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泣かないわたしが泣いた夜。



わたしはあまり泣かない。

感動して涙を流すなんてことは、ほとんど無い。

ところが自分のまわりには情に厚い人間が多い。

積極的に泣きに掛かっている姿を目の当たりにすると、ドライな自分は血も涙も無い鬼畜なんぢゃないかと思う。

積極的に悲しいものに触れて、積極的に感動にこじつけて、積極的に涙を流したいという姿勢にわざとらしさを感じて興醒めしてしまうのだ。

やれやれ。





ところで皆さん、先日の金曜日ロードショーのヴァイオレット・エヴァーガーデンをご覧になりましたか?

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わたし、この京アニの最高傑作を、2019年と2020年と映画館に観に行ったのですよ。

先輩に誘われて行って、全く観たこともないアニメだったのに開始約10分でガチオタたちに紛れて・・・めっちゃすすり泣いたよね!!!!←

やれやれやれ。





ちなみに2019年の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』は開始15分で落涙でしたが・・・


2020年の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 』は開始5分で落ちたよね。

・・・え?





さて、こんな具合にわたしは多少のことでは全くもって涙なんて流さない。

“飾りじゃないのよ涙は”くらいに泣かないのだ。

速い車に乗っけられても、急にスピンかけられても、もちろん泣かない。







ところが、だ。

大変信じ難いことなのだが、そんなわたしが不覚にも涙を滲ませてしまった夜があった。

【芝浜】でも【紺屋高尾】でも泣かなかったわたしの目に、思いがけず涙が浮かんだ。


わたしを泣かせたオトコ、、、


それは、桂竹紋氏

ワルい男である。←


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(桂南之助さんと@横浜 第1回桂竹紋独演会)







とある夜の神楽坂。

香音里にて六連会の寄席が開催されていた。

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そこで初めて拝聴した【僕のおばあちゃん】という演目。

第二次世界大戦の満州と熊本を舞台につくられた地噺形式の新作落語である。

内容は竹紋さんのおばあちゃまの戦争体験記




わたし、正直なところ、戦争モノでは泣かない。

落語でなくとも、“泣かせる話”があまり好きではない。

もちろん、全ての戦争モノがその類の話だなんて思ってはいないけども。



しかしながら、【僕のおばあちゃん】はひと味違う。

説教臭くもないし、悲しみの押し売りもない。

わたしのニガテな“お涙頂戴感”が薄まっている。


激動の時代を過ごしたひとりの女性の生き様を語っているだけだ。


あのときおばあちゃんが生きることを諦めていたら、あのときおじいちゃんが生き抜くことを願わなかったら、命のバトンリレーが続かなかったと思うと震える。

さらに、“昭和の戦争時代を必死に生き抜いたおばあちゃんの苦労”と、“令和の噺家として懸命に生きている孫の竹紋さんの努力”がリンクしているところが、この噺の良くできているところである。

そのうえ、サゲがうまくまとまっている。ワードセンスにすぐれた“とたん落ち”である。

客席の女性陣はすすり泣き、男性陣は上手い落とし方に感嘆の声を漏らしているのが印象的だった。



ジツはこの演目、本日で拝聴するのが3回目。


もう、免疫がついたから目頭が熱くなることは無いだろうと思っていたのだが・・・。照


この演目を聴いた帰り道、なぜか毎回『オロナミンC』をムショーに飲みたくなる。

喉とハートをシュワシュワさせたい。たまらんね。


今までの竹紋氏しかご存知ない方は、一度聴かれてみると“他では聴いたことのない落語”にちょっとハッとするかもしれない。







そろそろフィナーレ!第3回心灯杯!









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さや香 / 落語ジャーナル
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