半エッセイ 「夏の箱庭」
「夏、暑すぎー!」
部活への道すがら、親友に抱きつかれる。暑いのならくっつかなければいいのに、彼女は頑なにこの姿勢で話しかけてくるのだ。続く「アイス食べたい!」という悲痛な叫びで、私は財布の中身を思い出した。「金欠でーす」彼女を剥がす。部活前に買うスポーツ飲料が残額を削り取っていたから、この頃は鈍い色をした小銭しか入っていなかったはずだ。
ぶつくさ言い続ける彼女を置き、ひと足先にテニスコートの芝を踏みしめた。私たちの舞台だ。ラケットで顔を扇ぎながら太陽へ恨みの念を送る。