更を加えた。リボンを使い、引っ張りの動作を追加したことで遊びの幅が広がった。
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頭を悩ませた割にはスマートな出来上がりである。どうやって組み立てようか考えるのが楽しかった。パズルを解く楽しさに似ている。
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手間を楽しむ
今回の目的はアクスタの開発ではなく、アクスタを手に入れて「手間」を楽しむことなのだった。作るのが楽しくて忘れかけていたが、無事に思い出した。ことなきことなき。
手間をかけて作り上げたティータイムがこちら。
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ティータイムに遊べる……!!いつもの5倍も準備に時間がかかった。並べるのが楽しみすぎて、仕舞い込んでいた江戸期のお膳と器をわざわざ用意したのである。不必要な手間と言えるが、この時間が日常を豊かにする。その豊かさが私をつくる。
いつもならただのお菓子タイムだけど、アクスタと写真を撮ろうと思ったら気合が入った。日常の出来事が、ちょっと特別でワクワクする出来事に変わった。飾れて持ち運べて遊べるアクスタのある生活はたのしい。
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おまけ
【あわせてどうぞ】玩具絵を紹介している記事↓
↑今回登場したもののほか、人形遊び用の小道具や舟の模型など11選。
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