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ネットの怪談『曽利29号』とその実物 ~人は変容を遂げるのか?~
残暑が続きます。庭では夏の花が今頃咲いています(笑)。日中エアコンが欠かせない日々がもう暫く続きそうですね。^ ^
さて、前々回の記事で【ネットで広まった怪談】をご紹介させて頂いたところ、多くの方にお読み頂きありがとうございました。
かつて口伝で広まった怪談話。現代はインターネットを介してですから拡散が早く、特定の地域に留まらない特徴がありますね。
何よりも匿名性が保たれることにより、真実か虚偽かは投稿者のみぞ知るところです。
今回は第二弾で、ちょっとマイナーなネット怪談をピックアップさせて頂きます。
タイトルは『曽利29号』。
ある日、PC作業のBGMに聴き流していて、タイトルが気になった朗読怪談。内容は短編で至ってシンプル。
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怪談『曽利29号』あらすじ(ざっくり)
主人公は広島県出身の人物。
進学で大阪の田舎で寮生活を送るうち、山の景色が見たくなり、ある日レンタカーを走らせ信州・八ヶ岳に向かう。
雄大な山々の景色を堪能し、土産に『曽利29号』、別名を『縄文のメデューサ』なる縄文時代の香炉土器のレプリカを持ち帰る。
その夜、寮の自室で睡眠中の主人公。ふと目を覚ますとそこには…。
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『メデューサの頭部』
そもそも『曽利29号』とは?
鉄人28号の次のロボット、ではありません(昭和の方だけ笑って下さい)。
まず「曽利」ですが、これは長野県諏訪郡富士見町にある曽利遺跡のことです。
曽利遺跡 … 縄文時代中期の土器が大量に出土。それらは特有の優れた芸術性を持つことでも有名に。ここから発掘された土器は「曽利式(土器)」と呼ばれています。
続いて「29号」ですが、これは発掘調査を行う際、場所を区画ごとにナンバリングしたうちの29号区画という意味ですね(番地のようなもの)。
住居跡(あるいは埋葬跡)に併せて土器が発掘されることが多く、「◯号住居跡(址)」と呼ばれることも。
因みに曽利遺跡の29号住居跡からは、時代を前後して合計11件の住居跡が確認されたそうです。
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つまり「曽利29号」とは、(広義には)「曽利遺跡の29号区画」であり、そこから出土した住居跡や土器の全てを指すことになります。
ですがこの怪談のタイトル『曽利29号』とは…
作中にもある通り、曽利29号区画出土のうち、最もインパクトのある、そして令和の現代でも私達の興味を惹いて止まない、
『人面香炉形土器』(別称を『縄文のメデューサ』)のことを指しています。
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重要文化財『縄文のメデューサ』
復元された『縄文のメデューサ』がこちら。
(昨今の縄文ブームでご存知の方も多いかも)
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一目見て強烈なインパクト!表と裏とで全く別のデザインがなされている香炉です。
特に写真右側の人面デザインの奇抜さときたら!ただならぬ雰囲気を感じます。
『縄文のメデューサ』と呼ばれる所以は、もちろんこの面の毛髪部分が「複数の蛇」を模したと考えられることから名付けられたようです(上手いこと名付けますね)。
これほど表裏のデザインが異なる造作は、個人的な意見ですが、洋の東西を問わず他に類を見ません。同じ人物が作ったのか?と疑問に思うほどです。
こうした緻密なデザイン、しかも4000年の経年劣化に耐えうる硬質な土器は、現代の技術でも作れないのだとか。
制作した当時の縄文人の技術や想像力には脱帽です。
ところでこの人面デザイン、ジブリアニメ『風の谷のナウシカ』に出て来るトルメキア軍の兵士のヘルメットを連想するのは私だけでしょうか?
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4000年前の日本でこうした作品を生み出す人々の想像力かつ創造力の源泉ですが、単に感性だけではない気がします。
古代人には「現代人には見えないモノ」を見る能力が備わっていたのではないかと思われます。
故人の霊や自然霊、妖精、妖怪、ときには宇宙人ともコミュニケーションを計っていたのかもしれません。
少なくとも、現代人の知識に当てはめた考察だけでは、ちっとも及ばないように感じます。
灯を点した香炉『メデューサ』
怪談『曽利29号』に出て来る怪奇現象、(あまり書くとネタバレですが)そのうちの1つは、
土産物に過ぎない『縄文のメデューサ』のレプリカに勝手に灯が点り怪異を誘発した、というビックリ現象です。
実物の『縄文のメデューサ』に灯を点した写真がこちら。
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こんな現象がいきなり真夜中に自室で起こったら…コワ過ぎる!!
写真右側の人面は黒目の位置も計算されて作られたのでしょうか?もしそうならGOODデザイン賞モノです(笑)
この香炉、もしかしたら表と裏で「お守り」と「魔除け」の機能を兼ねていたのか?(実際のところは分かりませんが)
いずれにせよ「真夜中に勝手に点灯する現象」が土産物のレプリカで起こるのか?
レプリカにも不思議な力が宿る?そのようなことがあるのでしょうか?
ネット怪談『曽利29号』嘘か?真か?
この真偽について考えられるのは以下のパターン。
1.筆者の実体験であり、全て真実
2.筆者にとっては実体験であるが、幻覚
(もしくは夢)
3.筆者によるフィクション
(その場合には何らかの意図がある?)
実はタイトルを耳にしたときから気になっていたことがあります。
筆者はなぜタイトルを『縄文のメデューサ』とせず、わざわざ『曽利29号』などと難解な言い回しを選んだのか?
もし「3」のフィクションだった場合、筆者の意図は何でしょう?
縄文時代ファンの耳に届けたかったのか?
曽利遺跡をアピールしたかったのか?
はたまた筆者は曽利遺跡の研究員か?学芸員か?(←下衆の勘繰り)
あるいは関連書籍の類を読むなどして想像を膨らませたのか?
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理由はともあれ『縄文のメデューサ』に何かしら思い入れのある人物、ということになるでしょう。
「最初から疑ってかかる」のは筆者に対してたいへん失礼なことですが、できれば真相に迫りたいものです。
その方法を1つ思い付きました。
私も信州に行き、土産に『縄文のメデューサ』のレプリカを買えばよいのです。
そして真夜中に同様の怪異が発生するか?試せばよい訳ですね。
この物語に出て来る怪奇現象は、オカルト話によくある、いわゆる「祟り」「障り」「呪い」といった霊障を伴う現象とは全く異なります。
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「縄文時代の蛇信仰の想念」ということならば、見られるものなら見てみたい(恐怖<興味)。
とにかくも、まずは本物の『縄文のメデューサ』を拝まないことには始まりません。いや、是非見たい!
家族の同意も得られたことで、思い立ったが吉日。レンタカーで行って来ました。
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(古代から続く物流ルート上です)
井戸尻考古館
やって参りました!念願の「井戸尻考古館」。こちらに『縄文のメデューサ』こと『人面香炉形土器』が展示されています。
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ここは高い山々に囲まれた自然の景色がとてもとても美しい高原です。
標高890m。空気が美味い!
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チケット代は大人300円、子供150円。ではいざ、入館。
館内は撮影OKですが、展示物によっては撮影NGのためルール遵守です。
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もう興奮が止まらない!
そしてついに『縄文のメデューサ』とご対面!
『縄文のメデューサ』は撮影NGのため、こちらに載せている写真はあくまでも「館内を撮影した写真」を拡大したものです。ご理解をお願いします。
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こちら側のかわいい顔は、実は想像による復元なのだそう。
そして反対側の顔は…
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やっとお目に掛かれました。よくぞ発掘されて下さいました☆
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正面から見ると石にされそう?(いえいえ、ガラスに自分が写り込んでしまうため斜めアングルです)
こうして実物を目の当たりにしても、周りの土器とは全く違って異質と言う表現が合っている気がします。
感じ方は人それぞれですが、間違いなく言えるのは、この作品が今後の時代にも伝えるべく縄文アートの傑作の1つ、ということでしょう。
世間の認知度がまだまだ低い気がしますが…これからですかね(笑)
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人面型の香炉は他でも出土していますが、ヘアスタイルが「メデューサ」なのは今のところこちらの1点のみでしょうか。
(同じケース内に陳列されているものが最も類似のようです)
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『縄文のメデューサ』は最初から1点しか作られなかったのか?
複数作られたが、最終的に壊されてしまったのか?
人型の土偶はカタシロであり、最終的に壊す目的で作られます。
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念願成就時に壊して完成ですから、香炉であっても人面を象る物ならば、何らかの願掛けか儀式に用いられ、最後は意図的に壊されたのでしょうか?(この傑作を?)
知れば知るほど…謎です。
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宮崎駿と井戸尻考古館
因みにこちらの考古館でかつてイチオシだった出土品は、
『水煙渦巻文深鉢』です。こちらも奇をてらう左右非対称の造形に緻密なデザインが施された素晴らしい逸品です!
「井戸尻考古館」ホームページのトップにも写真が掲載されています。
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昭和時代の「官製はがき」にも載っていました。
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『水煙渦巻文深鉢』…名付け親は、かつてこの地で発掘に尽力し、先駆的な業績を挙げた「異端」の考古学者・藤森栄一でした。
『となりのトトロ』のお父さんのモデルになった人物ですね。
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彼がなぜ「異端」かと言うと、「縄文時代には既に農耕文化があった」と主張したからです(最近ではかなり有力な説になってきました)。
館内に展示された優れた出土品の数々…これらを見る限り、狩猟の片手間に作られた品とはとても思えません。
定住し、複数の人間で仕事を分担し、土器のデザインに長けた者、焼成に長けた者がいて、コミュニティーの中で助け合う生活環境でなければ、これほど芸術性の高い作品を産み出すことはできなかったでしょう。
ところで館内の入口付近には、宮崎駿さんや坂本龍一さんが、以前ここを訪れたときのコメントがパネルで展示されていました(写真を撮り忘れた!)
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関暁夫と井戸尻考古館
では「井戸尻考古館」の最近のイチオシは?というと、
『神像筒形土器』です。こちらも緻密さはさることながら最早言葉では表現しがたい「突拍子もない」まさに「異形の神」を思わせる傑作アートです!
(こちらも近くでの撮影はNG)
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現在、考古館のパンフレットの表紙を堂々と飾っています。
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「どこかで見たことある」と思った方、きっとあの都市伝説の番組でご覧になったのでは?(笑)
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関さんはこの『神像筒形土器』の前で、こんなことを仰っておいででした(以下、関さん風にお読み下さい)。
「当時の人は、自分の目で見たモノをそのまま作ったの!」
「居たの!こんな姿をした生き物が実際に!」
「宇宙由来の生命体と人間とのハイブリッドなの!」
「人類は次世代の生命体にかつて進化したの!そしてこれからもまた進化するの!」
…だいたいこんな内容でした。
(テレビを見ていたおそらく殆どの人は、内容について行けずお口ポカン状態だったのではないかと)
いきなり筒形のタコ神様に変容せずとも、ワンクッション手前でこういう(↓)生命体を挟むと理解し易いかもですね。
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ところで皆さんはタコ独特の性能をご存知でしょうか?
タコは常に水平の景色を見ている
タコの瞳孔は横長の長方形です(ヤギもそうですね)。
タコは水中でどんな体勢になっても常に水平の景色が見えているそうです。つまり水平器の機能を備えているのですね。死角も殆どありません。
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タコの脳は9つ
タコは人間と同様に体全体をコントロールする脳が1つある他、8本の脚それぞれに独立した脳を備えています。
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こうした性能を人間が持った場合、どうなるでしょうか?
もはや「新世界の神」レベルです。
そういえば飛鳥時代の推古天皇の長女、厩戸王の妃になった女性の名は、
「菟道貝蛸皇女」でした。
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名前に貝やタコが入るのは現代人にはない感覚です。
「海産物への感謝と豊穣の祈りを込めて」というよりも、「貝やタコのような姿の神を奉る」とした方が、個人的にはしっくりきます。
(菟道貝蛸皇女は元々、伊勢神宮の巫女になるべきだったところ、何かの事情で資格を失い厩戸王に嫁したとする説があるのです)
いやいや、「菟道貝蛸」なんてネーミング、記紀編纂時の後付けでしょ?と言われればそれまでなんですが。
(私の仮説は研究者に鼻で笑われるヨタ話です。酒の肴に楽しんで下さい)
何はともあれ、土偶が自然霊とか木の実の擬人化とか言われている昨今、
ハイブリッド人間説は遥かにブッ飛んだ仮説です。
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あの縄文特有のグルグル模様は「神格化した蛇を模した」だけで説明を終えてはいけないような、何かの洗礼のように思えていたのですが、
他の生命体の特徴が一部の人間に遺伝
↓
容姿が変わり超能力を備えたハイブリッド人間誕生
↓
一般の人間から神格化される
↓
ハイブリッド人間の能力に憧れた一般の人間が容姿を真似て刺青を彫る
(地域によってはハイブリッド人間を食すとハイブリッド人間になれると信じられた)
…と考えられなくもないのかな?(十和田のオリジナル考察)
「井戸尻考古館」の学芸員さんたちは、神話も取り入れて歴史考察をする、と何かで読んだ記憶ですが、はたして「宇宙生命と人間とのハイブリッド説」が受け入れられるのか?不明です(笑)
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『縄文のメデューサ』レプリカは?
館内を一通り見学し、心が満ち満ちてすっかり満腹状態に。
『縄文のメデューサ』をはじめ他の有名な土器も含めて、数々の展示品をじっくり観察することができました。
見れば見るほど優れたデザインに感銘し、知れば知るほどまた新たな疑問も生まれます。キリがない。
館内は人が少なくて写真が撮り易かったのも嬉しいポイント。入場料300円でこんなに楽しめるとは!大満足です。
![](https://assets.st-note.com/img/1696013487310-p7GJXJxF0O.jpg?width=800)
…と、このまま帰ってはなりません。はるばるここまで来たからには最初に掲げたミッションを達成せねば。
さて、私はこの後、『縄文のメデューサ』のレプリカを予定通り入手できたでしょうか?
(次回に続く!)
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