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岩手県の暴力団情勢

現在の暴力団情勢

〇概況
 2019年末の岩手県の暴力団情勢は、4系列10団体、構成員等140人(構成員/準構成員の詳細不明)である。系列別には山口組5団体、神戸山口組2団体、住吉会2団体、松葉会1団体である。 ※画像出典:①より

勢力図

 詳細な団体名は公表されていないが、周辺情報から以下の4団体名が確認できる。
【盛岡市】 山口組藤友会星一家 住吉会西海家武田会
【奥州市】 住吉会大日本興行奥州生田一家
【一関市】 松葉会一ノ関

〇全国における割合
 岩手県の暴力団構成員等は、全国の0.5%程度を占めている。県内人口、GDPが全国に占める割合と比較すると、暴力団構成員等が少ない地域であると推察される。※出典:②③

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暴力団勢力の推移

〇構成員等数
 岩手県の暴力団構成員等の数は1972年に約900人であった。暴力団対策法が施行された1992年時点で637人、その後約400人前後で推移していたが暴力団排除条例が施行された2011年以降減少傾向を強め100人台となっている。
【構成員等数の変遷(概数)】
1972年  900人
1992年  637人
2000年  441人
2010年  400人
2014年  330人
2019年  140人
※出典:④

 2015年時点で盛岡市の暴力団構成員等は約200人であり、県内の暴力団構成員等の約55%を占めている。

 暴力団構成員等の推移の全国的傾向(青線)と合わせて比較すると、類似して減少傾向にある。なおデータが不足しており岩手県の準構成員の詳細は不明である。
※注 全国的傾向は全国の暴力団構成員等(1992年以前は構成員限)の増減傾向を、1972年の岩手県の暴力団構成員等数に乗じて示している。

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〇団体数
 団体数は1992年に29団体が確認されている。構成員等数の減少と同様に、団体数も減少し10団体までに減少した。
※出典:④

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県内組織の変遷

〇概況
 1993年時点で山口組勢力が県下勢力の6割以上を占めていた。この頃、山口組の東北進出が顕著であったが岩手県は東北地方の中で最も早くに山口組が勢力を拡大した県であった。1995年時点で県内の417名の構成員等の内、300名が山口組系に属しており県内の約72%を占めていた。

 2000年には県内の96%が大手3団体と称される山口組、住吉会、稲川会の系列に入っており、東北他県と同様に大手の寡占化が完了している。2010年時点で山口組が約71%、住吉会が約19%、稲川会が約5%を占めている。詳細な時期は不明だが2015年までの間に稲川会の県内組織は消滅している。

 2015年の山口組分裂に伴い山口組と神戸山口組の2組織が併存している。岩手県内で衝突した事例は確認されないが、全国的に山口組優勢に傾いており岩手県内の最大勢力が山口組系であることに今後も変化はないと推察される。

〇勢力の変化
 昭和期の情勢は不明であるが一般に東北は的屋系組織が強かったといわれる。既に名称は残っていないが盛岡市に拠点を置く山口組系星一家の源流は「東京盛代」という家名を冠する的屋系団体であった。岩手県内の的屋系組織が昭和後期~平成初期の比較的早い時期に、山口組傘下に入ったことで現在まで連なる山口組主流の流れが出来たと推察される。

抗争事例

 岩手県を主とした抗争事例は確認されない。

近年のトピック

〇暴力団排除条例
 2011年7月1日暴力団排除条例が施行された。繁華街で特に取締りを強化する暴力団排除特別強化地域は岩手県内では定められていない。

〇資金獲得活動
 【密漁】2014年に釜石市でアワビの密漁が摘発されている。漁業が盛んな他県でも見受けられるが暴力団が密漁に関与していると疑われ、密漁を資金源にしている可能性がある。
 【震災復興】東日本大震災の復興事業に労働者を派遣するなどして暴力団関係者が摘発された事例がある。暴力団排除強化及び復興事業自体の進展に伴い、この種の資金獲得活動は減少していると推察される。
出典:⑤⑥

〇消滅事例
 北上市では山口組名神会(名古屋)系の団体が事務所を置いていたが、2014年に取締りを受け活動実態が無くなった。2020年現在に至るまで北上市に暴力団進出の動きは見られない。出典:⑦ 

考察

 岩手県の暴力団は減少傾向にあり、今後も暴力団排除の進行とともに減少が進行することは確実である。震災復興事業が落ち着きつつある現在、県外から暴力団が流入し勢力拡大を図る可能性は低い。一方で水産資源の密漁は十分に資金源となり得る為、注意が必要である。
 今後、勢力の中心である暴力団構成員の高齢化に伴い組織が維持出来ずに自然弱体が起きると想定される。若年~中年層が新規に暴力団に取り込まれる事を防止し取締りが継続されれば、加速度的に暴力団消滅が可能であると考えられる。

出典

①公財岩手県暴力団追放推進センター http://www.iwate-boutsui.jp/
②総務省統計局「人口推計」https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2019np/index.html
③内閣府「県民経済計算」https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h28.html
④岩手県議会会議録

⑤「密漁アワビ2066個所持の容疑で4人逮捕」産経ニュース 2014.9.2付 
 逮捕容疑は8月25日、釜石市唐丹(とうに)町の漁港で、密漁したアワビ2066個(約256キロ)を所持していたとしている。(略)主犯格の坂東容疑者は本籍が函館市だが、7月から遠野市に住み、密漁の拠点にしていたという。密漁は暴力団の資金源になっており、県警は組織的犯行の疑いもあるとみて調べる。
⑥東日本大震災の復旧・復興事業に係る暴力団の情勢 - 国土交通省

⑦飲食店が「暴力団縁切り同盟」…みかじめ料拒否/岩手 2014.10.11
 みかじめ料(用心棒代)を拒否することで暴力団を追放しようと、岩手県北上市の飲食店約200店舗からなる料飲店組合が11日、「不当要求拒否同盟」を結成する。暴力団との縁切り同盟の結成は県内で初めて。県警組織犯罪対策課によると、今年5月、市内に事務所がある指定暴力団山口組系名神会傘下「筒井組」の組長(44)らを恐喝未遂容疑で逮捕したことなどで、市内での暴力団の活動が沈静化。新たな暴力団の進出を防ごうと、同課が同盟の結成を働きかけていた。(略)

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