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蛆虫の歌

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2023年10月の記事一覧

蛆虫の歌 9

蛆虫の歌 9

9

 この一ヶ月は僕の人生史上の最低到達点と最高到達点を同時に記録する稀有な一ヶ月となった。もう少しもすれば長い冬を抜けて春一番が訪れる。これを僕に例えるなら、春一番という冬の置き土産は自殺未遂であり、それを抜けた先にある暖かな春の陽気は僕の人間関係の好転を表しているのかもしれない。
 現実の季節よりいち早

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蛆虫の歌 8

蛆虫の歌 8



 時刻は午前十時半、目覚ましは十一時半にセットされていたが遠足前日の独特の緊張感にも似た胸の高鳴りが予定していた時刻よりも一時間早く僕の目を覚まさせることとなった。こうしてアイリ先輩との約束の土曜日を迎えた。
 とりあえずシャワーを浴びて歯を磨くという朝のルーティーンをこなし、普段は全く言っていい

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蛆虫の歌 7

蛆虫の歌 7

7

数年ぶりの自慰行為から一週間が経過しようとしていた。今月二回目となった通院も以後良好であると認められ、当初予定していた通り一ヶ月間の通院で寛解とすることが出来るだろうと小俣先生は少し微笑んで話してくれた。あの程度で死ぬことはなかったとは言えあの行為は自殺未遂であることに変わりはなかったが、それから一ヶ月ほどの検診で虚勢で

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蛆虫の歌 6

蛆虫の歌 6

6

 こうして二曲目の歌詞も無事完成した。一曲目の初期衝動と二曲目の静かな情熱が結果的に僕の人間的な成長を表していて、その対極ともいえる情熱が心地よいバランスとなっているような気がする。早速この歌詞を康太郎に送り、曲のイメージ像や影響を受けている音楽なんかについても話し合った。
「オア

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蛆虫の歌 5

蛆虫の歌 5



 目を覚ますと、天井が見えた。なんだ、天国にも天井があるのか。てっきり、天国には天井が無いものと勘違いをしていた。じゃあ、神はどこだ?いや、生前あんなに無気力にいきていた僕なんか神に謁見することなんて許されないか。じゃあ天使はどうだ?僕を迎えに来る天使くらいはいるはずだ。すると、耳元で声が聞こえた。
「大野さん目を覚まされ

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