見出し画像

【JOCV】派遣前訓練Day38|【書籍紹介】「天井の無い監獄 ガザの声を聴け!」

訓練38日目は課業が午前までであったので、久しぶりに市街地へ。本屋に平積みされている書籍のラインナップも1ヶ月で大きく変化していて楽しかった。残念ながらAmazonには本は平積みされていないのだ。時間も無かったので新書の棚を簡単に眺めていたところ、ヨルダン派遣予定の隊員としては見過ごせない一冊に遭遇した。

天井の無い地獄 ガザの声を聴け!」清田明宏|集英社新書

著者は国連パレスチナ難民救済事業機関、通称UNRWA(ウンルワ)で保険局長を務める医師、清田先生である。ヨルダンの首都アンマンで勤務されている。過去にはJICAへの出向という形でイエメンで働いた経験もあり、JICAとの関わりも深い方である。青年海外協力隊にもUNRWAが運営する施設に派遣されている人は多い。

UNRWAの活動範囲はガザ・ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区、さらにヨルダン・レバノン・シリアに及ぶ。(中略)UNRWAの業務には三つの大きな柱がある。教育・社会福祉・そして、わたしの担当である医療だ。(本書74, 75ページより)

本書では清田先生がUNRWAでの仕事を通じて関わりを持ったパレスチナの人々の生の声が綴られいる。

中東戦争、オスロ合意、ガザ50日戦争、米国の在イスラエル大使館のエルサレム移転など、学校の教科書や新聞などを通じてこれらの出来事について知っている人は多いだろう。

しかしながら、上述した出来事の陰でパレスチナ難民がいかに苛酷な生活を強いられているのか、日本の新聞やテレビニュースを見ているだけでは知ることが難しい現場の声を、本書を通じて知ることができる。

UNRWAでも米国からの資金が2018年に打ち切りになり、資金調達に奮闘したことが綴られている。数百億円相当の資金がいきなりストップし、組織の存続の危機まで追い込まれた。現在も綱渡りの財政が続いている。


本書を通じて、パレスチナ難民に糖尿病患者が多いことも知ることができた。

社会にある問題は弱者の身体・健康状態に凝縮されて現れる。(中略)糖尿病というと「贅沢病」のように考えている読者もいるかもしれないが、その認識は誤りだ。二十一世紀の難民の健康にとって、最重要課題は糖尿病を含む生活習慣病だ。
(本書74, 75ページより)

肥満が贅沢の弊害と決めつけることは危険であることは訓練18日目の論文紹介で取り上げたが、糖尿病の場合も同様のことが言えるだろう。経済的な理由で野菜を摂ることが難しく、安価な炭水化物が中心の食生活を取らざるを得ない状況なのだ。

青年海外協力隊でUNRWAの組織に派遣される隊員の多くは教育関係だ。当たり前だが、パレスチナ難民を取り巻く環境を知っているか知らないかで、教育の質は変わるだろう。

UNRWAだけでなく、中東・アフリカ地域で活動する隊員に薦めたい一冊だと感じた。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?