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63【家族として】


この夏休み
ノンの寮問題があった
帰省まえにノンとノンの彼氏が
仲良くしてることが原因で
寮生全体の前で吊し上げにあった

好きになったもの同士が
幸せで仲良くしていることが
許されない社会って絶対おかしい

ずっとムウとルウが
仲良くしてる姿をみて育ってる子たち
それが当たり前だと思って当たり前

誰かに好きな人ができたら
みんな、喜んで心から応援してきた

だから誰かの幸せは
みんなの幸せ

それが当たり前の世界で生きてる

一方でそう思わない人がいて
それを恥じて隠すよう促したり
反省させたりする世界が
実在するということも事実

どれが正解かなんてわからないけれど
ムウは人として親として
できる対処を全力でやった

彼女の完全な味方であるために


お盆のこの時期リキ(長女の夫)は
一人、山梨の実家に帰省していて
長女と孫たちはうちに泊まっていた

翌日、戻る予定のリキ(長女の夫)が
山梨でコロナになり、10日間隔離との連絡が来る

もう少しこのままいてもいいか?と長女

最初は
いいんじゃない?

と思ったけれど
ムウもルウも今、
コロナになったら重症化するから
くれぐれも気をつけるように言われていたので
大事をとって、家に戻ってもらうことにした

この数日後、
ユーの教員採用試験の2次試験の日で
絶対にコロナにはなれない状況でもあったから尚更

このことでお互い(長女対ルウの)の
ボタンのかけ違いが起こり
長い冷戦状態に入った

いずれにしても
ルウがムウの身体を特に心配してのことで
それが思うように伝わらなかったのが原因

元を正せば、ムウのせい

家族の中で色々なことが起こっていた


全てはコロナやガブちゃんという
人を翻弄する得体の知れないものへの恐れ
そのわからなさによって揺らぐ家族の像

いろんなことが一気に起こり
みんなハッピーでいられない状態が続いた

そんな中、
さらに事件が起こる

ここのところ、
ルウがずっと冷たいことに
気を病んでいたムウは
たまりかねて、
ルウにそのことを訊ねた

最近、
目も合わせないし
触れもしないし、
優しくないよね

どうして? 



ムウはムウが身体のことで気が立っていて
扱いに困っているだろうなと想像していた

申し訳ない気持ち半分
優しくしてよと求める気持ち半分

だけど、違った
全くもって違う方向から答えがとんできた

ルウは
小さくつぶやいた

“家族としてしかみられない“



?????


なんのことだかわからなかった

どういうこと??
なになになに????


きっとガブちゃんのことを
言われるつもりでいたのに。。。。

ルウは言った

ジェンダーのことを
カミングアウトされたあの日から
家族としてしかみられない




今、これを書いているムウは
なぜこれをここに描く必要があるあるのか
自問自答している

こんなガブちゃんと関係のない
プライベートなことを
曝け出す必要がどこにあるの?と

そうよね
ここまで書く必要はないし
書いたらいけないことなのかも知れない

だけどだけどだけど
ここを隠したまま先には進めない

この言葉でムウの未来は
全て変わってしまったんだから

最も恐れていた言葉だった


最も言われたくない言葉だった

でも言われるかも知れないと
確かに思っていた言葉だった

同時に何処か
それによって

ホッとしてるむうもいた


それがなおさら、
オソロシかった


壊れてく
二人で紡いだ30年が壊れていく


ひたすら守り通してきた
“しあわせ“の像が。。。



壊したのはムウ

そこまでして一体、ムウは何を?

ジェンダーを
カミングアウトをすることは
きっと悪いことじゃない

だけどそれを受け入れないのも
絶対的に許される在り方

ややこしいのが許されるなら
ノーマルであることも許されるはず


頭ではわかってる

お互いに頭ではわかってるけど

心が、気持ちが、ついていかない


好きなものたちが当たり前に仲良くできて
病気になったらお互いに支え合って
愛するものが抱えてる問題は
当たり前に理解し受容しもちろん愛し合う


もちろん、それは理想
だけど、全部が全部、
そんな理想通りとはいかない

わかってる
わかってる
わかってた

壊したかったわけじゃない

だけど
壊れるかも知れないとはわかっていた

“家族としか思えない“


この言葉はこのあと、ムウの中で
自分の声として響き渡ることになる


そんなにいうけど
あんたはルウをどうみてるのよ?と

そんなにいうけど
あんたの中にもその言葉が
ずっとあったんじゃないの?

だからそんなに響くんじゃないの?



事実を伝えたからといって
むうがむうでなくなるわけじゃない

どちらかというと
むうがむうでいるために
それをしないでいられなかった

それはむうが
家族としてしかいられないと
遠回しに宣言してるようなものなのかも知れない

あーあ
だよね


ルウはそれを天性の勘でキャッチして
ただ表現しただけだよね

むうの中にないものは
むうの中に見ることはできないんだから


彼女はいつもそう

むうが言われたくない言葉
むうが言えない言葉をあっさり表現する

むうの中にあって
むうが認めたくないそれを


あーあ

どこかでわかっていたはずなのに
このショックはものすごく大きかった

とてつもなく大きかった

その日から
むうもルウに触れられなくなった

あーあ


怖いよー

自分で作り上げた安全地帯から
出るのはめちゃくちゃ怖いよー

認めたくなかったことを
認めざるを得ない今が
めちゃくちゃ怖いよー


だけどもう、後戻りはできない

しない

生きるために

これからもこの世界で
ちゃんと生きるために


これは8月20日のこと


教訓
:家族という現象は
 大いなる幻想なのかもしれない
:愛と好きは何が違うんだろう
:自分の中にない言葉は
 自分に響くわけはない

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