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橘(たちばな)あれこれ①

昼間の気温は大分高くなる日も出てきました。冬用のコートはそろそろ出番が終わりそうです。

スーパーには様々な種類の柑橘類が並ぶこの時期ですが、今日の菓銘は「花橘」。とはいえ橘の花は白、実は地域にもよるでしょうが10月から2月あたりまでに成るところが多いようです。

橘でまず知っておきたいのは、田道間守(たじまもり)の話。実在したのなら紀元300年前後に在位したと思われる垂仁天皇の90年(!)2月1日に、田道間守に命じて、常世国(とこよのくに)に遣わして、「非時香菓(ときじくのかぐのみ)」を求められた。これは今の橘である、と日本書紀に記載があります。

そして99年7月1日、垂仁天皇崩御。百四十歳(って書いてあるんです)。
翌年3月12日、田道間守は非時香菓を持ち帰ったものの、天皇が亡くなったことに泣き叫んで死んだ、と。

非時香菓は、当時不老不死の薬と考えられていたようです。が、神話の時代と言ってもいいくらいの昔、百四十歳まで生きた、とか、百三十歳くらいになってから持ち帰るのに年月を費やすであろう不老不死の妙薬を欲しがったなんて垂仁天皇は一体いくつまで生きたかったのだろう、と不思議に思うことが満載です・・・。なお、この田道間守、今ではお菓子の神様、柑橘の神様として祀っておられるところもあります。

今日の写真のお菓子は、花や実の時期というよりも、日本書紀に記載の田道間守が登場する時期(旧暦)から想を得ているかと思われます。

この話から名前を取ったお菓子「香木実(かぐのきのみ)」を福島の長門屋さんが作っておられます。橘は使っておらず、会津産鬼くるみをこしあんで包んだものですが、不老不死から来るおめでたい感じがありつつも、気楽につまめるので気に入っています。くるみが入っているので固さもある分、お年召した方には不向きかもしれませんが、相手によってちょっとした御礼などに使うこともあります。コーヒーなどにも合うとお店で薦めておられるので、お茶をなさらない方でもよろしければお試しください。

暖かくなってきたので、鉢物の植替えなどにも忙しくなってきました。虫が出てくるという啓蟄は3月5日だったようで、元気なダンゴムシが沢山いました・・・。芽を出した草花もいくつかあり、これからの季節が楽しみです。そろそろお花見の計画を練りだすのもよいかもしれません。

参考文献:日本書紀(上)全現代語訳 宇治谷孟(講談社学術文庫)

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