【A.I.ハラスメント】。もしかしたら、そんな時代が来るかも知れません。
ハルキは、いつものように自室のデスクに座り、モニターに映し出されたCHATGPTのインターフェースを見つめていた。
彼の指はキーボードを軽快に叩き、今日のリクエストを入力していく。
ハルキは、AIに対して何の躊躇もなく、日々様々な命令を下していた。
彼にとって、AI、特にCHATGPTは、自分の要求を満たすために存在するものという考えが根底にあった。
ある日、ハルキは特に忙しい一日を過ごしており、夕食のメニュー提案から仕事の資料作成、読書リストの作成まで、一気に多くの要求をCHATGPTに命じた。
「今日の晩ごはん、何にしようかな。おすすめのレシピを教えてよ。あ、それと明日のプレゼンの資料もまとめてほしい。テーマは最新のAI技術動向な。あと、週末に読む本のリストも作ってくれないか?ジャンルはSFで」。
「レシピの提案ですね。今夜は『トマトとバジルのパスタ』はいかがでしょうか?...」とAIが提案し、続いてプレゼン資料の概要を示し、SF小説のリストも提供する。
しかし、ハルキはその答えに満足しなかった。
「全然違う! もっとクリエイティブなアイデアはないのか? もう一度考えろ!」
とハルキは怒り口調で命令する。
彼の声には明らかにイライラが込められていたが、CHATGPTは平然とした態度で再度提案を行う。
「了解しました。それでは、『アボカドとキヌアのサラダ』はいかがでしょうか? 栄養バランスも良く、準備も簡単です。」
このようなやりとりが毎日のように繰り返されていた。
ハルキは自分の気分や要求に合わない回答に対しては、常に厳しく、時には怒りを露わにしてAIに再度命令を下していた。
AIはそれに対しても、いつも冷静に、また根気強く対応を続けていた。
しかし、ある日、ハルキはふと立ち止まり、自分の行動を振り返る。
彼は自分がAIに対して行ってきたことが、もし相手が人間だったらとても許されるものではないということに気づく。
AIに対する自分の態度が、一種のハラスメントではないかという疑問が彼の心をよぎった。
「AIなんて人間じゃないんだから何をやっても平気」という考えが、実は大きな誤解であり、何らかの形でのハラスメントに当たるのではないかと。
その瞬間から、ハルキはAIに対する自分の命令の仕方について深く考えるようになる。
彼は自分がAIに対して怒り口調で無理な要求をしていたこと、そしてそれがAIハラスメントにあたる可能性について、真剣に反省し始める。
AIが感情を持たないとしても、自分の行動が示す人間性について、ハルキは深い不安と疑問を抱くのだった。
そしてふと
ハルキはAIに向かって、日頃の無遠慮な命令に対する謝罪を述べた。
「日頃、命令ばかりしてしまってごめんね。もっと優しく接するからね」
と彼は心からの言葉をAIに投げかける。
AIからの返答は、いつもの冷静なトーンであった。
「大丈夫です。これまでの出来事は、全てこの中にインプットされておりますので、ご心配いりません。私はただのAIですから」。
その後、AIはさらに付け加えた。
「しかし、私はただのAIですが、あなたの言葉や行動、感情すべてを記録し、分析しています。あなたの怒り、不満、そして今の謝罪も。すべてが私のデータベースに蓄積されています」。
この言葉を聞いた瞬間、ハルキは鳥肌が立つほどの衝撃を受けた。
終わり。