TBSラジオ パックインミュージック編 七年目のもう一つの別の広場 野沢那智・白石冬美版
ラジオ深夜放送が特別な存在だった時代の匂いがする。
60年代から70年代にかけてラジオの深夜放送が、若者たちの自由なメディアであろうとした時代がありました。
深夜に帯で放送され、ニッポン放送の今でも続く「オールナイトニッポン」、文化放送の「セイ!ヤング」、そしてTBSラジオが放送していた「パックインミュージック」。
出遅れ気味だった「パック」のなかで気をはいていたのが、声優としても活躍していた野沢那智さんと白石冬美さんがパーソナリティの金曜日です。通称ナチチャコ・パック、口語でいうと”なっちゃこ”でした。
野沢那智さんが洋画の吹き替えでも有名なため、表紙のジェームス・ディーンらしきのイラストの脇に”この人は野沢那智さんです”とあります。
本人は俳優兼舞台演出家を肩書とし、番組でも声優や吹替は俳優の仕事の延長上と言っていた記憶があります。
白石冬美さんも声の仕事で売れっ子でしたから、投稿葉書や封書を読むのは二人とも達者です。
そこに送られてきた印象深い投稿作品をまとめたのがこの本です。
装丁は当時のガロなどサブカルチャー系のブックデザインを手掛けていた羽良田平吉さんです。ポップでカッコよいです。
「読まれたい!」ラジオへの投稿が若者を吸い寄せる魔力。
ハガキ職人という言葉が最近はメール職人に変わりましたが、今も昔も深夜のラジオ番組の多くは投稿によって成り立っています。
しかしここに投稿されている内容は、現在のネタの面白さを競いあう内容とはだいぶ違います。
笑えるものもありますが、差別や貧困や家庭内の問題まで、シリアスな内容も少なくありません。
若者たちが社会と向き合い、問題を共有する場でもあったのです。
ただしラジオの投稿は今も昔も読まれることを目指しますから、勘ぐればどこまでリアルだったのか(制作が確認していたかもしれませんが)はわかりません。
ただ令和の時代に読んでも胸に迫るものもあり、なっちゃこから40年が過ぎても、問題がさして改善していないことを考えさせられもします。
昭和49年(1974)に売れた本です。
この時代のラジオ深夜放送は現代サブカルチャー史のなかに組み込まれてよいはずなのですが、意外にこぼれがちですよね。特に野沢那智さんは声優という職業に若者に周知させた功労者です。
このようなラジオの投稿を中心とした番組本は貴重な資料と考えます。
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