4-1. 原子量
こんにちは、おのれーです。
今回から、高校化学の分岐点、"mol"にまつわる内容を学んでいきます。ここですんなりいけるかどうかで、化学に対するその後のイメージがだいぶ変わるようです。
molが分かると、実験をしたりするときに「目的の物質を◯ gつくるために、材料の物質は● gは必要だな」という見当をつけることができたりして大変便利です。
できるだけかみ砕いて、わかりやすく書いていこうと思うので、ゆっくり、じっくり向き合っていきましょう。
■原子の重さのこと、覚えてますか?
1-1. 原子 のところでも確認しましたが、原子の重さは非常に軽いです。原子1個の質量も種類によって異なりますが、最も軽い水素原子で、0.00000000000000000000000167g です。
これは、原子をだいたい600000000000000000000000個(6000垓(がい)個)集めると1gになるというくらいとんでもなく小さな質量です。
下に、水素原子のほか、炭素原子と酸素原子の質量も載せました。実際に、これらの原子が1個、自分の上に乗っかったところで、全然分からないくらいの大きさですが、確実に質量を持っている粒子なのです。
でも、こんなに小さい値、「〇〇粒集めると何gですか?」などという問題がでてきてしまったら、計算が面倒くさそうですよね。
そこでまず使うのが、「指数」という考え方です。
■余談ですが、指数の考え方を・・・
上でも、水素原子の質量を1.6735×10^-24(10のマイナス24乗)と指数を使って表しています。この指数、一応中学の数学で習うのですが、上にあるような「〇〇×10^●●」という表し方は、理科ではよく使うものの、数学ではあまり使うことも無くて良くわからないという人も多いので、ざっくりおさらいしてみたいと思います。
下に示すように、10のn乗の"n"がプラスの時は、先頭の数字の後に続く数字の桁数で考えます。逆に"n"がマイナスの時は、小数点以下で何桁目に0以外の数字が出てくるかで考えます。
まずは、この指数を使った表し方の意味を理解して、使えるようになることが大切です。下の問題をやってみましょう。
どうですか? 何となくはできそうでしょうか?
ではさらに、指数を使って表した数どうしの計算方法も確認しておきましょう。化学でよく使う指数の計算には、下の5つの方法があります。
要は、かける時は指数の数字どうしを足す、割る時は上から下に指数の数字を引く、と覚えておくとよいでしょう。では、この関係を使った計算も練習してみましょう。
これからちょこちょこ出てくると思うので、わからなくなったら、その都度ここに戻って確認してみて下さい。
■原子の重さを、相対的に表してみる!
では、本題に戻ります。
原子の質量はとても小さいので、そのままだととても小さい数字を扱う必要があり、非常に面倒です。
したがって、ある特定の原子の質量を基準として、他の原子の質量は、「基準に対してどのくらいの重さか」という相対的なものとして表します。
たとえば、冒頭に出てきた水素原子、炭素原子、酸素原子で考えてみましょう。
ここでは、水素原子の質量を"1"とおいたとき、炭素原子と酸素原子の質量がどのくらいの大きさになるかを考えてみます。
どうでしょう? 複雑そうだった数字が、「1」「12」「16」という、割と扱いやすそうな数字になったと思います。このように、原子など物質を構成する小さな粒子の質量を表すときには、ある原子の質量を基準とした「相対質量」で表します。
では、実際にはどの原子が基準になっているのでしょうか?
はじめは基準の原子として、いちばん軽い水素を1とする方法や、地球上に多く存在する元素である酸素を16とする方法など、各方面で基準の原子はバラバラでした。
しかしそれでは混乱が生じてしまうため、1961年、IUPAC(国際純正応用化学連合)は、質量数が12の炭素原子1個の質量を12とし、これを基準として各原子の相対質量を決めると定めました。
炭素原子を基準とした理由としては、化学工業の発展により、プラスチックなどの有機物の種類が圧倒的に多くなり、炭素を基準とするのが一番誤差が少ないと考えられたためだと言われています。
相対質量のイメージとしては、上の図のように上皿天びんを使って、片方のお皿に基準となる原子を乗せ、もう一方のお皿に量りたい原子を乗せて考えたとき、何個ずつでつり合うかを調べたものだと思ってみて下さい。
体重計や実験で使う電子天びんのように、量りたいものを乗せたら、「◯◯ g」という絶対普遍な値を求められるというのとは異なります。
ということで、相対質量は、比で表された大きさですので、kg や g などの単位はつけない約束になっていますので、気をつけましょう。
■同じ元素でも、重さが違う原子っていなかったっけ?
しかし厄介なことに、同じ元素でも、重さが違っている原子というものが世の中には存在します。1-3で学んだ「同位体」です。
たとえば、炭素原子には主に、質量数が12と13の同位体が存在します。天然には、質量数12のものが98.9 %、13のものが1.1 %存在することが知られています。
「質量数12の炭素原子の重さは?」と聞かれたら、それが基準なので「12」と答えればよいわけですが、「炭素原子の重さは?」と聞かれたら、質量数13の炭素原子の存在も無視できません。
そこで、原子の重さを表すときには、相対質量とその存在比から求めた平均値で表します。そして、この値のことを「原子量」と呼んでいます。
同じように、塩素原子についても考えてみましょう。
塩素原子には、質量数が35と37の同位体があります。質量数35の同位体の相対質量は34.969、存在比は75.77%です。一方の質量数37の同位体の相対質量は36.966、存在比は24.23%です。では、塩素原子の原子量はいくつになるでしょうか?
このようにして原子量を求めるわけですが、実際には教科書や問題文に載っている原子量の概数値(だいたいの値)を用いて計算することが多いので、値を暗記する必要はありません(使っているうちに覚えてしまったりもしますが…)。
ここでも注意して欲しいのは、原子量も相対的な値なので、kg や g などの単位はつけないということです。くれぐれも注意してください。
今回は、ここまでです。「相対質量」という考え方がちょっと難しいかもしれませんが、比の考え方を使っていくことで、少しずつ慣れていけると良いなと思います。頑張りましょう。
最後にワンポイントチェック
1.原子量の基準となっている原子はどのような原子?
2.原子量はどうやって求めればいい?
3.原子量の単位は?
次回は、原子だけでなく、分子やイオンなどの重さをどのように表すかを見ていきます。お楽しみに!
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