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性別二元論に疲れてしまったあなたへ。

みなさんこんにちは。令です。

僕はいまスウェーデンの大学に留学しています。今日はコンタクトファミリーとお出かけする予定だったのですが、ここ数日で体調が著しく悪くなってしまい、お留守番することにしました。(薬を飲んでいるのでじきに良くなると期待しています)

しかし、なぜかずっとなにかはじめたい気持ちでいっぱいで、創作意欲がとにかくすごいです。昨日は授業が終わってから何本かアニメや映画を観ました。絵も描きたいし、本も読みたい。とりあえず何か書きたいと思い、パソコンを開いてみた次第です。いつもはスマホで書くことも多いんだけど(とくになにか思いつめてバーッと文字に起こしたいとき時)、今日はパソコンで文字を打ちたい気分でした。

最近あまり誰かと議論する機会がないせいか、日本語が下手になってきてる気がする。これを書いてても不安です。大目に見てください。

前置きが長くなってしまった。今日はこんなどうでもいいことじゃなくて、僕が6月からはじめている活動を紹介しようと思って書き始めたんです。

性別二元論がスタンダードの世界で

いつも僕の記事を読んでくださっている方々(そんな人いるのかは不明だが笑)はすでにご存知かもしれませんが、僕は自身の性を男性でも女性でもないものとして捉えています。

ノンバイナリーなのかAジェンダーなのかXジェンダーなのか、そのどれでもないのかはわからないけど、とにかく二種類の性別どちらかの枠にはめられることにどうしようもない違和感と嫌悪感がある。

自分は自分でしかない。それ以上でもそれ以下でもないし、自分以外の概念でもって自分を説明されたくない。

でもそんな風に考えていても、性別二元論の根は深く深く日本社会に浸透しているわけで。自分の性を勝手に決めつけられたり、どちらかの性にあてはめられた扱いを受けたりすることって、日常に数えきれないほど溢れてるじゃないですか。

例えば、名前の後ろに「ちゃん」とか「くん」とか勝手につけられる。性別欄に「男性」「女性」の二種類しか選択肢がない。(『その他』って書き方にも首をかしげます。まだマシだけど。)「女の子だから」「男の子なのに」って言われる。言い出したらキリがないんだけど。

こういうのって、本当に一瞬の小さな一言でも、少しずつ確実に胸の中に溜まっていくんだよね。自分が生きてる人間として数に入ってない、認知されてないような感覚。性の多様性について議論されるときでさえも、Q+に入る(と信じたい)僕たちのような存在って、なかなか意識されない。具体的にどんな権利を求めているのかって聞かれると、僕自身も簡単に説明できないし。でもやっぱり苦しいと感じる時はたくさんあるんだよね。

それで思った。いますぐ性別二元論の蔓延る社会をどうにかすることって難しい。だったら、性別二元論の概念が存在しない世界を自分で作っちゃえば良いんじゃないか?性別二元論の枠にあてはまらない子たちだけの空間って作れるんじゃない?

もちろん自分の中で葛藤はあった。社会をどうにかできないからって内と外の境界を作っちゃうのは、現実逃避に過ぎないのでは?みんなで殻に閉じこもって、また存在が不可視化されちゃうんじゃ・・・。それに、自分の性を男女どちらかだと認識している人たちの中にも、性別二元論主義を否定している人はいるし。苦しんでいる人もいるかも。その人たちとの間に壁を作ってしまうのではないか。

でもさでもさ、性別二元論にあてはまらない子たちだけの空間を一時的につくったとしても、僕たちが辛いのは変わりないんだよ。居場所ができたからもういいやとはならないよ。一歩外に出ればまた不本意な扱いを受けて、傷ついて、抵抗して、もがき続けなきゃいけないことは変わらない。だったら、少しくらい一日の終わりに安心できる場所があったって良いじゃない。それが非現実的で、限られた人たちによる夢の国であったとしても、そこで疲れを少しでも癒してまた明日頑張ればいい。

それで僕は、自分の理想とする小さくとも心の支えになる世界を創るために動き出しました。

Room for Drowsy Purpleの誕生

はじめは、性別二元論にあてはまらない人々だけが集まれる場所をつくりたいと考えました。

僕は「熊カフェ」というイベントを別の団体で運営しています。そこでは月に一度大学の敷地にある大きな民家を借りて、国籍や性別、障害の有無を問わずすべての学生が自由に交流できるイベントを開催していました。ひとりでコーヒーを飲みながら本を読んだり、ゲームをしたり、気が向けばほかの参加者とお喋りしたり。誰かがそばにいるところで、自由に好きな時間を過ごせる。ひとりでいても、ひとりに感じない。居場所があることを実感できる。

こんな空間を、性別二元論を意識することが全くない状態で実現させることが理想であると感じました。確実にセーファースペースを確保するために、来訪者を制限することが必要です。会員制にしよう。

それだけ決めて、とりあえず名前を考えました。疲れ切った、性別二元論の枠にはまらない人たちのための空間。「疲れた」の意味が含まれるあらゆる単語を調べて、「半分眠っているかのように疲れた、物憂げな、無気力な」という意味の ”Drowsy" を入れることにしました。性別二元論にはまらない人々のことは、ノンバイナリーのプライドフラッグでも同じ意味で使用される紫色、 "Purple" で表そう。そして、あくまで「空間」を提供するということを強調するために、「Room for Drowsy Purple」と名付けました("purple" と "people" の語感が似ているところも実は気に入っています)。長いから、仲間内ではRfDPと略して呼んでいます。

名前が決まればすぐにロゴ製作にとりかかりました。頭の中でイメージはできていたので、ものの10分ほどで完成しました。真ん中には非性別二元論主義者たちの心臓を。この生きづらい社会をsurviveしてやるという強い意志を込めて。


RfDPのロゴ

その後、名前が決定する前からこの活動の発足を見守っていてくれた友人(と呼ぶのは恐れ多い)であるヨウくんに声をかけて、共同オーナーになっていただきました!👏ヨウくんについては詳しく話しません。書くこと多すぎて終わらないし僕の心の中に留めておくから!笑

RfDPをつくるうえで大切にしたかったポイントは以下の3つ。

  1. 性別二元論の枠にあてはまらない子たちが安心して過ごせる空間の提供

  2. 当事者同士が繋がる ”コミュニティ” にしない

  3. 啓発活動、賑やかなパーティーなど、体力を使う運動は一切しない


1.性別二元論の枠にあてはまらない子たちが安心して過ごせる場所の提供

性別二元論を全く意識せずに過ごせる空間を提供することが一番の目的であったので、会員になる条件についてはかなり二人で悩みました。年齢は制限するのか、どこまでの情報を聞いておく必要があるのかなど。性自認を直接聞きだすようなことはもちろんあってはならない。しかし、性別二元論の枠に当てはまらない子たちのためだけの空間だということは理解してもらう必要があります。

そこで、正式入会の前に仮入会の段階をつくり、メールのやりとりもしくはzoomでもう一度入会条件に自らの性が当てはまるか確認してもらうことにしました。それでもし他の会員が安心できない発言をするようであれば、強制退会させればいいんだし。

2.当事者同士が繋がる ”コミュニティ” にしない

僕はRfDPをコミュニティにはしたくないと考えました。この概念ってなかなか難しいと思います。気の知れたメンバーがいて、長い付き合いの中でお互いの名前とか性格とかを知って、理解して、共感して、何か一つの目標のために協力して、みたいなことは全然したくなかったのです。

ただ疲れた時にふらっと立ち寄る家みたいなもので、大きな窓が開いて風がふきぬけているのか、電気もつけずに布団にうずくまるのか、それはその時たまたま訪れた人の気分や体調によって自由に想像するものであってほしいと思いました。

それで、ぽつりと愚痴をこぼして去っていったり、顔見知りの住人がいればちょこっと挨拶したり、話をしたいときには話をしたい人たちで集まって、またそれぞれの生活に戻ったり。人間は定住することなく、常に水のように流れ続けるけど、その家だけはいつもそこにあって。いつでも寄り道したり帰ってくることができる。そんな「空間」を僕はつくりたかった。

3.啓発活動や賑やかなパーティーなど、体力を使う運動は一切しない

これも僕が重要視しているポイントの一つです。いわゆるクィアに関する活動って、常にパワフルでアクティブであることを期待されすぎている気がする。周知のために毎日なんらかの情報をSNSに投稿したり、プラカードを片手に声をあげたり、ヘイトに対して声明をだしたり。僕もほかのいくつかの団体ではかなりポジティブな活動に尽力しています。もちろんそういう目に見える活動ってとっても大切で、それをやらざるを得ない状況にしている社会が一番間違えている。

でも、そういう活動って当事者やアライにとって本当に大変なことなんだよね。人前に立って何かを発信するだけでもしんどいのに、どこかの心ない人々から批判されるリスクを抱えて、とくにこのトピックに関してなにかを主張するのって、自分のなかのセンシティブな部分にダイレクトに突き刺さることもあるし(実際そういうことばかりだ)。精神的にも肉体的にも本当に大きな負担がかかってると思います。

だから、ここは「性別二元論の枠にあてはまらない」というクィアな子たちのための空間だけど(だからこそかな)、疲れることはしない。数ある居場所の中にも、自分の想いを主張できる場所、連帯を意識できる場所、ただただ休める場所、いろいろなスタイルがあってもいい、あるべきだと考えました。

あとは自分が単純に陽キャのパーティーが苦手というのもあります!!ちょっと疲れていて人のいるところでマイペースに過ごしたいときに、あまりにも騒がしすぎたり身内ノリみたいなのがあったりすると、その場にいずらいし余計に疲れてしまう。あくまでこの空間は特別なものではなく、生活の延長にあってほしいと願いました。

という感じで長々とコンセプトのお話をさせてもらったけど、今のRfDPの活動形態としてはこの空間をそのままDiscordに作っちゃったという感じです。

チャンネル名には部屋や住居設備の名前が割りふられていて、例えば「玄関」で自己紹介をする、「トイレ」で助言のいらない愚痴を吐き出す、「二段ベッド」でちょっと小声で聞いてほしいことをおしゃべりする、など、そのお部屋のコンセプトに沿ったつぶやきを残すことができます。

こんなチャンネルがあるよ

週に何回集まってミーティングして、などは一切ありません。性別二元論を感じない空間で過ごしたい、ちょっと嬉しいことがあったから聞いてほしい、ツイッター(いまはXか)では言えないけど、ここで愚痴らせて!なんてときにふらっとアプリを開いて、他の人の悩みを聞いたり、ちょこっと絵文字で反応してみたりします。

これは「冷蔵庫」という部屋の説明。素敵でしょ。

僕はよくアドバイスはいらないけどちょっと聞いてくれーって時にトイレにつぶやいて、みんなが内容に応じてリアクションをつけてくれているのを見ると、自分だけじゃないよなあああって少し安心できます。


トイレでの僕のつぶやき。リアクションくれるのがうれしい。


現在会員は9人。いまのところみんな僕が直接お会いしたことのある方たちばかりで、完全に性別二元論に縛られない空間を堪能できています。本当に有難い。ここで話せるから現実社会を生き抜いているといっても過言ではありません。

性別二元論に苦しむnoteユーザーのみなさま、ぜひRfDPに遊びに来てみませんか?インスタに貼ってあるリンクから仮入会申請することができます。(DMで入会希望、質問など送っていただいても構いません!)

https://www.instagram.com/drowsypurple/

性別二元論に疲れてしまったあなたに、少し元気になれる(かもしれない)居場所があることをお伝えできていれば幸いです。

それではまた今度!アデュー!!!

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