彼がいた
長い影が 無数にのびている
風は眠ったように 今のどかだ
誰もが兎になって 眼を閉じ
性格の節々が 疼き出したぞ
何が死だ! 生でもないくせに!
気狂いになる時から生きるぞ!
穴の中には 幾億の群れ
群れにポトリと 彼が居た
理解ある老木が 2本も オオッ 倒れた
失意が黒々と天までも昇る
海には無言の光が降り
野という野には一面桔梗
待つものもなく 咲くことに咲く
年月が頭上を歪んですぎた
凍てついた 窓を放つと
天を見上げる 彼が居た
スタスタと人も時空も歩み去る
赤くなったり黒くなったりして
鳩に豆蒔く子らの前
無味な煙草を かさねている
遠くでメリメリ 青空が裂けた
裂けたことだけが頭にとけた
ふらついた腰に自分を乗せて
そうだそうだと首ふる彼が居た
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