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敬老の日に老猫を拾う③

画像は当初の猫さんです。


昨日のおじさんの反応は、動物好きの人からしたら冷たいように思う人もいるかもしれないが、当たり前の反応だと思う。私も又、他に瀕死の猫に出会ってしまったら、もう目をつぶるしかない。確かにキリがないのだ。でもたった1匹なら助けられるかもしれない...と悩みに悩んだ末に病院へ連れて行こうと思ったのだ。野良猫の多い場所は、大抵餌を与える人間が存在する。餌場があるから野良猫が集まるのだ。ボロボロ猫さんは、その後、雌猫で不妊手術もされていないことが判明する。不妊手術することもなく無責任に餌やりを続けるから、どんどん生まれて不幸な野良猫が増えていくのだ。


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すぐに、祝日でも開いている隣町のA動物病院に電話する。本当は先住猫のりんたろうのかかりつけ病院に連れて行きたかったが、日曜祝日は休み。少し遠いが仕方がない。「先ほど瀕死の猫を拾ったのですが、今から連れて行っても大丈夫でしょうか?」電話受付の看護師さんは、先生に確認後にどうぞ連れてきて下さいと答えて下さったので、そのまま猫の入ったリュックを前かごに乗せて、病院へ走る。

受付を済ませ、しばらく待つと診察室のドアが開き、無愛想な先生が「どうぞ、入って!」と面倒くさそうに言う。初めは怖い人かと思ったが、本気で拾った猫のことを考えているのか試しているようにも思えた。猫をリュックから出し、診察台に乗せる。「道端で拾ったんです。鼻がひどく詰まっている様なんで、猫風邪引いているんでしょうか?」「大抵の野良猫は猫風邪引いてる。」お腹を触る先生。「メスやな。不妊手術してないな。何かお腹がクニュクニュで変な感じや。」おもむろに口をがばっと開ける。歯が...無い。右上に1本のキバ、奥に1本尖った歯だけがあり、大きな歯石が岩の様に付いていた。先生はニッパーの様なもので、ガッと歯石を取ろうとした。血が飛ぶし、猫はとても嫌がったので、「あかんな、止めとこ。」と言って止めた。弱ってる子に随分乱暴だ。「で、どうする?」と先生。私は「どうするって...この子子猫ですよね?小さいし。」というと、先生は「いや、年いってる。」私「何才くらいですか?」先生「...そうやな。推定10才やな。」

野良猫の平均寿命は5才程度だ。だから驚いた。まさか?!「8才くらいの間違いとか?」先生「いいや。10才。」

先生は「...でどうする?」と言ったっきり何も言わないので、私は「とりあえず虫下してください。」先生は私の顔を真顔でじっと見つめる。頭の中を10才...という年齢が駆け巡る。10才で瀕死の猫。これ以上生きれるのか...?でもあのまま放っておいたら、確実に冷たいコンクリートの上で、誰にも気にされずに数日で死んでいただろう。長い長い厳しい辛い野良生活の末に。

最期ぐらい暖かい部屋で、ふかふかの布団の上で、ご飯の不安もない中で、敵もいない中誰かに声を掛けてもらう事も経験した上で、安心して旅立たせてやれれば...。私は考えて先生に「先住猫がいるので、引き取りたいけれど少し不安があります。引き取る際に必要な準備を教えてください。」と言った。先生の表情が少し緩む。先生は「先住猫がいるんやったら部屋は必ず別室にして、対面しないようにする。この子のゲージを別に用意しなあかん。ゲージの外に出してはダメ。弱ってるし年いってるからあまり動かないしゲージの外に出さなくても問題ない。血液検査をして何の病気にかかっているか調べる必要がある。」

少し私だけ病院の外に出してもらい、夫にLINEし家に電話して娘に確認する。夫は「お前は大丈夫なんか?大丈夫なんやったら。」と言い、娘は引き取りを賛成してくれた。中に戻り、先生に「猫引き取りますから、準備できるまで入院させること出来ますか?」先生の顔が一気に解れた。やはり少し乱暴だけど、悪い人ではなかった。「エエよ。準備が出来たら連絡して。」先生はその場で猫に虫下の薬をつけてくれた。入院している間に血液検査をお願いして、私は病院を後にした。


続く

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