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書籍「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」の書き出しが「今」を予言しているかのようだった

僕らの知っていた世界は終わりを遂げた。
格別に強毒型の鳥インフルエンザがついに異種間の障壁を超えて人間の宿主に取りつくことに成功したか、あるいは生物テロ行為で意図的に放出されたのかもしれない。都市の人口密度が高く、大陸をまたぐ空の旅が盛んな現代においては、感染症は破壊力をもってたちまち拡散する。そのため効力のある予防接種を施す間もなく、検疫態勢さえ敷かれる前に地球の人口の大多数を死にいたらしめたのだ。
あるいは、、、

書籍「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」の序章の書き出しである。

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著者はイギリス宇宙局の研究者(出版時)であるルイス・ダートネル氏。翻訳版は2015年に出版された。今はKindle版も出ているようだ。

書き出しの「鳥インフルエンザ」を「新型コロナウイルス」に置き換えてしまえば、そのまま社説の書き出しになってしまいそうである。

ウイルスや戦争や小惑星の衝突など、何かしらのせいで人類が壊滅的に減少し、今の科学文明が崩壊した世界で、かろうじて読者が生き残り、科学文明の復活を担うという大役を務めるとき、どのような本があれば有用なのか。その「再起動マニュアル」を作成することが本書の目的の一つである。ちなみに原題は"The Knowledge -How to rebuild our world from scratch-"となっている。

この本は全部で13の章から構成されているが、第3章から第12章までが「復活させたい技術の章」である。

第3章 農業
第4章 食糧と衣服
第5章 物質
第6章 材料
第7章 医薬品
第8章 人々に動力を ーパワー・トゥ・ザ・ピープルー
第9章 輸送機関
第10章 コミュニケーション
第11章 応用化学
第12章 時間と場所

本書で取り上げられているこれらの科学技術を一から復活させなければならない状況にはもちろん至っていない。しかしながら、新型コロナウイルスと戦い、共生していくために私たちが考えなければならないことのリストにも見えてくる。

本書では現在ある科学技術を「一から作り直す」ことに焦点を当てているが、今の状況はむしろこれらの科学技術について「一から考え直す」ことが求められているのかもしれない。「コミュニケーション」はその最たるものだろうか。

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