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期間限定の「好き」をあなたに。


「期間限定で3月まで好きでいたい」


なんでこんなことを言ったのか、
今となってはあまりちゃんと覚えていない。
覚えていることといえば、
この関係を続けたかった反面、
終わらせなければいけない、
始まってはいけない関係だった
というのが大きいだろう。

それと、ありふれた日常に、
少しだけ刺激が欲しかった。


わたしには3か月前から、
毎月1度だけ会うようにしている彼がいる。
きっかけは本当に小さなことで、
その小さなことから始まって、
それ以来月に1度呑みに行くようになった。
もともと知り合いではあったけれど、
2人で会ったりしたのは最近で、
今回ふたりで呑みに行ったのは3回目だった。

わたしは彼のことが好きだ。
好きだけれど付き合いたいってわけではない。
ただ純粋に惹かれるところがあって、
素敵なところがあって、
尊敬できるところがあって、
マネしたい部分があるから好き、
それだけだったりする。
それだからもう少し彼がどんな人なのか知りたかったりする。
彼の良いところをわたしのものにしたいのだ。


わたしより1歳上の彼は、
顔は幼く見えるのに、
なぜか年齢は1歳どころじゃなく、
3-5歳は上でもあながち間違えていないんじゃないかという、
"何か"をもっていた。

すぐに幼く見えてしまうわたしにとって、
彼のそれはとても羨ましく思うもので、
わたしの欲しくてたまらないものであった。
彼曰く「落ち着きがあるからだと思う」とのこと。
確かに、LINEとかだとすごく落ち着いて見えるし、
なんとなく文字を、
文章を大切にしているんだろうな
というのが伝わってきて、
ただ適当に返事をしているわたしとは
大違いだなと思うこともたびたびあったし、
わたしのつまらないポエマーみたいなLINEにも、
合わせて返事を送ってくれる技量を持っていて、
なんていうか大人の余裕みたいなものが
垣間見えるのがとてつもなくよかった。

それと、彼の話やすさがたまらなく好きだった。
誰とでもすぐに仲良くなれて、
誰とでも楽しく話が出来る彼を、
心から尊敬していた。
会うたびに彼は周りとどのように接してるか、
彼に穴があいてしまうくらいに熱心に観察した。
観察した甲斐もあり、
彼と会うようになってから
人見知りを克服しつつあったし、
友達も何人かできたので、
見本になってくれるのはありがたいなあと思った。


「そこまで好きなところがあれば好きなんじゃないか」

きっとそう思うと思う。
しかも大学の頃から恋愛体質と言われてきたわたしだから、
尚更そう思うと思う。
ただ、恋愛体質の時からそうなんだけれど、
わたしは無謀な恋というものをしたことが
人生で一度しかなかった。
自分の身の丈に合った恋愛をしていたし、
手の届く範囲の人を好きになっていた。
めんどくさがりなわたしは恋愛に対してもめんどくさがりで、
無謀なことや無駄なことは何一つしたくなかったのだ。

「きっと、本気で本当に好きな人に出逢ったらそういうのも無くなるんだろうなあ」
そう思ってからもう5年は経っている。
5年の中でたった1人しか出逢えなかったから、
わたしは恋愛体質でよかったなあって
心から思っている。
だってそんな5年に1人いるかいないかわからない人を待ち続けても、
その人が彼氏になるかなんてわからないのだから。

彼のことは好きだけど、
付き合いたいほど好きではない。
いや、それは嘘になるかな。
だって彼が付き合おうといえば、
わたしは付き合うんだから。


付き合うために頑張らない理由といえばこれかな、
もう今更付き合ったところで
何も変わらない気しかしないところかな。
会いたい時にLINEすれば会ってくれて、
他愛もない話をつまみに酒を呑んで、
終電を逃してホテルへ行って、、、。
この関係以上の関係がわたしには見つからなかった。
この関係で全然満足していた。


ひとつ変わるとしたら「彼氏です」と、
ほかの人に紹介できるようになることくらいだろう。
そんな肩書き、別にわたしは求めていなかった。
全然「友達です」って紹介する、それで良かった。
付き合うことによって何かが変わってしまうなら、
今の心地の良い関係のままでいいと思えた。

わたしは彼に彼女が出来ないことを強く願っている。
彼女が出来てしまえば、この関係は終わりだもの。


お互い時間が合わなくて、
きっと叶わない願いだろうけれど、
彼と色んなところにお出かけしてみたかったな。
きっと楽しいんだろうな、
たくさん笑ってくれるんだろうな、
そう思うだけでなんとなく楽しい気持ちになれた。

だけど彼と付き合う未来を想像することはできなかった。
不思議となぜだかちっとも想像できないの。
だから彼といるのをやめられなかった、
もっと知りたいなと思ってしまった。


そんな彼に「期間限定で、3月まで好きでいたい」と伝えた。
わたしは今のこの関係を期間限定でもいい、
少しでも長く続けたいと願っていた。
本当は期間なんてつけなくても、いや、
つけない方が長くいられるかも知れない。
でも、それでも、
不確かな未来よりも確実な約束のようなものが欲しいと、
我儘で図々しいわたしはそう思ってしまった。
「彼氏」の肩書きはいらないと言いながら、
わたしは「好きな人」の肩書きは欲していた。


なんとなく、
"期間限定"って言えばいける気がしていた。
だってこの世の半数以上はきっと
期間限定に惹かれるし、
興味を持ってくれるから。
付き合って欲しいわけでもなく、
ただわたしが好きでいるだけだし、
誰も困る話じゃないとも思った。
「期間限定って面白いね」と、
彼はすんなりOKしてくれた。
「ゆぽは好きな人が欲しいんだね、俺でいいなら」
と、優しく笑ってくれた。


そんな彼についこないだも会ってきた。
歩きながら店を決めてくれて、
わたしはそれに金魚のフンみたいについて行く。
居酒屋に到着すると
「奥どうぞ?」
と、必ず奥の席を譲ってくれた。
「何食べたい?好きなのいいよ」
お言葉に甘えて、好きなものを2つ選んだ。
「他は適当に頼んで大丈夫?」
コクリとわたしが頷くと、
彼はスラスラとわたしの注文に
何品か追加して注文をした。
優柔不断なわたしにとって、
それはすごく助かるし、
彼が何を食べたくて頼むのかも知れて、
とても楽しく感じた。
「これ美味しいんだよ、食べて!」
ってオススメを頼んでくれるのも、
「それ食べたいと思ってた!」 
というものを注文してくれるのも、
「あぁ、この人は大人だなあ」と、
思うには充分だった。

美味しいものを食べると1人でもにやにやと口元が緩んでしまうわたしをみて、
彼は「かわいいね」と言い頭を撫でた。
料理を食べたあとに隣を見ると、
彼もニコリとしながら「美味しいね」って
料理を食べてるもんだから、
思わずわたしも笑ってしまった。
「美味しいね」と、
笑い合いながら食べるご飯は格別に美味しかったし、
5倍くらいは美味しさがプラスされていると思うんだよね、
多分ね。

彼の笑った顔が好きだ。
楽しそうに笑う彼の顔も好きだし、
わたしの笑った顔をみて同じように笑ってみせる彼の顔もとびきり好きだ。
またあの笑顔を見るために、
わたしは頑張るんだろうな。

3月まであと5か月くらい。
それまでにたくさん笑顔にしたいな。
たくさん笑顔が見たいな。
お出掛けなんて出来ないけれど、
また美味しいもの食べながらたくさん呑もう。

遠い距離だからしばらく会えないけれど、
会える時を楽しみに。

さあ、頑張ろう。

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