看取る覚悟
おはぎはとても人懐っこい。野良だったのが信じられない程に。ゲージを開けたら飛び出してきて、膝にちょこんと乗って顔を見上げる。撫でてやると、今度は顔を私の腕やお腹に突っ込んでくる。膝の上で、これ以上どうしたらもっと愛を伝えられるの?と言わんばかりにドタンバタンと転げまわる。今まで人に甘えられなかった時間を一気に取り戻そうとしているかのようでもあり、命を助けてもらったお礼をこれ以上にないくらいに表現してるんだろうかとも思える。とにかく身体中で喜びと愛を表現する。こんな猫には出会ったことがない。不思議なかわいいおばあちゃん猫。
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おはぎは来て20日ほど経っても当初ほどではないにせよ、鼻づまりは殆んど治らなかった。病院の先生は、口内環境が悪くて歯からばい菌が入って膿んでいるのかもしれないし、蓄膿症かもしれないともおっしゃっていた。が、それどころかその数日後から血尿が出始めた。猫砂の上に豆粒ほどの血の塊があるのを見つけて、びっくりして砂をよく見ると、周りの砂がほんのりピンク色に染まっている。シートを見ると赤くなっていた。丁度土曜日の昼過ぎだった。ダメ元でB動物病院に電話する。救急で院長先生が待機して下さっていて、診て頂けることになった。
おはぎを診ていただいてた先生ではないので、改めてお腹を触ったりして診て下さる。色々気になるので、エコーで調べてみましょうとなった。まず、腎臓の形状が通常の形ではなく左右両方ぐにゃぐにゃですとのこと。膀胱の中に腫瘍か血溜まりのようなものが見える。
先生は、長い野良生活で推定10歳と高齢なので、猫エイズもあるし貧血もひどい、他にも色々調べるとそれ以外にも色々出て来そうですが、医療費がかさむ上、治療したとしても完治や長生きは期待できないと思うがどうされますか?とおっしゃった。結局、高度な治療をしようが、出来る低額な治療をしようが、たいして延命は期待できないとの話だった。年齢を知って保護を決めた段階で、看取るつもりにしていたので、これ以上高度な検査や治療はなくて良いと思った。先生の考慮して下さった通り、家には経済的にゆとりはあまりないのだ。でも、出来ることはしてあげたい。
先生も家の事情も私の気持ちの考慮して下さって、症状で考えられる抗菌剤と整腸剤を混ぜた様な低額な粉薬の処方と、家では餌を腎臓ケアのものを与えてとのアドバイスを下さった。家での看取りを目的とした、緩和ケアということだ。
それからしばらく、おはぎは最初はシニア向けの腎臓に考慮したカリカリ餌にとろみ餌を掛けたものを食べさせた。最初はよく食べたのだが、そのうち食べなくなってきた。2週間経っても血尿も止まらなかった。先生は餌はカリカリを止めて、もう高齢猫の餌のこだわりは捨てて、食べたいものを食べさせてあげてと言うことになり、とろみのある食べやすいものに変更した。血液検査も、前回から1ヶ月以上経ったので、もう一度してもらう。白血病は陰性だったのだが、保護した当初の検査だと、保護した日に感染していたとしたら結果に出ないからだ。ウイルス性白血病は猫エイズと違い、感染力の強いウィルスだそうで、りんたろうに感染したとしたら大変なことになる。
薬も錠剤に変更。抗生剤と抗菌剤の2種類。また2週間後に予約を入れる。先生は予約は受けるけれど、連れてこれるか分からないねと言った。余命宣告されたのだった。
続く
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