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一期一会な出会いの先に〔後編〕

▼前編は、こちらからどうぞ。▼

仕事終わり。黒猫に導かれ、ふらふらとたどり着いた場所は、不思議な喫茶店だった?!
「何かが始まるかもー」
そんな予感とともに、お店におすすめされた『ちょっと寄り道セット』を注文し、提供されるのを待っている。

前編のあらすじ
なんのはなしですか?
彷徨っていたら、不思議な喫茶店に
巡り会えた話です。


わたしをここへ導いてくれた黒猫は、コーヒー豆の薫りが漂う店内で休んでいる。

わたしは、歩き疲れたのか、通されたテーブル席で、一点を見つめてボーっとしていた。

「お姉さん。一つ伺っていいですか?お酒飲みたい気分でしょうか?それともノンアルコールな気分ですか?」

…!

突然話しかけられて、ハッと我に返った。

「あ…そうですね。今日は、ノンアルコールな気分かもしれません。」

「かしこまりました。もう少しお待ち下さいねぇ。」

本当は、お酒を飲んでもいいかなと思っていたけれども、今のわたしは、どのようにここまで来たのかわからない。自宅に帰れなくなったら困るのだ。


しばらくすると、驚くくらいのおしゃれな物が出てきた。


「大変お待たせいたしました。『ちょっと寄り道セット』です。ピンチョス3種と焼き菓子2種。お飲み物は、ノンアル希望でしたので、サングリア風の温かいお紅茶を準備しました。」

どうぞ。と言いおき、店主は去っていった。

コーヒーではないことに驚いたが、時間帯への配慮もされたのかもしれない。

ピンチョスは、一口サイズでいただくことができ、夜に食べても罪悪感がないところがいい。何より、プチトマトやきゅうり、ハムなどが使われていて、彩りがよかった。

焼き菓子は、パウンドケーキの隣にメレンゲクッキーがちょこんと添えられていた。


「いただきます。」



普段は、忙しなくご飯を食べていた。

身体に入れることができたら、もうそれでいいだろう。そんな感じで食事をしていたから、一品を丁寧に味わうことがなかった。


まずは、ピンチョスを口に入れた。

「おいしい…。」

ピクルスの酸味がとてもいいアクセントだ。
プチトマトは、口の中で弾ける。生野菜を食べるのは、久しぶりだったかもしれない。
ハムは黒こしょうがきいていて、大人味だった。


味わいながらも、あっという間に平らげた。

温かい紅茶は、ぶどうジュースをブレンドしているのか、風味が良かった。お酒を飲むと伝えていたら、赤ワインだったのかもしれない。


スイーツも、文句なく美味しいものだった。

「寄り道セットいかがでしたか?だいぶ顔色がよくなりましたね」
なんとも、穏やかな笑顔の店主だ。

「えっ。そんなに顔色悪かったですか?」

「えぇ。だからこの子が連れてきてくれたのではないかと」

店主が黒猫の方を見て、こう話した。

この黒猫は、誰でもこの店に連れて来るわけでは無さそうだ。

「このお店は、毎日やっておられるのですか?今日は、黒猫ちゃんに招かれるがまま歩いてきてしまったのですが、またいつか来たいな、と思いました。」


「そうですねぇ。毎日やれたらいいっすよねぇ。でも必要でしたら、念じてもらえたらいいですよ。あの場所に、戻れたらいいな、と。」


店主から受けた回答は、なんの話かわからなかったが、もにかくこれは不思議な出会いだ。


次にいつ会えるか分からないから、今を堪能するしかないのだ。

サングリア風のホットティーを味わい尽くし、お会計を済ませて、お店を出た。


「またお待ちしてます」


店主から挨拶をされた。
はい、と小さく返事をして、会釈をしてから、歩き始めた。


なんだか、心が満たされた気がする。

また行きたいなあ。


そう思い、振り返ってみたが、この店には看板もなければ、目印もないようだ。


いつか来れたらいいなあ。


(一期一会な出会いの先に 完)








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RaM
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