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【キルギス】炭酸水とウォッカ
わたし、蘭ハチコが世界放浪していたときの食にまつわるエッセイです。
今回は中央アジアに位置するキルギス編。
ウルムチからキルギスへ
中国のウルムチからキルギスの首都ビュシュケクへと飛行機で飛んだ。
本当はウルムチからカシュガルに向かい、そこからキルギスへ入国するのがバックパッカーっぽいルートである。
しかし失恋のあれこれを抱えていた私は真冬だから国境が閉鎖されているかも、という本当か嘘かわからない情報をこれとばかりに信じて、決して安くはないビュシュケクへの航空券をとったのだ。
キルギスの首都ビシュケクへ到着
ビシュケクの空港につくと、辺りは一面の雪だった。
初めて見るキリル文字。
それまでいた中国は、漢字ばかりだった。けど英語が通じないのは一緒。
ネットで見た情報によると、何番かのバスが市内の中心部へ行くらしい。
空港に1台だけあるATMで少しの通貨を引き出す。もちろん小銭は出てこない。
一旦、空港(といっても小さな掘っ立て小屋みたいなもの)の外へ出て空気を吸い込む。
ひんやりとした空気が鼻の中にまとわりつく。
あたりにいたおじさんに「バス、どこ?」と身振り手振りで聞く。
ロシア語なのかキルギス語なのかわからないが、おじさんは何か言い、空港の逆サイドを指さす。
今となっては忘れてしまったが、「ありがとう」と現地の言葉で伝えた。
そのおじさんには笑みはなかったが、不思議と受け入れてくれたような気がした。
空港の外からバスがやってくるのが見えた。
ネットで見た番号のバスかはわからないが、「セントラル?」とバスの運賃係の少年に尋ね、ATMから引き出したばかりのお札の少額紙幣と思える一枚をみせた。
釣札がないのか、そもそもセントラルが通じていないのか、セントラルに行けないのかよくわからなかったが、少年は首を振った。
そのやり取りを見ていたタクシー運転手のおじさんが、ここぞとばかりに「セントラル?オーケー!」と声をかけてきた。もこもこしたファーのついた革のジャケットを着こんでいたのが印象的に残っている。
少々高くてもいければいいやと、ろくに値段交渉もせず、あらかじめめぼしを付けておいた宿の住所を見せタクシーへと乗り込んだ。
ビュシュケクの宿サクラゲストハウスへ
空港から市内へと向かう道は一本で、辺りは雪の平野が広がっていた。
さっきまでいた中国から異世界へ来たような感覚になった。
タクシーのおじさんは何か話しかけてきたが、よく意味がわからず、あいまいにあいづちをうった。
宿の前につくと、タクシーのおじさんは慣れたように呼び鈴を押し、何かを伝えていた。どこかの犬がけたたましい勢いで吠えているのが聞こえる。
宿で働いていると思われる頬の赤い女の子が出てきた。荷物をトランクから降ろしてくれたおじさんに料金を払い、別れた。
頬の赤い女の子は、2階へと案内してくれ、いくつかあるベッドのうち一つを指さし「ヒア」と言った。お礼を言い、荷物を広げる。
ここでしばらく過ごし、これから行く予定であるカザフスタンやウズベキスタンのビザをとるのだ。時間はたっぷりある。
早速、水を買いに宿の外に出た。雪は深く降り積もり、トレッキングシューズがすぐに湿った。大通りに出て、商店と思わしき店に入った。
水とウォッカ(と思わしきもの)、軽食を買い宿へと戻る。
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水を飲むと、それが炭酸だということに気付く。不思議と乾燥したこの気候にはこの炭酸水が合うな、と思った。買ってきたそれらを窓に並べた。
雪が降り積もるこの街並みとそれらが不思議にマッチして、異国に来たという思いをさらに掻き立てた。
この時はまだ、自分が3か月もこの国にいるとは思ってもなかった。
一口メモ
キルギスやカザフスタンといった旧ソ連圏では炭酸水(ガス入りの水)が売られている。
ウォッカはアルコール濃度が高いため、消毒代わりにもなるが、カウチサーフィンでカザフスタンのおうちに泊まらせてもらった際、少し咳をしたら、風邪ぎみならウォッカを飲みなさい、と大真面目な顔で言われ驚いた。
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