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理想宮という名の、究極の私的楽園・シュヴァルの理想宮@オートリーヴ(フランス)

上記、ボキューズ&ラ・ピラミド体験をしたフランス取材撮影旅行の時、無理矢理行程に組み込んだのが、アイコン写真にあるシュヴァルの理想宮でした。パリから南仏へ国道7号線を旅するという企画だったので、ヴィエンヌからアヴィニヨンへ向かう途中に、7号線からかなり逸れに逸れてやって来たのが、フランスの「へそ」くらいの位置にある田舎町=オートリーヴでした。あの時巻き込んだ取材班のみなさん、完全な公私混同であったことを謝罪致します。

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シュヴァルさんは、20世はじめにこの村で生きた郵便配達夫。ある日、配達の仕事中につまづいた変な形の石に魅入られて、そこからファンタジーが広がって、この建物をほぼ自分ひとりで建ててしまったそうです。オリエンタリズムのブームで当時の雑誌に載っていた東南アジアや世界各地の遺跡のイメージなどを、自由自在にハイブリッドしたようです。中には入れますが、中で暮らすのは難しそうです。

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いかがですか?このイメージの横溢。純真無垢な子供が、自分のイメージのままに砂場遊びで作り上げていくような感じで、この規模のものを作ってしまったところがこの建物の魅力です。

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後ろから見たところです。後ろは意外とすっきりしてますが、このあたりも意図的というより、ちょっと疲れちゃったのかなあ感があるのがご愛敬。

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でも、ディテールはこの密度ですから、すごい。普通の配達夫さんだったそうですが、シュルレアリストたちからもこの建物はヨイショされたりしてたそうです。シュヴァルの死後に、ピカソもやってきて、絶賛したとか。

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EVEの文字見えますか?アダムとイヴのイヴです。ホワイトハウスが隠されていたり、シュヴァルにしか分からない様々な物語が建物を埋め尽くしています。人によってはちょっと夢に見てしまう系かもしれませんね。

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私が好きな場所はここです。建物の正面に建てられたこれもまた自作の展望テラス。自分の作った理想宮を、配達夫引退後は日がな一日、ここから眺めていたのでしょうか?なんか想像しただけで、ちょっとウルっと来ませんか?人間がたどりつける、ひとつの理想の姿のように感じるのですが、いかがでしょうか。ご本人はアンコールワットやエジプトに行くこともなく、このフランスの片田舎で生涯を終えるのですが、ここに座って理想宮を眺めていたシュヴァルの姿を想像するたびに、羨ましいような悲しいような妙な気持ちにいつもなります。

で、このテラスからの眺めを、皆様にも最後に。

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