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きす

ゆっくりと刃を滑らせる、ズーッと皮膚が裂けていく感覚。ゆっくりだとあまり音鳴らないんだ。ズキズキと痛みを感じる。嬉しい、きみが痛くしてくれてるみたい。できた。4文字、まだ慣れなくてガタガタだけど、ちゃんと刻んだよ。やっぱあんなやつどうでもいいからわたしを1番にしろよ早く。ちゃんと示したよね愛の重さ あいつよりもわたしのが先だと思うんだけどナァ、爪の中に入って取れないよ。長くて可愛かったアタシの爪が、こんなに短くて鉄臭くて汚くなっちゃって。ああ可哀想、死にたいって言う癖に死なねえお前よりもよっぽど必死なんだよ。わたしがこぼした言葉 拾わなかったよね、目で追いすらせず蹴飛ばしたよね。わたしって重い女だからさー、そういうの許せないよ?憎んじゃうよ?このまま死んだらお前の事呪っちゃうかも、謝られても許せないんだなあ。だってその時に殺されたわたし戻ってこないんだもの。屋上から飛び降りた可愛い可愛いあの娘、ずっと憧れだった。インターネットの神になったんだよね、キラキラコンカフェ嬢、女の子の理想が詰まってて、わたしが一生なれないものだな。あの娘の血がピンクだったなら わたしはきっとドス黒いグロテスクな色ね。歌舞伎町の排水溝にわたしの血が流れる、コンクリートに染み込む。bubblesの厚底に踏まれて、ぐちゃぐちゃになって。歌舞伎町で飛び降りあったらしーよ、やばくない?って言われるの。別にわたし東京に住んでないけど、なんかそれっぽくない?笑 ネオンに照らされたいの、ギラギラ光って 居場所のない子供や大人達が集まって 必死に必死に生きてる。ホストやキャバクラ そんな闇を誤魔化すかのように目が痛くなるほど光らせて、わたしのスポットライト ここでならわたしが輝けるのかな。屋上がわたしの初舞台 みんながわたしを見るの。歓声が聞こえる、みんなのスマホが光ってる。わたしを見て、撮って、報道して、インターネットの神にして。馬鹿みたい どうせ死ぬのはみんなが聞いてもぱっと頭に思い浮かばないようなド田舎で。団地の子だから遊んじゃダメよ、って昔言われたの、そんなゴミだらけのクソみたいな所から飛ぶの。わたしが輝くことなんて一切ないのね、毎晩うるせーDQNたちの車にあたしの汚い血、つけてやろうかな。あ、だったら尚更身体に刻まなきゃ、発見された後私の体を見て皆が驚く程。沢山沢山彫っておくね 忘れないように、どーせ報道なんかされないんだから好きにしようね。気づかなかった いつも明るくていい子でした。わたしが泣いても見てすらくれなかったお前ら、一生恨んでやるからな。寂しい 寂しいんだよ 好きな人とカーセックスしながら練炭で死にてーとか言ってたのに。キモイおっさんとの最悪な感覚を 酒の味を上書きしてくれるはずだった、きみもいなくて。さみしい、さみしいな、きっと最期にキスするのは冷たい冷たいコンクリートと まだ暖かい私の血。

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