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062 | 自転車で、あなたを待っています を観に行った



1つ前のノートとダブるがこっちが本チャン。
先週土曜日、東中野に「あなたを待っています」を観に行った、雨上がったから片道約10km自転車を駆って。
着いたら東中野駅前には立派な地下駐輪場があり、深夜1時半まで出し入れ可だった、素晴らしい。100円払ってロードレーサー停め置き、地上に出てテクテク歩きポレポレ東中野へ。

既にほぼ満席の劇場でなんとか席を見つけ潜り込みワクワク上映待ちながら、券売カウンターで一緒に買ったWILKINSONのジンジャーエールで喉の渇きを癒す。明確な辛さが沁みるゼ。





「あなたを待っています」は、見逃したくなかった懸案的な映画だ。今夏は「君の名は。」と「シン・ゴジラ」と「あなたを待っています」の3作品を劇場で観たいと思っていた。
ジュブナイルなアニメ映画「君の名は。」、歴史ある怪獣映画「シン・ゴジラ」、と単館レイトショー公開の自主制作「あなたを待っています」では、作品のスタイルは異なるけど、個人的に繋がりを感じる。

twitterで誰かのtweetをたまたま見た、「君の名は。 で震災を〇〇し、シン・ゴジラ で震災を××し、あなたを待っています で震災を笑う」と言うようなつぶやきを。
実は〇〇と××、が指す部分は忘れてしまったのだけど「あなたを待っています」については”震災を笑う”だった。まさか現実の被災地を嘲笑するなんてスットコドッコイな事ではないだろうが、震災に関して何かを訴えている事が予想された。

また、この3作に震災を感じさせる共通項があるとしたら、それがどんな手触りなのか知りたくなったし、一度そう思うと3作品それぞれに興味が増し、劇場で観たくなった。


(肝心のtweetは、フォローしてる誰かかその周辺のretweetの筈だけど、今から再検索してもなぜか見つからない><)


「君の名は。」と「シン・ゴジラ」は観た。実際観ると二者の作風の違いは明確だったが、それぞれ気持ちの良い快作だったし、震災というか災害という概念で何が共通していたかも感じる事ができた(↓※)。

そして勝手な三部作?の最後「私は待っています」は鑑賞された、舞台挨拶を伴う公開初日に。
実際劇場に赴いたら、案外長くかかってる事が分かったけど、単館公開の、レイトショーで、自主制作作品、などと聞いていつ公開終了するか分からなかったし、観に行けそうな日が公開初日だったから、折角なら舞台挨拶も見てやれと、雨が上がった夜に自転車を出したのだ。





「あなたを待っています」は久しぶりに観るタイプの映画だった。高校生時分観まくったPFF(ぴあフィルムフェスティバル)を思い出した。

内外の大手商業映画のように起承転結は明瞭ではなく、なんだかなぁ〜、と思って観ていると、そのノリのまま最後まで物語は進んだりしたし、物語って言うほど明確な何かが語られない作品もあった。
そーゆーものを脳が硬くなる前の思春期に、観る機会を得られて良かったと思う。大概のジャンルの映画を楽しむ癖がついたし、そもそも映画は楽しくなくても退屈でもよい、という感覚を脳幹の辺りに刻めたから。

そんな私をなんだか嬉しくさせた「あなたを待っています」。その主人公は、東京はいつか起きる大地震とそれによる原発事故で壊滅するから、金貯めて女10人連れて山奥に脱出するのを目標に、バイトに明け暮れている売れない役者の男。一言で、好きor好きじゃない、良いor良くないと切り捨てるのが難しい、痛い考えと行動の人だ。

大地震に備えて首都圏脱出、は3.11以後の日本を生きる我々には、皮肉めいていたり空恐ろしい話でもあるけど、男の行動はどこかピントが合ってなくて、あれこれ空回りする。そのダメっぷりが逆にグっと来る。

“はたして男の脱出は成功するのか?”的な緊張感は乏しいまま、カメラは男の時間を抽出する。バイトの合間はどうにかSEXする事ばっか考えていて、そんで合コンに臨むも女子に相手にされない上、その席でゲロ吐いたり(苦笑)トホホな日常が阿佐ヶ谷辺りを舞台に炸裂する。

男の行動からしてカオスなのに、輪をかけてよく分からない子持ちの女が登場し、男の乾いた混沌は更に加速してるよーなしてないよーな・・。
男はその女を放っておけなくて、あれこれお節介するが、こーゆーズレたお節介する人っているよな。学友の中に1人くらい、仕事関係にも1人くらい、って感じでリアルだ。迫真の演技、と言うのとは違うかも知れないが至極自然な感じ。

その主演の大橋裕之さんは上映後の舞台挨拶で撮影を思い起こし、中でも納豆を食べるシーンについて「納豆食べてるっぽくない」などと悔恨されていたが、本作は「観ると納豆を食べたくなる映画BEST3」くらいに堂々ランクインする。





サイン頂きました♪


購入したパンフレットや舞台挨拶の製作チームらによると男の行動は、男個人の "ジャスティス" なのだ。本作はジャスティス映画なのだ。
うまい事を言うものだ。ジャスティスって言葉を得て、この映画のモヤモヤ感ごと直感的に感じ入る事を可能にする。

プロデューサーの松江哲明さんは舞台挨拶で、大入りじゃない感じでフラっと来てダラダラと見て欲しい映画、みたいな事を言ってたけど、それは私が観た当時のPFFのノリそのものだ。
「あなたを待っています」で私は退屈を感じる、震災を個人としてどう捉えるかというテーマを含有しつつ。でもって男のトホホな日常にカラカラと笑う。私の2016年夏の震災映画3部作鑑賞は無事果たされた。


パンフレットの最後に同作の制作チームが選んだ「俺のジャスティスムービー30選」というのがあった。これが私にとってドストライク&ド直球の作品が多くて嬉しくなった。

その筆頭に挙がる「タクシードライバー」が、本作のイメージに通じるのは合点がゆく、なるほどって感じ(男のファッションは袖下に小型拳銃の1丁や2丁隠せるくらいハードボイルドだ)。
更に今時フリードキン監督の「フレンチ・コネクション」や、クリストファー・ウォーケン主演の「デッドゾーン」や、マイケル・パレ主演の「ストリート・オブ・ファイヤー」など、'70〜'80年代の、テレビ放映時代、またはレンタルビデオ世代の名作やB級も挙げてくれてて感激。

それぞれにイっちゃてる正義や、微妙に空回りする義侠心が滲み出る、漢の映画である。


※、→ 061 |  シン・ゴジラを見た